236.闘技場の闇
いつもご愛読、ありがとうございます!
毎度恒例の月1回のご報告がありますので、是非後書きまで読んでいただけると嬉しいです!
「クラリス様!」
一人近づいている紅一点。
軽装備に身を包んでいてもなお、気品溢れるその姿に見入ってしまう。
「レイラ、ここはもう良いわ。貴方は下がりなさい」
「はい。……それでは、失礼致します」
レイラと呼ばれた騎士は俺にペコリとお辞儀をすると、足早に去っていった。
「ここに来るのも久しぶりですね。お父様との訓練を思い出します」
入場口からフィールド内を眺めながら、彼女はそう言う。
「当時は泣きながら鍛錬に励んだものですが、今となっては良き思い出となっている。不思議なものですね」
「先ほどの騎士の方にお聞きしました。この闘技場は由緒ある特別な場所であると」
「ええ。ここは王家が完全にとり仕切る、いわば裏の世界ですから。外城にある鍛錬場とは違う意味を持ちます。騎士たちは間では神聖な場所と美化されていますが、本当はそんなことはない。今もこの地では多くの屍の怨念が住みついていることでしょう」
「それってどういう……」
俺がそう切り出すと、クラリス女王は一度フィールドの方へ目を向けると静かに口を開いた。
「先ほどレイラから聞いたのは、ここが王家専用の鍛錬施設であると同時に要人接待や王家認可の決闘試合で使われる場所であるということ……そんなところでしょうか」
「はい。そうお聞きしました」
一言一句違わないところを見るに〝一般的〟にはそういう風に認知されているのだろう。
だがクラリスの表情は徐々に暗く沈んでいった。
「実はこの闘技場ではもう一つ、使用される例がありまして……」
「それって……」
さっきの言っていた言葉の筋から察するに……
「まさか、神裁決闘ですか?」
「……おっしゃる通りです」
俺の一言にクラリスはそっと頷いた。
神裁決闘。
罪の大小問わず、裁判にかけられた者が自らの潔白の証明と名誉回復にために行う決闘である。
名前は制度を設ける国によって若干異なる場合があるが、元を辿ると戦の神、戦神と呼ばれる神々による戦神神判と呼ばれる裁判の考え方がルーツとされている。
王家やその系列に名を連ねる騎士貴族などから、神判官と呼ばれる人物が選定され、罪人は神判官に勝利することで自身の身の潔白を証明できるという宗教思想に基づいた裁判だ。
勝てば無罪放免、負ければ即処刑というこの上ないリスクを背負った上での判決方法であるため、この方法での裁判を望むものは少ない。
裁判を受けるのは盗賊団の頭目や、元闘技場の覇者、元国家騎士団所属など並みの実力ではないものたちばかりだ。
ちなみにこういった裁判制度は一部の国では禁じられていたりもする。
俺が知っているのは、勇者時代の時にとある国で公開決闘を見たことがあるからだ。
そこで初めてそれが神裁決闘というものだと知った。
「ルーべリックは建国時から戦闘思想の強い人が集まる国家でした。ゆえにそういった決闘による裁判も当たり前のようにしてあったのです」
「その神裁決闘がこの場所で……」
「ええ。そしてその神裁決闘の担い手となる神判官というのが……この私でした」
彼女は唇を噛みしめると、険しい表情でそう言い放った。
本話も読んでいただき、ありがとうございました!!
さてさて! おなじみの月一回の告知です!
現在comicブースト様にて連載中の『俺の冴えない幼馴染がSランク勇者になっていた件』の第10話(後編)が本日更新されました!
前回告知した通り、10話は前半後半の二部構成になっており、今回は後編になります!
今回も引き続き、ユーグがカッコいい一面が見られます!
また、コミカライズ版ならでの「新技」も新たに登場致します!
面白く仕上がっていますので、是非読んでみてください!
また、本作のコミカライズ1巻が昨年の10月24日より発売されています!
巻末にはコミック版限定の完全描き下ろしストーリーや店舗特典として作画担当のGUNP先生完全書き下ろしのイラストカードなど盛りだくさんですので、こちらも是非宜しくお願い致します!
下記に作品ページに直接行けるリンクを張っておきますので、まだ未読の方は是非読んでみてください!!
コミカライズURL:https://comic-boost.com/series/322




