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159.レーヴァテイン


 一夜明けて、次の日の早朝。

 俺の工房での戦いは次のステップに移っていた。


「さて、ここからこれをどう強化していくか……」


 次の工程は剣の正剣化の作業だ。

 ただの剣からそれぞれの用途に合った正しい剣に仕上げるという意味でその名がついたという。


 例えば普通の剣ならこのまま仕上げの作業に入り、魔剣なら魔力を多く含んだ鉱石などを使って剣に魔力を吹き込んで基となる剣に”特色”を与えていく。

 

 俺はこの工程を剣に個性をつけるという意味合いで受けとめており、自分の中では最も大事な作業であるという認識を持っている。

 

 だからどんなに優れたものが完成したとしても、自分が満足のいくようなものが作れるまでは妥協するつもりはない。


 とはいえ、時間は無限ではない。


 限られた中でハイスペックかつ、女王に気に入ってもらえるような一本を作らないといけない。

 昨日急ピッチで作業を終わらせたのもこの工程に時間を費やしたかったからだった。


「魔剣みたいに魔鉱石で刃を構築して……いや、それだけじゃ足りないな……」


 色々と案を出して見るが、これといったものが出てこない。


「しょうがない。またアレをやるか……」


 俺は作業台の裏側に置いてあった豪勢な剣箱から一本の剣を取り出す。

 分厚い布で厳重に保管されていたそれは女王から送ってもらったもの。


 そう、かつて女王が使っていたとされるレーヴァテインという剣だ。


 行き詰った時はこの剣を見たり、実際に振ってみたりして使い心地や感覚などを試している。


 あ、もちろん女王からは許可を貰っている。

 

 俺が扱う分には好きに使ってくれていいとのことだ。


「いつ見ても迫力が違うな、これは……」


 歴戦の記憶が刻まれたその剣はやはり持って一目見ただけでも、違いがよく分かる。


「これに匹敵するもの……か」

 

 魔剣を作ることに変わりはない。

 だが普通に魔剣を作るわけではこのレーヴァテインに匹敵するものは中々作れないだろう。


 前に俺が作った魔剣も、確かに強力なものができたけどあれでは……


「このレーヴァテインには及ばないからな……」


 女王はこの剣に匹敵するほどの力があると絶賛してくれたけど、俺はそうは思っていない。


 この剣と俺が作った魔剣では何かが違うのだ。


 この剣には何というか、そこはかとない可能性を感じる。

 こうして廃れてしまった今でもそう思うくらいに。


 まるで生きているような感覚を受けるのだ。


 俺の魔剣にはこんな感覚は湧き上がってこなかった。


「……いっちょ素振りしに行くか」


 俺は一度作業を止めると、レーヴァテインを片手に工房の外に出る。

 

 今からここでレーヴァテインを使った素振りを行う。

 さっきも言ったように、剣を使う感覚を身体に叩きこませるためだ。


「本当は実戦形式で試すのが一番なんだけど……」


 相手がいないので仕方ない。

 俺はレーヴァテインを構えると、まずは一刀。

 

 素早く空を切り裂いた。


「やっぱり軽いな、この剣は。使用者の負担が全然ない」


 重い剣と軽い剣では使用者に対する負担が全然違う。

 確かに重い剣の方が一刀の火力は高いが、使用主を限定してしまうというデメリットがある。


 反対に軽い剣だと火力が落ちる代わりに使用者の負担を軽減し、攻撃の手数を増やすことができる。


 だがこのレーヴァテインはその双方の良さをどっちも吸収したようないわば究極形。

 軽いながらも火力も出すことが可能なものだ。


 しかし力を持つが故に扱いが難しく、必然的に使用主を選ぶという点がある。


 誰でも扱えるような本当に完璧な剣というものは中々存在しないものなのだ。

 いつかは自分の手でそんな剣を作ってみたいとは思っているけど。


「……ふぅ、これで1000回目。少し夢中になりすぎてしまったな」


 色々考えながら素振りをしていたら、気づけば1000回以上も行っていた。

 でも身体に負担は全くなく、息切れすらもしていない。


 流石は歴史に名をのこすだけの剣ってところだ。


「でも、やっぱり実戦で試してみたいよなぁ……」


 そうはいっても、モンスターを狩りに工房を抜け出すわけにもいかないし……


『なら、我が相手をしようか?』


 ふと口にした願望に答えるかのようにそれは、プカプカと浮かびながら俺の元へとやってきた。

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