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16.蠢く脅威


 ここは王都南西にある地下大牢獄。

 

 ここでとある計画が人知れずに動こうとしていた。


「もうそろそろですか、親分」


「ああ、来るはずだ」


 大柄な体型にガッチリとした筋肉質の身体。

 そしてその人物を囲むようにして複数の男たちが牢獄の中で息を潜めていた。


「いよいよこの時が来たんですね」


「そうだ。そして、後は……」


「最後の仕上げをするだけってわけですね」


 取り巻きに囲まれた大柄の男はコクリと無言で頷くと同時に。


「……来たな」

 

 と、その時だった。


「やぁ、皆さん。お待たせしてしまったかな?」


 牢獄の外。

 黒い影を纏うようにして現れたのは特徴的な白スーツに身を包んだ男だった。


「ようやく来たか、べルモット」


「お久しぶりです。最後に会ったのはもう10年以上も前になりますかね」


「そんなことはどうでもいい。早くここから出せ」


 大柄の男は睨みつけながら、白スーツの男に命令する。


「もう、貴方は相変わらずですね。せっかちなところも10年前と変わってません」


「そう言う貴様こそ、その趣味の悪い服装は健在なんだな」


「しゅ、趣味が悪いですと!? 貴方にはこの美しさが分からないのですか!」


「ふん、分かろうとも思わんな」


 くだらない言い合いを始める男二人。

 そんな様子を見ていた取り巻きの男たちは、


「あ、あの……親分、ベルモット様。そろそろここから離れた方が……」


「おっと、そうですね。失敬失敬」


 そう言ってベルモットと呼ばれる白スーツの男は檻を破壊する。

 そして檻から出てくる大柄の人物の目を見ながら、ベルモットは一言放った。


「では、参りましょうか。……ゴルドさん」




 ♦




「あぁぁぁぁぁ……」


「し、しーちゃん。大丈夫? ちょっと休憩した方が……」


「いや、そうはいかない。この前のことで親方に迷惑をかけちまったからな」


 工房内。

 俺はここ三日間、ほぼ不眠不休で仕事に打ち込んでいた。


 前に勇者軍の本部を案内してもらった日、俺は結局予定時刻までに仕事へと戻ることができなかった。


 色々とリーフに事情を説明してすぐに帰ったが、親方は怒ることなく笑って許してくれた。


 だがその笑顔が逆に罪悪感をフルに掻き立たせ、何とか取り戻そうとしてこの有様であった。


「ごめんね。わたしが振り回しちゃったから……」


「リーフは悪くない。元はと言えば俺の甘えが原因なんだ。自業自得だよ」


 ボロボロの身体のまま金槌でひたすら鉄を打つ。

 だがそんな様子を気の毒に感じたのか突然リーフレットが、


「じゃあ少しでも仕事が楽になるようにわたしが肩揉みしてあげるよ!」


「いや、大丈夫。これくらいなんてことも……」


「いいからいいから! 身体は大事にしないとダメだよ。鍛冶職人にとって身体は財産なんでしょ?」


「……」


 そう言って俺の背後に回り込むと、俺の肩に手を乗せ、優しく揉み始めた。


 あ、やばい。結構気持ちいいなこれ。


「どう? リラックスできそう?」


「お、おう……最高だ」


 リーフレットは昔から手先が器用だった。

 その影響からか彼女の肩揉みは凄まじいほどに気持ちがよく、俺に一時の安らぎを与える。


「リーフ、もう少し力を強くしていいぞ」


「あ、うん! 分かったよ~」


 リーフレットは俺の指示を聞くと、少し前屈みになり、力を入れる。

 

 ……が、その時だった。


 ムニュっという感覚が俺の背中に。

 こ、これはもしや……


「お、おいリーフ。そんなに前屈みにならなくてもいいじゃないか?」


「えっ、でもこの方が力入るし……」


(いや、そういうことじゃないんだ幼馴染よ)


 心の中でそう訴えるもリーフレットの胸は俺の背中でゆらゆらと踊り続ける。

 

 というか全然気にしていないのか? それとも気づいていないのか?


 それに、いつから”こんな”になったんだよ。

 あの時はまだ膨らみすらなかったというのに。


(くそっ……意識したくないがどうしても……)


 意識してしまうのが男の性というもの。

 だが直に指摘するわけにもいかない。


 確かにリラックスはできた。

 しかしそれ以上に仕事に集中ができなくなったので……


「も、もういいぞリーフ。十分に疲れはとれた」


「ホント? 無理してない?」


「大丈夫、もうこの通り元気100倍だ!」


 と、言いながら俺はマッスルポーズをかます。

 

「そっか、ならいいの。最近のしーちゃんは本当に頑張りすぎだから心配になっちゃって」


「ごめんな。心配をかけて」


「ううん。わたしはしーちゃんが元気ならそれでいいの」


 ニコッと優しく微笑み、そう言うリーフレット。

 ホント、まるで天使のような煌びやかな笑顔だ。


 なんだかんだ言ってこれが一番癒しかも。


「よっしゃ! 元気も出たことだし、もうひと頑張りしますか!」


「わたしもそろそろ本部に戻らないと」


「ああ、そうだな。お前も頑張れよ」


「しーちゃんもね!」


 と、そんな温かな会話をしている最中だった。

 

「リーフレット様、リーフレット様はいらっしゃいますか!?」


 突然。工房内に入って来る一人の男性。

 鉄の鎧を身に纏い、胸元には勇者軍の紋章を掲げていた。


「おいおい、そんなに慌ててどうしたんだ。兄ちゃんよ」


 後から親方も追いかけてきた。


「わたしならここだよ~! 何かあったの~?」


 リーフレットの声が工房内に響き渡る。

 そしてその声を聞き取った勇者軍の兵士はすぐに駆け寄って来ると、


「リベルカ団長より伝言です。『これより緊急会議を開く。関係者は速やかに第1会議室へ集合せよ』とのことです」


「緊急会議……? 一体なにが……」


 リーフレットが首を傾げる。


 すると兵士は慌てながら。


「詳細は不明ですが、例の大牢獄から脱走者が出たらしいです。その……元勇者軍だったという男、ゴルド・エンブラントという者が」


(……なに?)


 ゴルド……だと?

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