205.隔離される魂
お待たせ致しました。
更新です!
歪んだ空間の中で。
ただ一人しかいないはずなのに、聞こえてくる奴の声。
耳元で囁いてくるそれは、圧倒的な余裕を感じた。
「さぁ、君は彼らと同じ末路を歩むのか否か……試させてもらうよ」
間違いなく奴の声だ。
だが、可笑しい。
(身体が、思うように動かない……?)
まるで誰かに身体を操作されているかのように。
俺の身体は不自由になっていた。
身体を動かすことだけじゃない、声すらも自由に発せなくなっていたのだ。
そして何より面倒なのは、奴の姿が全く見えないこと。
視界に広がるは暗闇のみ。
孤独を感じるその空間には物音さえ一つもしない。
もちろん、リーフたちやグランの声も。
ただ聞こえてくるのは奴からの不快な声だけだった。
「さて、早速君にも味わってもらおうか。魂を傷つけられるその痛みを……」
なんだ、魂を傷つけるって……うっ……!
途端に身体に謎の刺激が走る。
痛みというただ単純なものではない。
感覚的には段々と身体が蝕まれていくような感じだ。
(どう、なっている……)
いつものように力を行使しようにも、身体が言うことを聞いてくれない。
ただ他人に身体全体を弄られているかのような不愉快な感覚だけが延々と続いた。
「へぇ、君も中々しぶといね。普通の人なら、もう倒れているくらいなのに」
なに言ってるんだ……こいつは。
「まぁ、他の勇者たちでもこれくらいなら耐えられたんだから君が何ともないのは当然のことか。なら、君にはもっと上の段階で試してみようかな」
上の……段階? ……ぐはっっ!
またも身体全体に響き渡る謎の衝撃。
今度はさっきの比ではない、単純な痛みも感じるほどの感覚が俺を襲った。
(う、うっうぅ……!)
まるで身体が張り裂けそうなくらいの痛み。
でも目に見えた身体への影響はない。
痛みと摩訶不思議な感覚と奴の声。
俺がこの空間で感じるのは、それだけだった。
「おぉ、これでも耐えるんだ。結構強めにいったつもりだったんだけど、やっぱり君だけは別格みたいだね」
悠々とした声が耳に入って来る。
完全に遊ばれているみたいだ。
(どうにか打開する方法は……ん?)
一つ、ここであることを思いついた。
それはさっき奴が言った「魂を傷つける」という言葉だ。
仮に俺の魂だけを抜いて別の次元に置いているのだとしたら……
(……やってみるか)
この空間において、俺は奴に抵抗する手段を持たない。
ならば、俺が奴に対抗する術を手に入れるには……
グラン、気づいてくれ。俺の意志を……!
目を瞑り、身体全体に走る痛みに耐えながら、俺は相棒に語り掛ける。
すると。
「ん、なんだ?」
突然空間を切り裂くかのように一筋の光が俺の身体全体を包み込んだ。
そして同時にあの声が俺の耳に入ってきた。
『シオン、シオン……!』




