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152.第一資料棟


 部隊編成が行われた次の日。

 わたしはユーグ・フリードマンに会うために、本部の第一資料棟に顔を出していた。


 情報によるといつもユーグ・フリードマンは第一資料棟で仕事をしているとのこと。

 というわけで第一資料棟まで来たのはいいんだが……


「お願いします! ユーグ・フリードマン総指揮官に会わせていただけませんか? どうしてもお聞きしたいことがあるんです!」


「ダメだ。ここはSランク認定された勇者と一部の本部運営者しか入ることを許されていない。どうしても入りたければここの管理をしている総務部に許可を通してからにするんだな」


 わたしは第一資料棟前のゲートで苦戦を強いられていた。

 第一資料棟はSランク勇者と一部の人間しか入れない特別な場所だ。


 それは規定で決まっているし、そんなことなど百も承知なのだが。

 わたしはどうしても知りたかったのだ。


 わたしとあの人をなぜ同じ部隊に組み込んだのかを。


「お願いします、入れてください!」


「だからダメだって何度言えば――」


「どうしたんだい? そんなに声を張り上げて」


 第一資料棟の警備員と言い争っている中、背後から聞いたことのある声が。

 振り向くとそこにいたのはお目当てのユーグ・フリードマンが立っていた。


「あっ、ユーグ殿! お疲れ様です!」


「お疲れ~。んで、これは何の騒ぎだい?」


「そ、それが……この者がユーグ殿に会わせろと」


「あれ、リィナ・フローズンさんじゃないですか」


 ユーグ・フリードマンはわたしを見るなり、フルネームで名前を呼んできた。


「失礼ながらユーグ総指揮官殿、フルネームで呼ぶのは止めていただけませんか? 普通にリィナとお呼びください」


「なっ! 君、ユーグ殿に向かって無礼だぞ!」


 警備員がそう言ってわたしを叱咤する。

 わたしだって上官に向かって、無礼だというくらい分かっている。


 でも毎度毎度フルネームで呼ばれるのは正直嫌だ。

 たとえ怒られ受け入れられずとも、お願いくらいはしておきたい。


 だが、彼は怒るどころか「はっはっは!」と笑い声を上げ、警備員を宥めた。


「まぁまぁ、そう怒らないであげて。ごめんね、えーっとリィナさん」


「い、いえ。わたしこそ、無礼な発言をしてしまったことをお許しください」


「気にしないで! 無礼結構! 仲良くやろう!」


「は、はぁ……」


 変わった人だ。

 普通なら一喝してもおかしくないはずなのに……


「ところで、俺に用があるってのは本当かい?」


「えっ、あっ、はい。ユーグ総指揮官殿に会いにここまで来た次第です」


 そういうとユーグ総指揮官殿は何故かニッコリと笑みを浮かべ、


「そっかそっか~~! じゃあ早速行こう。続きは中で聞くからさ!」


 カモンと言わんばかりにわたしに来るよう身振りで伝えてくる。

 すると警備員が困惑した顔を見せながら、ユーグ総指揮官殿に駆け寄る。


「ゆ、ユーグ殿! 流石にそれは……」


「何か問題でもあるの?」


「問題というか、関係者以外は規定で入れるなって……」


「でも内部の人間の許可があれば大丈夫でしょ? 一応あとで言いがかりをされるのは面倒だから、報告しておいてくれない? 承認者は俺の名前で通してくれていいから」


「わ、分かりました。で、ですが……」


「分かっている。後は俺がしっかりと面倒をみるから、心配するな」


 コソコソと話しているためか、内容までは聞き取れないが、多分説得しているのだろう。

 第一資料棟はその名の通り、軍に関する様々な資料が保管されている場所だ

 

 中には軍の機密事項とかが眠っている場所だから、本当に限られた人しか入れない。


 無断侵入すれば勇者軍の規定に従い、処分が下される。

 

「お待たせ~それじゃ行こうか!」


 どうやら警備員の人と話がついたようだ。

 ユーグ総指揮官殿は「こっちに来て」と合図を出してくる。


 わたしは第一資料棟のゲートを潜ると、彼の背中についていくのだった。

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