202.第三の魔人
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「こ、これは……」
「どうやら情報は本当だったみたいだな……」
現地につくと、その場は地獄絵図と化していた。
身体をボロボロにして倒れ込む勇者たち。
相当過激な戦闘があったのだろう。
辺りには血が飛び散っていた。
「意識は……まだあるみたいだな」
「こっちも大丈夫だよ」
一人一人、安否の確認を取っていく。
幸いなことに全員命までは奪われていなかった。
全員、重症なことに変わりはないが。
「救護隊の方はどうなっている?」
「今向かっているみたい。時間はもう少しかかるみたいだけど……」
「何とか回復魔法で繋ぐしかないな」
中には適度に魔力を送らないと、生命の維持が難しいものもいた。
「しかも一撃か……」
負傷者の身体を見てみると胸元に深い傷のようなものが。
魔法によって傷つけられたものだからはっきりとは見えないが、この傷が深手となった原因みたいだ。
他の負傷者も場所は違えど、同じような傷跡があった。
「まさに一瞬でやられたわけだな」
それなら展開の早さも納得がいく。
だがそれと同時にあまり認めたくはなかった事実も明るみになってきた。
間違いなくこれは例の魔物の仕業ではない。
それとは別の強大な何かによって彼らはやられたのだ。
ここまで充実した魔力を一気に与えるなんて、普通では出来ない。
それにどういうわけか、全員致命傷は回避されている。
このレベルの魔法を放てる輩なら、命を奪うことなんて簡単だっただろうに……
「やはり、また――ん?」
この時、謎の感覚が俺の脳裏を横切った。
そして脳内にガンガン響く魔力の圧。
「遂に現れたか……」
「し、しーちゃん? どうかした?」
俺が怪訝そうに空を見上げていると、リーフが不思議そうに俺を見てくる。
リーフはまだ気づいていないみたいだ。
「みんな気をつけろ! 黒幕のお出ましだぞ!」
声を張り、みんなに指示を送るが。
「く、黒幕って……誰もいないぞ?」
「シオンは分かるの?」
ユーグもリィナも気づいてない様子だった。
が、その時だ。
「おやおや、少し回廊から顔を出しただけで気がつかれるなんて。やっぱり、君は別格なんだね」
どこからか聞こえてくる透き通った声。
若い男の声だ。
その声が聞こえた後、空に謎の大きな扉が現れる。
扉はゆっくりと開くと、中から魔人がその姿を露わにした。
「ま、魔人……!」
「やっぱり、そう来たか……!」
その姿を見て、皆の警戒態勢はマックスまで引き上げられる。
先ほどまでの和やかな空気から一変、緊迫した空気へと転化した。
扉から現れた魔人は宙からそっと地に足をつけると。
「やぁ、初めまして。君たちがゴルド達を倒した勇者一行だね?」
爽やかに挨拶をしてくる。
見た目こそ、金髪の爽やかイケメンという感じだが、騙されてはいけない。
こいつの魔力は想像を遥かに超えるレベルだった。
それもゴルドやバルガとは比較にならないくらいの。
「何者だ」
俺がそう一言飛ばすと。
「おっと、いきなり出てきて自己紹介をしないのは不敬だったね。申し訳ない」
これまた爽やかに言葉を返してくる。
魔人は胸元に手を添え、丁寧に礼をすると。
「改めて……初めまして、勇者の皆さん。僕はヴァンゴッド=フォン・サタン、魔王軍序列第五位……『統べる者』の一人です」