193.鉢合わせ
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俺とリィナの遊園地デートが始まってから2時間ほどが経った。
俺たちはパーク内のフードスペースで休憩を取っていた。
「あぁ~~~~……」
「シオン、へばるの早すぎ」
「ぼっちに人混みは辛いんだよ……」
一つの真実である。
今まで無縁だった世界に足を踏み入れるということはそれなりのギャップが生まれる。
だが今回は想像以上だった。
普段の鍛錬とはまた違った謎の疲れが身体全体にのしかかってきたのだ。
ショッピングモールに行った時はこうまではならなかったんだが……
「こういうことならもっと訓練を積んでおくべきだった……」
「なんの訓練……」
手をぶらんぶらんにさせ、顔だけをテーブルに上に乗せながら唸る俺にリィナは呆れ顔を見せる。
「ああ~頭がぐるぐるする……世界が回るぅ~」
「シオン、貧弱すぎ……」
「何とでも言ってくれ……」
今、俺は人生で一番醜い姿を曝していることだろう。
でもそんなことなんてどうでもよかった。
今は身体を休めることに集中しないと――
「ん……?」
顔を前に向け、たまたま目に入ったものに俺は動きをピタリと止めた。
(あ、あそこにいるのって……)
見間違いかと思い、じっと凝視するが、それは見間違いでも何でもなかった。
俺の額から焦りによる汗がじわじわと流れ出てくる。
(ま、間違いない。あれはリーフとユーグ!)
「シオン、どうしたの? 顔色が悪いけど――」
「リィナ、移動するぞ!」
「えっ……?」
俺は即座に立ち上がるとリィナの手を握り、その場を後にした。
彼らに見つからないように早歩きで。
「し、シオン! いきなりどうしたの? 頭がグルグルしてたんじゃ……」
「なんか突然活力が湧いてきた。今の俺ならこの遊園地を完璧に回りきることができる気がする」
ウソではない。
二人を見た途端、俺の背中を押すように力が湧いて出てきたのだ。
だが真意は……
(こんなところを二人に見られたら、色々と面倒になる! 厄介なことになったな……)
現場を目撃されたことによる焦燥感が全てだった。
リィナは反応からしてまだ気づいていないみたい。
ならばやることは一つ。
(この遊園地デートが終わるまで、何とかして逃げ切らなねば……!)
これに限る。
リィナ自身はあまり気にしないかもしれないが、俺はそうではない。
理由は諸々あるが、とにかく会わないことが最善なのだ。
(どこかに身を隠せる場所は……あっ!)
ちょうど良さそうなモノが視界に入ってきた。
「リィナ、あそこ行こう! あそこなら身を隠せ……じゃなくて面白そうだし!」
「いや、でもあそこは……し、シオン!?」
少し声を震わせるリィナ。
だが俺は焦りによる影響で、そんなリィナの心情の変化を悟ることが出来なかった。