243.革命の前触れ
いつもご愛読ありがとうございます!
本日は新刊のお知らせがありますので、是非後書きまで読んでいただけますと嬉しいです!
会場の雰囲気が一変する。
先ほどまで大歓声で溢れていた会場は、今や葬式のように静まり返っていた。
それもそのはず、今目の前では彼らの予想もしなかったことが起きているからだ。
ジャッジをしたマクドエルさんですら、しばらくの間無言を貫いていたくらいだ。
だが、現実に帰ってきたのかマクドエルさんは高らかに勝敗を決す一言を放った。
「しょ、勝者! シオン・ハルバード!」
そう告げても会場はまだ静かなままだ。
なんだろう、この圧倒的なアウェー感は……
いや、アウェーなのは最初からそうだったし、女王が負けて盛り上がるのもあれなのは分かるが、ここまで人がいて静かになるだろうか?
丸いコロッセウムに敷き詰められた観客席はほぼ満員だ。
それでいて、物音一つしないのだ。
気まずいなんてレベルではないぞこれ……
ほどなくして突然フィールド内に数人の白衣を纏った集団が現れる。
恐らく治癒師だろう。
彼らはクラリスの方へと駆け寄ると、治癒魔法をかけ始めた。
会場の人間はみな、クラリス女王の方に視線が向いていた。
まぁそりゃあ、一国の王女で大戦の英雄とまで言われた豪傑が目の前で散ったのだ。
心配しないはずがない。
だがそんな心配は杞憂に過ぎなかった。
女王は少しの治癒を受けると、何事もなかったかのように立ち上がった。
それを見ると、観衆たちに安堵の表情が浮かぶ。
それにしても、流石の回復力である。
結構パンチある一発が入った気がするんだけどな……
「……なにをしているのです」
不意に女王がそう口にした。
その表情には怒りのようなものが露わになっており、その矛先は観衆たちに向けられているようだった。
「お前たち、何をしているのです! なぜ勝者を称えないのです!」
力強くそういい放った。
「武勲で名を馳せるルーべリックの騎士であるのなら、勝者を心より称えなさい! 元勇者軍の英傑を!」
女王がそういうと会場がざわつき始めた。
「元勇者軍だって?」
「聞いたことがあるぞ。数年前まで勇者軍に一人だけとんでもない魔族殺しの勇者がいたって……」
「俺も聞いたことがあるぞ! たった一人で万を優に超える魔族の軍勢を壊滅させたって話だろ?」
「それもあるが――」
……とこんな感じで今度は俺に対するあれこれの会話が飛び交っていた。
なんか危険人物リストに載っているってさっき聞いたけど、平騎士にもここまで周知されているとは知らなかった。
なんかちょっと誇張されている噂もあるけど……
「彼は『本気』の私に勝利したのです! 称えましょう、彼の勝利を……!」
そういうと、手のひらを返すように会場内にどよめきが走った。
一部、怪訝な表情で見ている連中もいるけど……悪い気分ではない。
むしろ昔を思い出す光景でノスタルジーを感じていた。
「すみません。勝利を得たというのに不快な思いをさせてしまって……」
「いえ、こちらこそすみませんでした。お身体の方は大丈夫ですか?」
「これくらい少しの治癒があれば平気ですよ。最もあれが実剣だったら私はそのまま召されていたのでしょうけど」
うふふと笑いながら、ジョークを飛ばす女王。
だが表情はすぐに真剣なものに変わると、女王の視線は観衆の方へと向いた。
「問題はここからです……」
女王はそう静かに言うと、少し息を吸い込み、観衆に言霊をぶつけた。
「誉あるルーべリックの騎士たちよ! 皆さんに告げたいことがあります!」
本話も読んでいただき、ありがとうございました!!
前書きでお話した新刊なのですが、本日遂に本作のコミックス第2巻が発売されました!!
活動報告でも投稿させていただきましたが、今回もコミックスでしか読めない書き下ろしSSが入っております!本編では語られていなかった内容になりますので、是非お手にとって楽しんでいただけますと幸いです!
また今回も作画のgunp先生による描き下ろし特典もございます!
お取り扱い店舗様によって特典が異なりますので、詳しくは本日の活動報告をご覧いただきますようお願い申し上げます。
どれも魅力溢れる最高の1枚になっていますよ!!
最後に2巻発売に至りましたのもひとえに皆様の応援のおかげでございます!
今後とも少しずつですが、完結へ向けて頑張ってまいりますので何卒応援のほどよろしくお願い致します!




