183.また驚嘆
リラちゃんを倉庫に案内した後、俺たちは作業台の前で王女に贈る剣の作業に取り掛かっていた。
『あの娘に任せて大丈夫なのか?』
「大丈夫だと信じている」
しっかりしている子なので任せる分には大丈夫だろう。
ただ、無理をしすぎてしまうか心配だった。
まぁでもおかげで俺は俺のやるべき作業を進めることができるわけだが……
「だいぶ時間をとったけど、今日からやらないとな。期限も迫ってきてるし」
『次のステップか?』
「ああ。とりあえず枠組みは完成したから今日からは正剣化の作業に入ろうと思ってる」
第二の関門、正剣化。
文字通り、この剣を目的に合った正しい姿に変える作業のことだ。
一言で言えば剣に特色をつける作業みたいなもの。
今回は魔剣をベースとして作るため、まずは魔剣化させないといけない。
「よいしょっと……」
俺は厳重に保管しておいた竜玉を作業台の上に置く。
『またそれを使うのか?』
「もちろん。今のところこれに勝る素材はないからね。魔剣化の材料にはこの上ないものだよ」
本来、魔剣化するには魔鉱石という鉱石か魔物のコアが必要となる。
だがそれではこの剣のポテンシャルを発揮させることは難しい。
より良質なものを作るには良質な素材で挑まないといけないのだ。
「グラン、少し手伝ってくれるか?」
『ああ、分かった』
魔剣化をするには必ず工房の外でやらないといけない。
というのも、魔剣化する際に溢れ出る大量の魔力が原因で何が起こるか分からないからだ。
失敗したら大爆発が起きる……なんてこともあり得る。
というわけで。
「失敗した時の為のカバー、頼むな」
『なるほど、我に手伝えと言った理由がそれか』
「イエス!」
万が一、魔力がオーバーフローしてもグランの魔力で打ち消すことができる。
なんてったって、グランの持つ魔力は次元が違うからな。
大抵のものは打ち消せる。
一番いいのは失敗しないことだけど……
竜玉と剣を持って。
俺たちは工房の外へと出る。
すると、
「あれ、リラちゃん? どうしたのこんなところで……」
「あっ、シオンさん。すみません、掃除中だったのですが懐かしいものが眼に入ったもので……」
「懐かしいモノ?」
彼女が向ける目線の先には女王から渡された剣があった。
「この剣ってレーヴァテインですよね」
「えっ、知ってるの?」
「もちろんです。だって私のお姉さまが使っていた剣なんですもの。でも、どうしてここにあるんです……?」
「いや、それには色々と複雑な理由があって……ってあれ、ちょっと待って。今なんていった?」
「はい?」
「さっきお姉さまって言っていたけど……」
「あ~! そういえばまだ言ってませんでしたね。この国の女王、クラリス=フォルン・ルーベリックは私の従姉に当たる人なんです」
「……え、えぇぇぇぇぇっ!?」
自分でもどこから出ているのか分からないほどの声が。
工房の外に響いた。