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157.向かう影

 

「や、やっぱり……でも何でいきなり……」


「さぁな。俺にも全く分からん。でもいよいようちの工房もとんでもねぇところまで行っちまったみたいだ。ホント、人生何が起こるか分かったもんじゃねぇな」


 ガハハと愉快に笑い声をあげる親方。

 でもまさか他国の要人までもがうちの工房を訪ねてくるとは……


(一体、どういう過程を持って広がっていったんだか……)


 確かに最近、この工房は目立った業績を上げているからか、人の目に付きやすくはなった。

 あの国家騎士団、勇者軍と一国に大きな影響を及ぼすレベルの巨大組織がお得意様になり、その噂は今も広がりつつある。


 とは言ってもまだ自国に収まる範囲内だ。


 だから今回の依頼は異例と言えば異例の出来事になる。


 最近、親方が妙に上がっていたテンションが上がっていた理由がよく分かった。


「ところで、親方はアルフ公王に何を作るので?」


「お前と同じさ。剣の製造だよ」


「ま、マジですか!? あの大剣聖の剣を?」


「おうよ。だからここ最近テンションが上がりまくってるんだ。こんな辺鄙な所にある小さな工房から剣聖の剣が作られている。これだけで世間の人間の反応は360°変わるってもんよ」


「確かに剣聖の剣を作れる人間ってごく限られた人しかいないって聞いたことがあります」


「その通り。しかも今回は公王自らここで作ってもらうよう頼んだらしい。公国の使者がここに訪ねて来た時にそう言っていたわい」


「公国の使者? 使者が来てたんですか?」


「ああ……そういえばあの時、シオンはいなかったな。ほんの三日前に来たんだ、黒塗りのドデカい馬車に乗ってな」


 さっきのは使者から直接渡された依頼書ってことか。

 ということは本当なんだな。


「じゃあ、親方も自分と同じ運命に立たされたってことですね」


「そうなるな。こりゃ数年ぶりに本気を出すしかなさそうだ」


「親方の作る本気の剣か……ぜひ見てみたいものです」


「完成したら真っ先にお前に見せてやるさ。今はお互いやるべきことを精一杯やらんとな」


「ですね」


 正直、今は不安が大きいけど。

 頼まれた以上、引き下がるわけにはいかない。


 俺の場合、腕を見込まれて頼まれたわけだし。

 出来る限り、期待に応えなくては。


「そろそろ作業に戻ります。まだやることは山ほど残ってますしね」


「おう。でも無理だけは絶対にするなよ? 鍛冶職人は身体が財産そのものなんだ。残業もできるだけするな、分かったな?」


「心得ておきます」


 俺は最後に軽く会釈すると、強度チェックをするために完成した試作剣を持って工房の外へと出るのだった。



 ……

 ……



 一方、その頃。

 王都に目指して夕刻の道を歩む一人の少女がいた。


「ようやく帰ってきました。私の故郷に!」


 少女は一度足を止め、遠くの方に広がる王都を囲む外壁を眺める。


「いよいよ……いよいよです。待っていてください、お姉さま! このリラが今から会いに行きますねっ!」


 高まる気持ちをスキップで表しながら。

 一人の少女は王都へと向かうのだった。

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