163.救援
「だ、大丈夫ですか!?」
駆け寄りながら、声をかけてみるも返答はない。
少し揺らしてみるが、うつ伏せに倒れたまま、ビクともしなかった。
「グラン、原因を調べれたりするか?」
『魔力を取り込んで、分析することは可能だ』
「頼めるか?」
『やってみよう』
グランは相手の魔力を少しだけ吸収すると、原因の分析を始める。
そして数分ほど経った後、原因が解明した。
『分かったぞ。恐らく軽い脱水症だ。体内の水分の低下が激しい』
「じゃあ、水が必要だな」
だがその前にこの人を木陰に移動させないと。
今日は日差しもそれなりに強いし、気温も平常よりも高い。
熱中症になってもおかしくない天候だ。
俺は倒れていた人を抱きかかえると、近くの木陰へと移動させる。
「あとは水だな……」
俺は懐から水袋を取り出す。
そして被っていたフードを取ると……
「なっ、女の子!?」
ローブの中は純白の肌に美しい水色の髪を持つ女の子だった。
歳は多分、軍の中でも一番若い層に当たるリィナと同じかそれよりも下だろう。
確かに抱えた時の重さ的や感触的に男ではないなとは思っていたが……
「……よし、これでOk」
少し驚きつつも、俺は彼女に水を与える。
意識はまだなかったため、飲ませてあげる形になった。
『うむ、順調に回復している。これで少し休めば、そのうち意識は戻るだろう』
「良かった……」
でもなんで年端もいかない少女が一人でこんなところに……
装備的に旅人ってわけでもなさそうだしな……
「……ん? なんだあれは」
寝ていた彼女の腰辺りだろうか。
たまたま目を向けた先に何か光るものを見つける。
俺はローブを少し捲ると、その光の正体はとんでもないものだった。
「こ、これって……!」
『ん、どうしたシオン』
一応目を覚ました時に備えて(驚かせないように)人間姿になっていたグランが覗きこんでくる。
『ん、これは聖威剣ではないか』
「だよな、やっぱり……」
見たところ、恐らく短剣タイプの聖威剣だ。
若干だが、短剣から魔力も感じる。
「ってことは、この子は……」
『勇者、ということになるな』
こんな幼い子が勇者……か。
昔ならあり得ない。
というか、当時は一定の年齢制限があったからな。
能力が他の人よりも数倍突出しているなら話は別だが、基本的に一定の年齢に達していなければ試験すら受けることができない。
俺がいた時は確か13か12歳以下はダメだったような気がする。
まぁ俺は例外的に11歳の頃に勇者になったわけではあるが……。
『で、シオン。これからどうするのだ?』
「とりあえず彼女の目が覚めるまでここにいよう。流石にここへ置いていくことはできない」
『分かった。我はこのままの姿でいればよいのだな?』
「そうしてくれ。目が覚めて早々、驚かせるのは身体に悪いからな」
目が覚めて喋る剣が目の前にいたら、奇想天外のなにものでもない。
逆に驚いてまた気絶してしまう可能性もあるからな。
グランには暫くの間、人の姿でいてもらおう。
すると。
「……ん、んん……」
『お、どうやら目が覚めたようだな』
ようやく意識が戻ってきた様子。
徐々に目が開いていくと、その美麗な双眼が姿を現した。