140.怪しき二人
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
137話のサブタイトルを変更させていただきました。
内容自体に変更はございません。
「むむむむむっ……!」
「う~む……」
尾行を開始してから一時間が経過した。
今俺たちがいるのは本部と連結しているいつもの商業施設だ。
俺たち二人は依然として物陰に隠れながら、二人の様子を伺っていた。
「ユーグ先輩」
「なんだね、リィナくん?」
「あれを見て、どう思います?」
突然低いトーンで質問される。
だが答えはもう既に胸の内にあった。
「あれは完璧にアレですね。これはもう確定事項でしょう」
「珍しく意見が合いましたね。わたしも同じ考えです」
コクリと頷くリィナちゃん。
ちなみに”アレ”というのは他でもない。
男と女が一緒にこんなところに来るなんて、しかも楽しそうにショッピングしているなど……
(デート以外に考えられないだろう!)
と、目の前で起こっている出来事のせいでつい心の中で叫んでしまったが、リィナちゃんはかなり驚いているようで。
「どうなっているんですか!? あのリーフレットがシオン以外の男とデートだなんて!」
「い、いや……俺に聞かれても」
俺の軍服の襟を掴みながらゆっさゆっさしてくるリィナちゃん。
さっきまで冷静に様子を見ていたのに、急な変わり様である。
よほど彼女の中では想定外の出来事なのだろう。
俺はまだ付き合いがリィナちゃんほど深いわけじゃないから、意外性に欠けるが。
まぁでも普段のリーフレットちゃんを見ていて、他の男と親密に交流しているところを見るのはこれが初めてだ。
シオンと一緒にいるところはよく目撃したけど。
「というか今更なんだけど、彼は一体何者なんだろう? リィナちゃんは知っているの?」
「知っているわけないじゃないですか。仮に知っていたとしたら既に強行してます。事と次第によっては一発殴ってましたよ」
「そ、そう……」
こんな可愛い女の子から殴るって言葉が出てくると戸惑うな……
「でも軍服から推測すると、育成組みたいですね」
「あ~確かにそれっぽいね」
目を凝らしてみると、育成組を示すバッジが胸元につけられていた。
リーフレットちゃんは俺やシオンと同様に育成組の指導を行っている。
となると……
「リィナちゃん、もっと近くにいって調べてみよう。遠くから見ていても、多分結論にはたどり着けないと思う」
「そうですね。もしあの男性がリーフレットの……いや、考えると嫌な気分になるので止めましょう」
「う、うん……」
表情はさっきよりもだいぶ落ち着いたが、中身はまだまだ乱れているご様子。
「シオンならまだしも、その他の男がリーフレットに近づくのは見逃せません。先輩、もっと近くに行って二人を観察しましょう!」
「分かった。そうしよう」
というかシオンなら許せるんだな。
これは俺の勝手な憶測だが、割とリィナちゃんもシオンに対して気が合ったり――
「先輩、何しているんですか! 早く来ないと置いて行っちゃいますよ!」
「ご、ごめん! すぐ行くよ!」
でも、もし仮にそうだとしても俺は負けない。
最後は絶対に俺の方に振り向かせてみせる。
そう心に誓いつつも。
俺はすぐにリィナちゃんのあとを追うのだった。