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207.報告

本話より9章の内容に入ります。

本来は番外編2を投稿予定だったのですがまだ構想が練れていないので、保留とさせていただきます。

書き上がり次第、章の間で投稿していこうと思っておりますので、しばしお待ちいただけると嬉しいです。


 グレズリー・ワールドでの一件から少し時間が経った後。

 俺はリベルカさんに事件の報告をする為に勇者軍本部を訪れていた。


「以上がグレズリー・ワールドにて起きた事件の詳細になります」


「よく分かりました。わざわざ報告しに来てくれてありがとうございます」


「いえ。今現在で事件の詳細を報告できるのは俺しかいませんから。それよりもみんなの方は……」


「彼女たちなら大丈夫ですよ。目立った外傷はもちろん、精神系にも異常は見られなかったようですし、一日寝れば完全に回復するとのことです」


「そうですか、なら良かったです」


 一歩間違えていればみんな危なかったからな。

 俺ももしあの場を切り抜けていなかったら……


「それで、シオン。その魔人のことですが、ヴァンゴッドと名乗ったのですね?」


「ええ。確かにそう言っていました」


「なるほど。遂に【統べる者(ドミネーター)】までも出張ってきましたか」


「あの、一つお聞きしてもいいですか?」


「何ですか?」


「その【統べる者】とは、一体何者なんです?」


 ヴァンゴッドの時もそうだったが、いまいちピンと来ていなかった。

 少なくとも俺が勇者をやっていた時は聞いたことがなかった単語だった。


 リベルカさんは俺の質問にすぐに答えてくれた。


「【統べる者】とは、魔王ガルーシャを初めとする五傑と呼ばれる魔王軍大幹部を指す言葉です。魔界での実権は全て彼らが握っており、魔王以外の四人も魔王に匹敵する力を有していると言われています」


「魔王の側近、そして自らも強大な力を持つ魔人たちか……」


「以前、貴方たちが戦ったバルガ、そして前団長のゴルドは【統べる者】の直属の部下に当たります。名前は確か【六魔(ヴァ―ス)】と言いましたね」


 なるほど。

 要するに今日会ったあのヴァンゴッドとかいう魔人が真なるボスの一人というわけか。


 ゴルド、バルガ共に強敵であったが、奴はそれを遥かに上回っていた。

 だが今こうしてリベルカさんの話を聞いたことで、納得がいった。


(【六魔】に【統べる者】か……)


 敵はまだまだ多い。

 バルガやゴルドはあくまでその一部に過ぎない。


 あと四人、奴らと同等の連中がいて、更にその上には魔王を含む五人が待ち構えている。


 今日、あのヴァンゴッドとかいう魔人が言っていた〝挨拶〟というのは、何かの始まりを告げる暗示だったのかもしれないな。

 あるいは、バルガたちを倒した勇者の力量を図りにきたとか。


 そうでなければ、わざわざ会いにきたりはしないだろう。

 

 少なくとも、何らかの目的があったのは間違いないだろう。


「まだまだ、長い戦いになりそうですね」


「はい。ですが、私たちは負けるにはいきません。この人界を守るため、勇者として成すべき目的のために私たちは戦い続けないといけないのですから」


「そうですね。俺も出来る限り、手伝わせていただきます。ここまで関わった手前、やるなら最後までやり遂げたいですから」


「ありがとうございます、シオン。あ、でも今は本業の方に力を入れてください。繁盛しているのでしょう? 色々な場所で工房の名前を聞きますから」


「あはは……まぁそれなりに」


 普通の依頼もそうだが、俺には成さねばならない大事な依頼がある。

 そろそろその仕上げに取り掛からないとな。


「それじゃあ、俺はこれで失礼します。時間があれば、リーフたちのお見舞いにも顔を出してやってください」


「ええ、必ず。シオンも身体には気を付けてくださいね」


「お気遣いありがとうございます。では……」


 俺は席を立ちあがると、一礼して団長室を後にした。


 長い廊下を渡り、そのまままっすぐ正門の方へと向かう。

 すると。


「ん、あれは……」


 正門の先に。

 キョロキョロと辺りを見渡す人物を視認する。


 傍から見れば不審者だが、その姿には見覚えがあった。


「あっ、シオンくん!」


 向こうもこちらの存在に気付いたか、その人物は俺と目が合うと、大きく手を振ってきた。

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