229.魔眼の子
いつもご愛読ありがとうございます。
そして毎度お待たせして申し訳ございません。
久々の更新になります!
また、今回もお知らせがありますので是非後書きも読んでいただけると嬉しいです!
「おう、シオン。本当に今日は帰らないのか?」
「はい。リラちゃんのこともありますし、溜まっている分の仕事もこなさないといけませんから」
剣の試運転が終わったその日の夜、俺は出荷予定の剣の最終メンテナンスをしていた。
直近で色々なことがあり、その上、王女様用の剣の仕上げに没頭していたからか通常業務が疎かになっていた。
もちろん事前に許可を貰ってやっていることだが、流石にずっとこういうわけにもいかない。
それに、リラちゃんの件もあるし……
「そうか。だが無理だけはするなよ。あと仕事終わりにはそこにあるタイムカードに残業分の時間を記載しておくように。ただ働きだけはさせたくないからな!」
「いえ、そこまでしていただかなくても。好きでやっていることですし……」
「ダメだ。雇用主たるもの時間外労働を行う者に対価を支払わないなど愚の骨頂だ。それは俺のプライドが許さない」
「わ、分かりました……忘れないように書いておきます」
こういう時の親方は少し怖いんだよな。
常日頃から工房の人たちに身体が資本だと言っているだけあってその辺は徹底している。
「うむ、よろしい! じゃあ、俺は先に上がるからな」
「お疲れさまでした」
親方はタイムカードに時間を記載していくと、身支度をして工房から出て行った。
「ふあぁ~さて、もうひと頑張りしますか……」
少し眠たいが、ここはぐっと我慢だ。
そう自分に言い聞かせながら、目をこすっていると、
『それでは集中できぬぞ。これでも飲め』
二つのマグカップを持ったグランが俺の元へとやってくる。
もちろん擬人化した姿のグランだ。
「ありがとう、グラン」
俺はコーヒーの入ったマグカップを受け取ると、一口含む。
「ふぅ……」
『お疲れのようだな』
「まぁちょっと力を使ったし、仕事も忙しかったから」
でも苦には思わない。
むしろ充実感による幸せでいっぱいだ。
「リラちゃんの方は?」
『今はぐっすりと眠っている。簡易的な身体検査も行ったが、問題は見当たらなかった』
「そうか。ひとまず安心だな」
『……』
「ん、グラン? どうかしたか?」
『シオンよ。やはりあのリラという娘は危険だ』
「昼に見たあの力か」
『もう一つの人格が出てきた時、我の力でも抑えきれない何かがあった』
「グランでも抑えきれない力?」
『うむ。だが幸いなことにその力はまだ完全に覚醒段階に入っていない。おかげで相応の力に抑え込まれているようだ。少しであったが彼女の聖魂に触れて分かった』
「じゃあその力が覚醒段階に入ったら……」
『どうなるか検討がつかない。少なくともあの力が危険なことだけは確かだ』
グランがここまで言うのは珍しい。
一体あの力は何なのだろうか?
生まれつきとのことだが、本当にそうなのだろうか?
『それともう一つ分かったことがある』
「なんだ?」
『以前、お前があの娘に会ったことがあるかもしれぬと言っただろう」
「ああ……」
リラちゃんに初めてあった日の夜のことだな。
勇者時代に出会った魔眼を持つ子供の話をグランとしていた時のことだ。
「それがどうかしたのか?」
『やはり我らが思った通りだった。当時、出会ったあの魔眼を持つ子供と同じ魔力を感じた』
グランはリラちゃんの眠る寝室の方へと視線を向けると、静かにそう言った。
コミカライズURL:https://comic-boost.com/series/322
本話もお読みいただき、ありがとうございます!
毎度、月一回の告知です!
本日7/5からcomicブースト様にて連載されています同作品の最新話が更新されました!
第6話でも前話から同様にオリジナルな展開になっています!
カッコよさが際立つ初の戦闘シーンも盛り込まれていますので、是非読んでみてくださいっ!
上記のリンクより、連載ページに飛べます!
何卒応援のほど、宜しくお願い致しますっ!!!




