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160.変身……!?


「グラン、いたのか……」


『おはよう、シオン。今日も早くから精が出るな』


 ふわっと浮かぶその黒光りした(あいぼう)は少し低い声色で俺にそう言ってくる。

 グランはプカプカと俺のもとに寄って来ると、


『その様子だと行き詰っているみたいだな』


「まぁな。昨日で土台はできたんだが、そこから先をどうしようか悩んでいたんだ」


『だからレーヴァテイン(それ)を振って気分でも晴らしていたってことか?』


「それもあるけど、この剣をもっと知らないといけないなって思ってさ。王女が求めているのはこれに匹敵するか、あるいは超える一本だし」


「なるほど。身体に使った感覚などを叩きこませるためか」


「そゆこと」


 ”頭で案が出ないなら、身体を使ってみることも重要だ”


 かつて親方が見習い時代の俺に言ってくれたことだ。

 職人にとって感覚を知るということはより良いものを作る近道になる。


 要するに脳だけでなく、身体全体を使うことも職人にとっては大切なことなのだ。


「ところで、グラン。さっき言っていたことだけど……」


『ああ、実戦形式でやってみたいのだろう?』


「まぁ、できたら嬉しいけど……いいのか?」


『もちろんだ。我でよければの話だがな』


「いや、全然いいよ。むしろお願いしたいくらいだ」


 グランレベルが相手になるなら、これほど好都合なことはない。

 その方がこの剣の潜在能力(ポテンシャル)も発揮できるだろうからな。


「んじゃ、早速やろう。あ、でもその前に移動しないと。もしものことがあったら危険だ」


『分かった』


 と、いうわけで俺たちは一度工房を抜け出し、一戦交えることにした。

 親方にもしっかりと許可を貰い、俺たちは目的地へと足を運ぶ。


 そして……


「……この辺でいいだろう」


 やってきたのは工房から少し歩いた場所にある森林地帯。

 この先へ進むと、王都に繋がる道に出る。


 暴れるのに適した場所を探していたら、比較的広い場所があったので、ここで一戦やることになった。


『我はいつでもいいぞ。用意が出来たら言ってくれ』


「おう!」


 俺は素振りやら走り込みやらして軽く準備運動をして、身体を温める。

 そして段々身体が温まってきたところで。


「よし、俺の方も準備Okだ。始めよう、グラン」


『うむ。ところで力加減はどうすればいい?』


「鍛錬の時くらいでいいよ。今回はこの剣の能力を感じたいだけだから」


『了解した』


 グランは剣先をこちらに向け、戦闘態勢に入る。

 俺も姿勢を低く保ち、レーヴァテインを構えると……


「……行くぞ、グラン!」


 思いっきり地を蹴り上げ、グランに刃を向ける。

 初めの一刀を振りかざすと同時にグランは剣体を横に向け、俺の一撃を抑え込む。


 連撃や二段斬りなど様々な剣技を織り交ぜ、グランに迫る。

 が、流石はグランだ。


 全ての攻撃を見事に受け止めてくる。


 森中に鉄と鉄が擦れるような音が響き渡る。

 

 だがほんの数分戦ったところで、俺は一度攻撃の手を止めた。


『……ん、どうしたんだシオン?』


 突然攻撃の手を止めたことで、グランも剣先を向けるのを止める。


 もちろん。

 俺が攻撃の手を止めたのには理由があった。


「いや、何かこう……違和感があるなって。対人じゃないから、いつもみたいに戦えないというか……」


 鍛錬の時なら構わない。

 だが実戦形式となると、やはり対人戦の方が感覚を得やすいのだ。


 無論、目的はレーヴァテインを試すことだけど、やり方によって感じ方も変わってくる。

 

 我儘な言い分に聞こえるかもしれないが、やり方一つで本当に捉え方が変わってくるのだ。


『対人戦の方がいいのか?』


「できればね。でも流石にそれは――」


『分かった。ならあれを試してみるとするか……』


「あれ……って?」


『まぁ、見ていろ』


 そういうとグランは突然喋らなくなり、そのまま固まったかのように直立不動になる。

 それが一分ほど続き、どうしたのかと思った次の瞬間。


 グランの剣体が黒い光を帯び、宙に舞う。

 そしてその光と共に形が人型へと変わっていく。


「お、おいおい嘘だろ……」


 まさか……と思っていたことが次第に現実になっていく。

 そんな過程を唖然と見守っていると、黒い光は徐々に消えていき……


『ふぅ……これでどうだ?』


 低い声はそのままに。

 長い黒髪を持ったイケメンが、闇の中からその姿を現した。

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