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196.少女の甘え

更新です!


「うぅ……まさかこんなことになるなんてぇ……」


 ――ガタンッ!


「ふえっっ!?」


 ――ガタガタガタガタ


「な、なに……っ?」


 ――ドーーーーン!


「ひぃっっっっ! 止めて、本当にもう止めて! わたし良い子になるから!」


 隣でぶつぶつと嘆きながら歩く小さき勇者。

 キャストさんからの説明が終わり、迷路内に入ってからずっとこの調子である。


「大丈夫か……?」


「大丈夫……じゃない。わたし、今日が命日になるかも」


「そんな大袈裟な……」


 彼女にここまで言わすとは相当お化けとかの類が苦手なのが分かる。

 相応な反応なんじゃないか? と言われるかもしれないが、彼女に至って別だ。


 いつも冷静沈着な感じからは想像もできないほどのビビりっぷり。

 現に今の俺がそのギャップで驚いている。


「ね、ねぇシオン……?」


「ん?」


 いつもより若干高く、怖さからなのか少し震えた声で俺を呼ぶリィナ。

 そして俺の服の袖をちょこんと撮んでくると、


「で、出口に出るまでくっついていてもいい……?」


 甘い声で懇願してくる。

 いつもなら滅多に、というか絶対に見せないであろう彼女が姿がそこにあった。


「いいけど、前はしっかり見ないと。転んだりしたら危ないぞ」


「い、嫌! 前も見たくない。というかこの空間をわたしの視界に入れたくない!」


「そこまでなのか……」


 俺はそこまでこういったものが苦手なわけじゃないから大袈裟に感じてしまうが、本当に苦手な人はこの反応が普通なのだろうか。


 さっきからずっと俺の袖に張り付いて前も見ようとしない。

 完全に視界をこの空間から遮断していた。


「はぁ、仕方ないな。んじゃあ、俺の後ろ側に回れ」


「う、うん……分かった」


 リィナは指示に聞くと、俺の背後に回った。

 後ろにいくとすぐさま俺の背中にくっつき、もう離すまいと言わんばかりの力で俺の服を撮んだ。


「これなら、怖くないだろ?」


「す、少しは……でもまだ怖い」


 声の震えがさっきよりも収まったので言葉通り、少しだけ楽になったのだろう。

 流石にこれ以上の策はないため、後は出口まで我慢してもらうしかないが。


「んじゃ、早く出口まで行くぞ。この状態だと早く歩けないから、ゆっくりな」


「分かった。でも出来る限りでいいから早く歩いてほしい……です」


 急に言葉遣いが変化すると共に、力を込め、俺の背中にしがみついてくるリィナ。

 早く歩けと言われたが、俺にとっては相応の重力が後ろに行っているため、早く歩こうにも歩けない状態だった。


 感覚的には何かを引っ張っているかのような感じ。


 しかもリィナが結構な力で引っ張っているからか、普通に歩くだけでも大変だ。

 

「離れないように気をつけろよ」


「うん……」


 いつもここまで素直な振る舞いができたらな……と思いながら、先へ進んでいく。

 

 リィナは軍内では確かに人気があるが、その反面彼女のことを快く思わない者もいる。


 知名度がある者ゆえの事象だが、その理由の大半が性格的なところらしい。


 性格が悪いわけじゃないんだが、年齢に対して見事なまでに比例しない振る舞いが一部の人間に反感を買っているとのこと。


 前にユーグが教えてくれた。


 まぁ彼女の振る舞いは少し大人すぎるところがあるから、そう言った感情を持つ人間が現れてもおかしくはない。


 俺は別に何とも思わないが、ある意味彼女にとっては利点でもあり、汚点でもあるところだろう。


 人間関係って大変だ。


 この後。

 俺たち無事にお化け屋敷を攻略することができた。


 ドタバタしながら、リィナの度重なる悲鳴を聞きながら。

 俺の方は別の意味で大変だったのは、言うまでもない。

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