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177.試み


 あれから。

 俺たちはリラちゃんをどうにかして起こすため、猫じゃらし使った作戦を敢行した。


 のだが……


「ダメじゃん!」


『ふむ……やはりダメだったか』


「やはりって……初めから成功率低いの前提だったのかよ!」


 まぁ予想はできたことだけど……


『もしかしたら……とは思ったんだがな。次の手を考える必要があるみたいだ』


「早く他の方法を考えないと。親方たちにこんなところを見られたら……」

 

 社会的問題で終わる……かもしれない。

 このシチュエーションだと俺が連れ込んだものと一番誤解されやすいだろうからな。


『分かっている。しかしながら、この娘の睡眠能力は図り知れないものだな。ここまでやって効果なしとは……』


「関心している場合か。それに関しては同意するけどさ!」


『だがここまでとなると少し趣向を変えなければならない。普通の方法では効果はないだろうからな。そうだな……例えば精神に影響を与えてみたりとか』


「精神に……?」


『人は感情で行動を行う生き物だ。物理的な干渉がダメなら、間接的なやり方を行使するしかない』


「行っている意味は何となく分かるけど……相手は寝てるんだぞ?」


 精神に影響を与えようにも無意識な状態じゃ意味を成さないのではと思うんだが……


『いや、人間は寝ている最中でも感情操作は可能な生き物だ。夢想という行為があるだろ?』


「夢を見ることか?」


『そうだ。しかも人間の場合、自分の身に起きたことを夢に描くといわれている。要は、外部から精神に訴えるかけるほどの刺激を与えればあるいは……ということだ』


 う~~ん、難しい理屈だ。


 言っていることは何となく分かるっちゃ分かるけど……


「外部からって言っても……例えばどんなことをするんだ?」


『そうだな。あまり望ましくない行為ではあるが……その娘の乳房を触ってみるとかいいかもしれんな』


「ち、乳房っ!?」


 思わず声に出ちゃったよ。

 

 でもこればかりは仕方ない。

 まさか、あのグランの口からおっ○いの話題が出てくるんだもん。


 しかし動揺してはいけない。

 これは猥談ではなく、真面目な話なのだから。


「ほ、本気で言っているのか……グラン?」


『あくまで一例だ。他に方法があるなら提示してくれ』


 とはいっても他に思いつく方法はないので。


「一応聞いておくけど、なんでおっぱ……胸を触ることが精神影響に繋がるんだ?」


『人が最も感情に左右される瞬間、それは恐怖と羞恥だ。これらの感情は時には人の制御機能を阻害することがある』


「その二つだと前者はないから、消去法で後者ってことか」


『そういうことだ』


 理屈的には筋の通った説明だ。

 

 でもいいのか? 


 まだ幼いとはいえ、彼女は立派な女性だ。


 今はグラン以外誰も見ていないとはいえ、これは人としてのモラルに反するのではないか……


 それに……


「やるとしても、この状態でどうやって触るんだ。俺は背中を向けてるんだぞ? この状態だったら、グランが触った方がいいんじゃないか?」


『我もできることならそうしたい。のだが、生憎娘とお前は隙間がないくらい密着している。手を通そうにも娘の胸部までは届かないだろう。脇から通せればとも考えたが、残念ながら豊かとは言えないからな』


「さらっと失礼なことを言うなって……」


 だいぶ言葉は選んだんだろうけど。


『まぁとにかく、触るというよりかは背中で擦るという感じだな。それだけでも効果はあるだろう』


 効果……ねぇ。


 さっきのくすぐり作戦を失敗した後だから信憑性に欠けるけど。


(他に方法が思いつかないんじゃ、やるしかない)


 たとえモラルに反していても、見られなければいいんだ。


 そう、バレなければ犯罪にはならないのだ!


「……よし分かった。やってみよう」


 ここは我が相棒を信じて突き進むことに。


(ごめん、リラちゃん!)


 心の中で一言謝罪をすると、俺は背中全体にグッと力を入れた。

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