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175.過去の記憶

 

 その日の夜。

 俺は工房内にある部屋の窓際で空を見上げていた。


 リラちゃんのこともあり、親方に許可を貰って工房に泊まることにしたのだ。


 ただし、作業は一切禁止だと念を押されてしまったが……


「今日は一段と月が綺麗だな……」


 今までゆっくりと空を見上げたことはあまりない。

 けどその中でも今日の夜空は綺麗だった。


 空気が澄んでいて、星々が明瞭に見える。


「ふぅ……」


 温かいコーヒーが入ったマグカップを片手に息をついていると。


『黄昏てどうしたんだ? お前らしくもない』


「グラン、起きてたのか」


 ドアの近くに置いといた剣立てからふわふわと浮かんでグランがやってくる。


『何か考え事か?』


「まぁな」


『あの娘のことか?』


「ふっ、ホントなんでも御見通しなんだな」


『お前とは聖魂で繋がっているからな。ある程度のことは分かる』

 

 まぁそうだよな。

 グランは俺にとって唯一心の中で意見を共有し合えるヤツだ。


 隠し事しても、すぐにバレてしまう。


 俺の奥底に眠るプライベートゾーンに踏み入ることができる数少ない相手だ。


『我で良ければ聞くぞ?』


「じゃあ、一ついいか?」


『なんだ?』


「俺さ、彼女……リラちゃんと一度会ったことがあるような気がするんだ」


『奇遇だな。我も同じことを思っていた』


「グランもか?」


 かつて俺が勇者だった頃、俺は何人かの子供を助けた経験がある。

 でもその中で一番、というか今でも印象に残っている出来事が一つだけあった。


「じゃあ、あの時に見た”眼”がもし彼女なら……」


『邪眼を持っているかもしれないと、お前が言っていた時のことだな?』


「ああ。その子の眼を見た瞬間、とんでもない力が身体の中に入っていくのを感じた。でも一瞬だけだった」


 感じたのは一瞬だけ。

 でもその後の10秒くらい震えが止まらなかったのを覚えている。


 あれは何だったんだと未だに思っている出来事だ。


『でも可能性はあるかもしれないな。あの娘の力はその辺の奴らと比べて一歩抜けている』


「その上、人格を二つ有するという他者にはないモノを持っているとなると……」


 彼女にとっては強みであり、弱みでもあるだろうけど。


 今思えば彼女の覚醒した状態の人格はあの時と近しいものを感じた。

 

 だからどうしたと言われればそれまでなんだが。


「ま、考えすぎか。悪いグラン、いきなり変な相談を持ち掛けて」


『いや、我は構わないが……寝るのか?』


「うん。明日からまた通常稼働に戻らないとだからね。今の俺には考えるよりもやらないといけないことがあるし」


『そうだな。ゆっくりと休むといい。あの娘ことなら任せろ。我が定期的に様子を見に行く』


「すまん、グラン。手間をかける」


『気にするな。我に睡眠は不要だからな。むしろ暇潰しができてちょうどいいくらいだ』


「そうか。じゃ、後は頼むわ。おやすみ」


『ああ』


 俺はベッドに入ると布団をかけて横たわる。

 一応毎日洗濯班が洗濯してくれているからか、良い香りがする。


(あの時のアレはなんだったんだろうな……)


 ゾクッとくるような感覚だった。

 でもあの時に一番衝撃を受けたのはそれではない。


 俺が一番衝撃を受けたのは……………魔物とかなど比にならないくらいの圧倒的な邪悪なオーラを感じ取ったことだった。

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