230.引き続き
毎度お待たせして申し訳ございません。
更新です!
また今回も例の告知がありますので、是非最後まで読んでくれると嬉しいです!
数年前。
俺がまだ勇者だった頃にその少女と出会った。
あれは確か魔物の巣と化した村への出向任務だった。
粗方魔物を片付け、生存者はいないか探していたところで彼女と出会った。
場所は確か地下にある食糧庫だったはず。
一人汚れた毛布に身を包みながら、彼女は震えていた。
まだ年端もいかない小さな女の子だった。
よほど恐怖に心を支配されていたのだろう。
その子は話かけても満足に会話もできず、顔すらもあげてはくれなかった。
ようやく顔をあげてくれたのは、携帯食料として持っていたパンを渡そうとしたところだった。
相当お腹が空いていたのだろう。
小瓶に入ったハチミツを垂らし、魔法で熱したパンの香ばしい匂いでようやく顔をあげてくれた。
だがその瞬間だった。
あの子の瞳をみた途端、ゾクゾクするような感覚が身体全体を駆け回った。
とはいえそれはたった一瞬の出来事。
パンを手に取り、一生懸命食べる姿を見ている内にその感覚は身体から抜けていた。
あの出来事は未だに俺の中に強く残っている。
そして今、あの時の少女かもしれない子が勇者となって現れた。
まだ確定的ではないが、グランが言うには当時の少女と同じ魔力を感じ取ったらしい。
まぁそこまで分かればほぼ確定みたいなものなのだが。
「あの時の少女が勇者に……ね」
『しかも前に聞いた話では助けてもらった勇者に憧れを抱き、志すようになったといっていた。話の筋からいうとその勇者というのはお前のことだろう』
「まぁ、そうなるな……」
自分に憧れを持ってくれたことは、素直に嬉しい。
俺もまぁ似たようなものだったから、気持ちは分かる。
『打ち明けるのか。あの時のことを』
「いや、そういうのは自分から言うことでもないだろう」
『だが彼女はお前に礼を言いたいと言っていた。憧れもあるだろうが、勇者になった一番の理由はそれなのではないか?』
「それはそうかもしれないけど……」
だが俺はもう勇者ではない。
言ったところで信じてもらえるかはまた別の問題だ。
『ま、今はそれでもいいだろう。それよりも、あの力が世に漏れ出さないことの方が重要だ』
「そうだな。あの力は尋常じゃない。あれがまだ未覚醒の状態であれば、覚醒したらどうなるか……」
その上、まだ原因は不明でどんな力かも分かっていない。
分かるのはただひたすらに悍ましく、常軌を逸しているということだけだ。
『幸い、彼女は勇者だ。これからも何かと接点はあるだろう。あの力が漏れ出さないように監視する必要がありそうだ』
「ああ。気にかけておくよ」
『我の方も解析を進めてみる。少ない時間とはいえ、娘の聖魂とリンクしたのだ。時間はかかるかもしれぬが何かしら分かることはあるだろう』
「分かった。頼むぞ」
そんなわけで、俺たちはあの力が外に漏れ出ないように、相互でリラちゃんの監視を始めることになったのだった。
本話も読んでいただき、ありがとうございました。
さて、すっかりおなじみになった月一回の告知です!
現在comicブースト様にて連載中の『俺の冴えない幼馴染がSランク勇者になっていた件』の第6話(後編)が本日更新されました!
今回は前回のお話の後編という扱いになっています!
いよいよ本話から、序盤の盛り上がる部分に入っていきます!
次回以降も小説版とは異なった展開や要素が加わっていくかと思いますので、違いを比べながら楽しんでいただければと思います!
下記に作品ページに直接行けるリンクを張っておきます!
何卒、応援のほどよろしくお願い致します!
コミカライズURL:https://comic-boost.com/series/322




