219.精霊湖の聖水2
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「これが精霊湖の聖水……」
祭壇に置かれた壺の中には確かにそれらしき液体が入っていた。
とはいっても、見た目はただの水だ。
聖水だからといって見た目が異なるというわけではなかった。
「この水を数滴たらすだけで、ガラクタが神器になる……か」
「実際は数滴じゃ不可能だがな。だがその武具が持つ潜在能力を極限にまで引き出せるという点では伝承通りだ」
にわかにも信じがたが、グランはそれで覚醒したんだよな。
「ま、モノは試しだ。さっさと済ませるぞ。あまりここに長居はしたくないからな」
「何か理由でもあるんですか?」
「この結界内は少し特殊でな。聖水を保管する為に一定の魔力が流動している。その濃度も非常に高いものだ。生身の人間がい続けると、毒なんだ」
「許容範囲以上の魔力を吸収してしまう、ということですか」
「そうだ。それに魔力を吸収するとその分だけ、流動のサイクルが変わってきてしまう。聖水は非常にデリケートな代物だ。少しでも魔力サイクルが変わると、神聖力が低下してしまう。数分も続けばあっという間にただの水になっちまうんだ」
「なるほど……」
となれば早く事を済ませないといけないな。
「親方、早速ですが……」
「ああ、ちょっと待て。今準備する」
親方は柄杓を手に持つと、持参してきた小瓶に聖水を注ぎ込んでいく。
そしてそれを祭壇の隣にあった小さな台に置いた。
よく見るとその台には薄く魔方陣のようなものが描かれていた。
「準備完了だ。あとはここに持ってきた剣を乗せるんだ。鞘から抜いておけよ」
俺は言われた通りに聖水の隣に鞘から抜いた剣を置いた。
「これでどうすれば?」
「後は魔方陣を起動させれば全て分かる。詠唱は【神々に祀られし、神水よ。我の対価を持って、新たなる力を創造せよ≪神力転化≫だ」
「分かりました」
なんだかドキドキしてくるな。
なんかこう、今までに感じたことのない感覚だ。
「ふぅ……」
俺は魔方陣に手を置くと、深呼吸する。
息を整え、精神状態を安定させると、
「【神々に祀られし、神水よ。我の対価を持って、新たなる力を創造せよ≪神力転化≫」
詠唱すると、魔方陣が起動し淡い紫色の光が空間を覆う。
途端に俺の身体に膨大な魔力が放出されていくのが分かった。
「な、なんだこの感覚は……」
魔力を吸い取られている。
でもそれだけではなかった。
「うっ、なん……だ?」
突如脳内に入ってくる描写の数々。
それも一部は見覚えのあるものだった。
「これは……過去?」
いや、記憶と言った方が正しいか。
でもこの記憶は一体何の……
そう考えている内に光は段々と収まっていく。
同時に描写も脳内から消えていった。




