221.親方の過去
いつもご愛読、ありがとうございます!
本日は後書きにて重大発表がありますので是非最後まで読んでいただけると嬉しいです!
「ふぅ……やっぱり少し身体がピリピリするなぁ。お前はどうだ?」
「いえ、自分は何とも」
儀式を終えると、俺たちは書庫に戻っていた。
「流石だな。俺なんて身体中痺れちまってるよ」
あの空間が巻き起こす魔力の流動のせいだろう。
俺が何ともないのはまだ体内にある魔力に余裕があるからなのか?
「あぁ~さてと、俺は作業に戻るぞ。公王様の剣の仕上げをしないと」
「あ、待ってください親方!」
俺は親方を引き留めた。
理由は一つだけ。
儀式の前からずっと気になっていたことだ。
「なんだシオン、そんな神妙な顔して」
不思議そうに見てくる親方に、俺は喉につっかえていた疑問をぶつけた。
「親方はドレイク家の人間なんですか?」
「……ッ!」
この言葉を発すると親方の表情が一瞬だけ強張った。
痛いところを突かれたと言わんばかりの反応だ。
だが親方はすぐにいつもの調子を取り戻すと、
「はっはっは! やはり突いてきたか。よく聞いているな」
「まぁ、詠唱する時にガッツリ言ってましたから」
「こりゃまいったなぁ~」
相も変わらず冗談で済ませようとする親方だが、今回は違った。
いつものような笑い声はなくなり、穏やかな表情に変わる。
「ああ、そうさ。俺の本名はガレイド・ドレイク。ガイルというのは仮の名さ」
「そう……だったんですね」
ドレイク家。
かつてこの国の覇権を握っていた旧貴族の一角。
ドレイクの伝説と言えば、今では御伽話にもなるくらいの有名な話だ。
だがある時、ドレイク家は国家反逆の罪により全員死刑となり、その後はドレイク家に関わっていた貴族家が次々と失墜していった。
どこまでが本当の話かは分からないが、少なくとも歴史上ではそう記されている。
「親方はドレイク家の生き残りなんですか?」
「いや、俺も一回は死んだよ。家族共々な。だが俺の中で眠っていた相棒が俺に第二の身体と人生を与えてくれたんだ」
「相棒?」
「俺が冒険者時代に出会ったちょっと特殊な生い立ちを持つ相棒さ。ちなみに俺が精霊湖の聖水を扱えるのもそのおかげだ」
となると、精霊の類だろうか?
どちらにせよ、とんでもない存在を使役しているのは間違いないだろうけど。
「親方はその相棒に生き返らせてもらったんですね」
「生き返ったというよりは転生に近いな。魂だけ救ってもらったという感じだ。この身体は二つ目のものだ」
転生か。
そんなことが出来るなんて……
「こんなこというのもあれだが、前の身体を失ったのは悲しかったな」
「そうですよね……本来の身体は――」
「前の俺、結構なイケメンだったし」
「……は?」
「いや、本当だぞ? 俺は権力を持つ貴族家の人間という肩書を持つ上に冒険者としても結構な腕前だったからな。それに加えて出来上がった容姿があったから、モテないはずがなかった。あの時はまさに天国だったなぁ。あははははは」
過去を思い出しながらニヤつく親方。
その緩み切った表情を見るにさぞ至福の時間を過ごしてきたのだろう。
「……」
「あ、その顔は信用してないな? 今ではこんなになっちまったが、昔はすごかったんだぞ!」
「そ、そですか」
「ぬおーーーー! 本当だ。本当なのだぞ!」
適当に切り返すと、親方はその場で崩れ落ちる。
流石にからかいすぎたかな。
「ウソですよ。親方が凄い人なのはよく知ってますから」
「え?」
「昔もそうですけど、今の親方も俺にとっては尊敬する人です。鍛冶師としても一人の人間としても」
「し、シオン……」
「だからこれからもよろしくお願いします、親方」
俺がそういうと、親方は照れくさそうにはにかんだ。
「お、おうよ! なんだ分かってんじゃねぇか! はははははは!」
いつもの笑い声。
うるさくて迫力のある声にいつも暑苦しさを感じていたけど……
「こちらこそ、宜しく頼むぞ。お前は工房の大切な仲間だ。一緒に頑張っていこうぜ」
「はい!」
「あ、一応言っておくが、このことは秘密にしてくれよ。知られると色々とややこしいことになるからな」
「もちろんですよ」
変な噂が広まれば、工房内のいざこざだけでなく経営にも関わってくるからな。
この話は俺の胸にしまっておこう。
「なんかすみません、辛い話をさせてしまって」
「別に辛くはないさ。今はこうして忙しくも幸せな毎日を送っているからな。終わり良ければ総て良しというだろ?」
「ま、まぁ……」
「それよりも、今は剣の方に集中しないといかん。お前もこんなところでのんびりしていていいのか? その内、王女様から催促の通知が来るぞ? はよ作れってな。貴族や王族ってのは気が短い輩が多いからな。俺も前にある貴族のボンボンに剣を仕立ててやった時も毎日のように手紙と使者が送られてきたっけな」
「それは……嫌ですね」
確かに今までのんびりしすぎていたのは否めない。
今は何もないが、向こうもずっとは待ってくれない。
王族を怒らせて変な禍根を残すのは勘弁だ。
「お、俺早速仕上げに行ってきます!」
「おう! 気張ってやれよ!」
「はい! それでは自分はこれで失礼します! 聖水の件、ありがとうございました!」
俺はそれだけを言い残すと、急いで作業台に向かった。
その姿を背中から親方が見守る。
「相変わらず騒がしい奴だな……」
本話もお読みいただきありがとうございます!
前書きでお知らせした重大発表ですが、なんとこの度当作品である『俺の冴えない幼馴染がSランク勇者になっていた件』が幻冬舎コミックス「comicブースト様」にてコミカライズが決定致しました!
これもひとえに皆様の応援あってのものです!
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