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224.向き合うために


「リラちゃんがグランを……?」


「はい! わたしとて勇者軍の一員。性能チェックにはちょうどいいと思いますよ」


 聖威剣は特殊な封術を仕込まない限り、聖魂さえあれば他人のも扱うことが出来る。

 それはグランとて例外ではない。

 

 ただ聖威剣は所有者の聖魂にリンクして成長するため、他人が扱うと半分以下の能力しか出せない。

 なので、今回のような試験や模擬戦闘にはちょうどいいくらいの力に収まるだろう。

 

 それに、リラちゃんの場合は前に一度実力を見せてもらったから、相手としても不足はない。

 だがそれ故に懸念事項がある。


「性能チェックとは言っても、ただの模擬戦闘じゃないんだ。検査は解放状態で行うからさ」


「解放状態ですか……わたしの人格変化が心配なんですね?」


「ま、まぁ……」


 彼女の力は勇者軍随一のものだ。

 だがそれの代償として人格が180度変わってしまう。


 前も解放した途端、戦闘狂になっていきなり決闘を挑まれた。

 そしてその後の脱力具合を考えると、あまり気が進まないのだ。


「それにグランの力を俺以外が解放するのは危険だ。グランは普通の聖威剣とは勝手が違う。最悪の場合、リラちゃん自身が……」


「でもわたしの聖威剣は今メンテナンス中で……」


『まぁよかろう。解放とはいってもリミットは設ける。娘の負担にならんようにな』


「そんなことができるのか?」


「容易いことよ。()ならな」


 知らなかった。

 流石は我が相棒である。


「ならお願いします、シオンさん。もしかしたらまたご迷惑をかけてしまうかもしれませんが、それでも向き合いたいんです。もう一人の自分と」


「リラちゃん……」


 彼女の気持ちは分からなくもない。

 自分の知らない間に身に覚えのないことが起きていた時の恐怖は計り知れないだろう。


 向き合わなかったという点では俺もそうだった。


 勇者軍を追放されてから自分と向き合うことをしなかったのだ。

 自分が正しいという確信を持っていれば、ゴルドに立ち向かうことだって出来たはずなのに。


 俺は逃げてしまった。

 ベクトルは違っても今の彼女には当時の俺が持てなかった勇気を持っている。


 彼女は本気だ。

 目の色で全てが分かる。


 だからこそ……


「グラン」


『ふっ、その顔は決まったみたいだな』


 グランはニヤリと笑みを浮かべると、擬人化から剣の姿へと変化する。


「シオンさん……?」


「リラちゃん、今から俺の相手をしてくれないか? グランもやる気みたいだし」


「ほ、本当にいいのですか!?」


「もちろん。その代わり、無理はさせないよ。ヤバかったらすぐに止めるから」


「あ、ありがとうございます!」


 リラちゃんは満面の笑みで応えると、静かにグランの元へと近寄る。


『娘よ。我を握るということは相応の覚悟があってのものだろうな? リミットを設けるとはいえ、生半可な気持ちでは解放と同時に我の魔力の波動に飲み込まれることになるぞ」


「もちろん覚悟はあります。それに飲み込まれたら飲み込まれたら、ワタシの覚悟はそれまでだったということですから」


『ふっ、なるほど。お主もあやつと同じで違うベクトルで熱のある人間のようだな』


「えっ……?」


『いや、なんでもない。準備はよいか?』


「は、はい……!」


 どうやら向こうは準備万端のようだ。

 早速始めるとするか。


「じゃあこれからちょっと過激な性能チェックに入るよ」


「はい! お願いします!」


 剣を構え、にらみ合う。

 そしてお互いに声高く、解放の呪文(スペル)叫んだ。



 ……≪解放せよ(アーヴェント)≫!!!!

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