181.ケジメ
「えーっと、それはどういう意味かな?」
「言葉通りの意味です。わたしの全てをシオンさんに捧げます。身も心も全て!」
身も心も全てねぇ……
(……って、なんでそうなるの!?)
オレ、そこまで深刻な決断させるようなことをしたか!?
いや、確かにかなりアウトに近いことはしてたけど!
「リラちゃん、それ本気で言ってないよね……?」
「いえ、わたしは至って本気で言っているんですが」
マジな顔でそう言い返してくるリラちゃん。
あっ、これは本当に本当のヤツだ。
「えっと……」
こういう時、なんて返答したらいいのだろう。
「な、なぁグランさん……」
「わ、我に聞くな……!」
助けを求めようとする前に拒否されてしまった。
心の中を見透かせることができるってホント、いいよな。
まぁともかく、彼女のとんでも要望に「はい」なんて言えるわけがないので……
「リラちゃん、別にそこまでしなくても大丈夫だよ。本当に気にしてないから」
「それではわたしの気が収まりません! 人としてケジメはつけないと!」
ああ……これ多分何言っても引き下がらないやつだ。
変に真面目な人に限って、こういう人多いんだよなぁ……
度が過ぎるっていうか。
もちろん、気持ちはすごく分かるんだけどね。
「でも流石にその要望にうんとは言えないよ」
実際事故だしな。
リラちゃんも悪気があってやったわけじゃないし。
それに同じ土俵で語るなら、俺だって……
「じゃ、じゃあわたしはどうしたら……」
しゅんと俯く彼女。
本来は謝ってくれるだけでも十分なんだが……
(そんなこと言っても聞かないだろうからな、多分)
何かリラちゃんの償いの精神を満たすことができることがあればいいんだが……
「あっ、そうだ」
ピーンと一つ、いいことを思いつく。
「リラちゃんは家事は得意?」
「鍛冶……? 剣の鍛錬はしたことがないですが……」
「あーそっちじゃなくて家の方の」
場所が場所だけに間違えるも無理はない。
「あっ、家事ですか? 家事なら得意な方ですよ。実家でもよく親の手伝いとかで色々とやってましたので」
「そっか。んじゃあ、一つ頼みたいことがあるんだけど……少し時間を貰える?」
「も、もちろんです! 何なりと言ってください」
頼み事と言ってもそんなにたいそうなことじゃない。
ただ、最近ずっとやろうと思って手をつけていなかったことだ。
俺は準備をするからと一度リラちゃんを部屋へと返した。
『シオン、一体あの娘に何を頼むのだ?』
「まぁ、アレだ。そろそろやらないとなって……」
『あ、ああ……』
グランは一度目にしたことがあるからすぐに察してくれた。
だがそれ故に、気の毒に思ったのかかなり微妙な反応が返ってきた。