228.暴走
お待たせして申し訳ございません。
久々の更新です!
また、本日コミカライズ版の方で最新話が更新されました!
後書きと活動報告に詳細を記載していますので、是非チェックを!
「まけ……ない。わたしは……ッ!」
確かにリラちゃんの声だった。
発生した謎の白い霧はやがて彼女の身体全体を覆っていくと同時に掠れ掠れだった声がより鮮明になっていく。
「リラちゃんの本来の人格が裏の人格を取り押さえている……?」
だがそれは一時に過ぎなかった。
その現象に抗うように今度は黒く闇深い霧が彼女を覆い始めたのだ。
「ぐぅ……あぁぁぁぁぁぁぁ!!」
白い霧は完全に消え、今度は邪悪な力がリラちゃんに浸透していく。
それは近くにいた俺にも影響が出るくらいのものだった。
「くっ、なんだこの波動は……!」
激しい魔力の流動。
まるで今にも押しつぶされそうなくらいの重圧。
そして心に響いてくるこの不快感。
身体にも心にも並みの人間では到底耐えられないほどの要素が次々と襲い掛かってくる。
だが多分その強さの度合いは俺よりもリラちゃんの方が強い。
近くにいるだけでもここまで身体の制御を奪われるのだから。
「このままじゃ、マズイ……!」
ここまでの力を放出し続ければリラちゃんの心はもちろん身体まで破壊しかねない。
俺はすかさず剣を構えるが、
「くそ、魔力の圧が……」
凄まじく中々近づけない。
彼女を纏う黒い霧がまるで防壁のように外部侵入を阻止しているのだ。
『シオ……ン!』
「この声はグランか!?」
途切れ途切れにグランの声が脳内に響く。
「大丈夫なのか?」
『さ……すがの我でも……手を焼いて……いる。それより……も早くこの……力を……』
「だがこの魔力の圧に飲み込まれたら流石の俺でも……」
『我が……何とか……する! 後は……任せる……ぞ』
「任せるって言っても……」
だがここでもうグランの声は途絶えてしまった。
「一体何をするつもりだ……?」
そう思っていた時だ。
黒い霧の一辺が不自然に穴を開けた。
「なるほど、そういうことか」
まるでそこに入れと言わんばかりの穴だ。
大きさは小さいが、懐に入るには十分だ。
俺は魔力を解放させると、タイミングを見計らう。
神経を研ぎ澄まし、その瞬間を待つ。
「……今だ!」
地を蹴り上げ、穴に向かって全力疾走。
「くっ……!」
魔力の圧がまるで刃のように俺の身体を切り刻む。
一瞬凄まじい痛みが身体を駆け巡るが、そのまま突っ切る。
「はぁぁっ!」
穴をすり抜けると、俺は彼女の懐へと入り込み、みぞおちに一発食らわせた。
「う、うぐぅ……!?」
瞬間、リラちゃんはその場でよろけると同時に力も少しずつ収まっていく。
一撃だけとはいえ、これは会心の一撃だ。
当分は身体の制御が出来ないだろう。
人間とは軟なもので弱点を突かれれば身体が動かなくなるように出来ている。
たとえ相手がどんなにタフな奴でも。
「ごめん、リラちゃん。少し眠ってくれ」
俺は倒れ行くリラちゃんをそっと抱え込むと、同時にその力は彼女の中へと吸い込まれていった。
コミカライズURL:https://comic-boost.com/series/322
本話もお読みいただき、ありがとうございます!
本日6/7からcomicブースト様にて連載されています同作品の最新話が更新されました!
第5話ではコミカライズ版ならでのオリジナルな展開になっています!
小説版とは一味違うテイストに仕上がっていますので、是非読んでみてください!
上記のリンクより、連載ページに飛べます!
何卒応援のほど、宜しくお願い致しますっ!!!




