194.意外な弱点
更新です!
毎度遅くなってしまい、すみません……
俺たちが逃げ込んだ場所は薄暗く、どんよりとした空気が漂っていた。
咄嗟の判断だったから、逃げ込んだ場所のことなんて考えてなかったけど……
「まさかここがお化け屋敷だったとは……」
しかも結構人気があるようで中に入ると大勢の人が列に並んでいた。
「大陸一の怖さを誇るスリルアトラクション『ジ・エンド』か……」
パンフレットでこのアトラクションの概要を見ると、そう書かれていた。
このアトラクションは最大四人一組で迷路内を歩くウォークスルータイプとなっており、随所随所に設けられる選択肢を選びながらゴールを目指すというものらしい。
「名前からして凄いけど……」
確かに列に並んでいる時点から、恐怖を促すための内装になっていた。
作り物にしてはかなりのクオリティーだ。
「あの髑髏とか今にも動き出しそうだしな……」
上に這いつくばるように設置されていた作り物の髑髏を見ながらそう呟いていると、
「し、シオ……ン……」
周りに聞こえないレベルの超小さな声で耳打ちしてくる人物が。
もちろん、俺の隣にいる人物など一人しかいない。
「り、リィナ? どうかしたか?」
「…………」
急に黙り込むリィナ。
そう言えばここに入ってからリィナの口数が極端に減っているような……
「大丈夫か、リィナ? どこか体調でも――」
「だいじょぶ……」
「えっ……?」
「ここはもう大丈夫……」
普段の静かで強気な感じとはまるで違う弱々しい声で。
俺の服を指先だけちょこんと掴んできながら、彼女は言う。
今までリィナと付き合ってきて一度もなかった反応だ。
(と、いうことは、まさか……)
「リィナ、もしかしてこういうのにが――」
「別に苦手じゃないっ!」
「おぉう……」
落差の激しい返答が俺の耳を貫く。
だが、言葉はいくら強気でも彼女の手は震えていた。
なんせ掴まれた服を通してその振動が伝わってくるくらいだ。
こんな反応を見せられれば、俺が見ても分かる。
リィナはこういった類のモノが相当苦手みたいだ。
「や、やっぱり出るか! アトラクションは他にもいっぱいあるし!」
「し、シオン……こ、怖いの?」
「バカ言え! 俺はこんなのぜんっぜん平気だ。そういうリィナこそ怖いんじゃないか?」
「こ、怖く……ない!」
「でもさっきからずっと震えてるぜ?」
「こ、これは怖くて震えているんじゃないの! えっと……そう! 楽しみのあまり身体が震えあがっているの! シオンこそ嘘はよくない」
「ほぉ~~~……」
列が前に進んでいくにつれて震えと同時に、服を掴む力が増していた。
相当我慢をしている、というのは百も承知なのだが。
俺もワルな男だ。
彼女のそんな姿を見ていたら、揶揄わずにはいられなくなっていた。
「んじゃあ、根競べといこうじゃないか。ルールは至って単純、先に悲鳴を上げた方が負けだ。どうだ?」
「の、のの……望むところ!」
逃走劇から一転。
俺たちの謎を極めた勝負が、始まろうとしていた。