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148.精一杯の感謝を込めて


「ねぇねぇ、リィナ。もしかしてわたしにプレゼントしたかったのってこれのこと!?」


 リーフレットちゃんはぬいぐるみを抱えながら、少し興奮気味に聞いてくる。

 

「そ、それはその……うん。リーフレット、よくぬいぐるみの話をしていたから好きなのかなって思っ――」


「ありがとう、リィナっ!」


「むぐっ!?」


 突然抱きしめられるリィナちゃん。

 身長差があるせいか、ちょうどその豊満な胸が顔に当たり、押し付けられている。


 ……羨ましい、俺も押し付けられたい。


「嬉しい、すごく嬉しいよリィナ! ありがとう!」


「※※※※!!」


 ぎゅっと抱きしめるリーフレットちゃんに対してモゴモゴと何かを訴えているリィナちゃん。

 手をパタパタさせている辺り、これは……


「あの~リーフレットちゃん。すごくリィナちゃん苦しそうだけど……」


「えっ? ああっ! ご、ごめんリィナ!」


 リーフレットちゃんはすぐに抱擁を解くと、顔を真っ青にしたリィナちゃんがぜぇぜぇと息を切らしながら、


「し、死ぬかと思った……」


 目をパッチリと見開きながら、そう言う。

 

 これぞ神に選ばれし(サイズの意味で)おっぱいの破壊力。

 

 もう凶器レベルの武器として正式に認定していいんじゃないかってくらいだ。


 新兵器『おっぱい』みたいな感じで。


「だ、大丈夫……?」


「へ、平気……」


 歩み寄る心配そうに見つめるリーフレットちゃんに「大丈夫」と返事をするリィナちゃん。

 そして話は再び最初に戻る。


「本当にありがとうリィナ。このモジャンボくんのぬいぐるみ、ずっと欲しいなって思っていたの。でもお金がなくて中々手が出せなくて……」


 どうやらぬいぐるみ好きの予想は的中したみたいだ。

 というか、そのぬいぐるみの名前モジャンボくんって言うのね……


「よ、喜んでもらえた?」


「もう嬉しくてたまらないよ! でも、本当に貰っちゃっていいの……?」


「うん。これはわたしからの日頃の感謝の気持ちだから……」


「うぅ……リィナ~!」


「いつも一緒にいてくれてありがとう、リーフレット」


「こちらこそ、ありがとう……リィナ!」


 物凄く嬉しかったのだろう。

 再びリィナちゃんをぎゅっと抱きしめる。


 だが今度は勢いではなく、かなり控えめなハグだった。


 さっきとは変わって優しい抱擁だ。

 

「は、恥ずかしい……」


 少し頬を赤らめるリィナちゃん。

 しかしながら、そう言いつつも、幸せそうに顔を(うず)めている。


 状況が状況なだけに周りの視線はそれなりにあったが、二人はもう既に自分たちの世界に入ってしまっていたため、全く気にしていなかった。


 むしろリィナちゃんはそっちよりもリーフレットちゃんにハグされているという現実に照れを感じている様子。

 

(あんな風になるリィナちゃんは初めて見るな)


 空気を読んで少し距離を置きつつも、二人の様子を見守る。

 俺もいつかリィナちゃんにあんな表情をされたい……という淡い願望を抱きながら。


 しばらくすると抱擁タイムは終わり、互いを見てニコッと微笑み合う。


「本当にありがとう、リィナ。大切にするね」


「うん!」


 二人は王都の夜景を見ながらを談笑を始める。

 いつもは見ないリィナちゃんの笑顔が、そこには沢山あった。

 

(本当に仲がいいんだな、あの二人は)


 傍観している俺も思わずニッコリしてしまう。


「今度お返しするね」


「え、いや、お返しなんて……」


「いいの! わたしもリィナにいっぱいお世話になったから。ありったけの感謝を込めたものを贈るから、楽しみに待ってて!」


「わ、分かった。じゃあ、待ってるね」


「うんっ!」


 それからしばらくの間。

 二人は寄り添い合い、夜景を眺めていた。


 それにしても良かった。

 一時はどうなるかと思ったけど、目的を果たすことができた。


 これで俺の役目は終わったわけだ。


(良かったね、リィナちゃん。プレゼントを渡せて)


 心の中でそう思いつつも。

 俺は仲良く話す二人を置いて、静かにその場を去るのだった。

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