208.お見舞いへ
「おーい、シオンくん~!」
「ガロさん?」
本部の正門前に立って手を振っていたのは、リィナ行きつけの店の店主のガロさんだった。
「すまないね。こんなところで待ち伏せしてしまって」
「いえ、ガロさんもご無事で何よりです」
見たところ、ケガとかはしてないみたいだから、上手く魔物騒動から避難することが出来たみたいだな。
「え、無事って何の話?」
と、心配した直後にすっとぼけるガロさん。
「ガロさんもいましたよね、あの場に」
「……え、もしかしてバレてた?」
「バレバレです。何なら入場ゲートにいる時から分かってましたよ」
「う、ウソだろぉ……」
えぇぇぇ!? みたいな表情を繰り出すガロさん。
やっぱりバレていないと思っていたんだな……
「あんな目立つ服装していれば、嫌でも分かりますって」
「じゃ、じゃあリィナちゃんも俺のことを……」
「多分、バレてますね」
知らんけど。
でも、あの時のリィナはマップに釘付けだったからな。
もしかしたら、バレてないかもしれないけど。
「ということは結構気をつかわせてしまったか?」
「まぁ、気にはなってました」
バレていることを知っていることをバレないように振る舞っていたのは事実だな。
「くっ、良かれと思っていた俺の変装術が裏面に出てしまうとは……何と言う失態!」
〝術〟とは一体……?
そんなツッコミが出そうになった。
「それよりも、ガロさんは何故こんなところに?」
「ああ、実はリィナちゃんが入院したと聞いて病院の場所を聞こうと思ってな。軍本部の人間に知り合いがいるから、こうして訪ねてきたんだ」
「そうだったんですか。俺もちょうどみんなのお見舞いにいくところだったんですよ。もし良ければ一緒に行きませんか?」
「い、いいのか?」
「ええ。僕が話を通せば入れると思うので」
「じゃあ、頼んでもいいかな?」
「もちろんです。馬車を手配してあるので、それで行きましょう」
ということで。
俺はガロさんと一緒に、リーフたちが入院している病院へと向かうことになった。
病院は都の北部のほうにある。
とはいっても一般人が使うような普通の病院ではない。
勇者軍が保有する、勇者の為の特別な医療施設だ。
もちろん、関係者以外は立ち入り禁止。
それが貴族階級の人間であっても、王族の人間であっても、勇者軍の認可が下りない限り、中には入れない。
「ここです」
「おぉ、こんなところに……」
軍本部から馬車で20分ほど。
佇む白い建造物の前に俺たちは立っていた。
一件すると、ただただ綺麗な建物だが敷地内には至る所で防犯用の魔術が敷かれている。
中身を知っていれば、ある意味要塞みたいな場所だ。
「とりあえず中に入りましょうか」
俺が先行し、建物の敷地内に入ろうとした時だ。
「あら、あらららっ! そこにいるのはシオンじゃなぁい!」
背後から聞き覚えのある妖艶な声が、俺の耳に木霊した。