197.また災難
更新ですっ!
「あぁ……」「はぁ……」
お化け屋敷を攻略し、時刻は夕暮れ時。
俺たちは互いに疲弊した顔でベンチに張り付くように座っていた。
「怖かった。少なくとも寿命が3年は縮まったわ」
「そんなに……?」
確かに今のリィナはだいぶ疲れ切っているみたいで。
いつもはこんな疲れた姿は絶対に見せないから、本当に心身ともにきてるんだろう。
(今日は普段は見れないようなリィナの一面を沢山見れたな)
もしユーグにこれを話したら、さぞ羨ましがられるだろう。
そして確実に面倒なことになる。
(そういえば、あいつらは……)
完全に気を抜いていて忘れていたが、周りを見る限り、彼女らの姿はなかった。
ひとまず安心ってところだが……
「いつまで監視するつもりなんだ、あの人は……」
未だに感じてくるマスターの視線。
お化け屋敷に入っていた時もずっと気配を感じていたから、今の今までずっと尾行していたのだろう。
ここまで来ると、とんでもないストーキング能力だな。
リィナはお化け屋敷に続いてこの状態だからか、気配に気づいてないみたいだし。
「ごめん、シオン。色々と取り乱しちゃって」
「別に気にしてない。というかそもそも俺があの場に強引に引き込んだのが原因だし。俺の方こそ悪かった」
「うん、それは反省してほしい。本当に苦手なの、ああいうの」
「意外だったな。あそこまでリィナがパニックになるなんて」
「まぁ昔色々とあってね。お化けとかそういう類のものが嫌いなの」
「そうだったのか」
「うん。正直、魔人とかの方が何倍もマシ」
「マジか……」
魔人の方が数倍怖いと思うけどな……
価値観の問題か。
「でもどうしていきなりあんなことを?」
「あんなこと……? ああ……実は――」
俺は自分がリィナを強引にお化け屋敷へと引き込んでしまった経緯を説明すると。
「なるほど。それは確かに後々面倒なことになりそうだね」
「ああ。だから咄嗟の判断であそこに隠れるという選択をしたわけだ。建物内に逃げれば見つかる危険性は格段に低くなると思ってな」
「それなら仕方ない。でもそれならそうと言ってくれれば、わたしがもっといい隠れ場所を提案したのに」
「まぁ、話す前に結構ヤバイ感じだったから余裕がなかったというか」
実際少しでも気付くのが遅かったら確実に見つかっていただろう。
「ホント、ごめん。せっかく楽しい所に来たのに、嫌な想いをさせちゃったな」
「大丈夫。わたしもまだまだ未熟者だね」
そういうとリィナはふぅっと息を吐きながらベンチから立つ。
「さて、次はどこに行く? まだ回ってないところがあるからそこに行きたい」
「それはいいけど、大丈夫なのか? さっきまでぐったりだったのに」
「それならもう大丈夫。だいぶ休んだから」
「そうか? ならいいけど」
俺もベンチから離れ、リィナの横に立つ。
「じゃ、気を取り直して行こっか」
次の目的地を決め、進もうとしたその時だった。
「ま、魔物だっ! 魔物が出たぞぉぉぉっ!」
震え声で叫ぶ誰かの声が俺たちの耳に入ってきた。