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139.不穏な……


 というわけで。

 俺はシオンに言われたように、別棟を繋ぐ廊下へとやってきた。


 あれから少し時間が経っているので、リーフレットちゃんが通ったであろう経路を予測して、さらに先へ進むと……


「む、むむむっ……!」


 一人。

 物陰にひっそりと身を隠し、どこかを見つめる人物が。


(あれは……リィナちゃん?)


 後ろ姿から見て間違いない。

 俺は後ろから近寄り、声をかけてみた。


「お、リィナちゃん! リィナちゃんもここを探し――」


「ひゃぁッ!?」


「うおッッ!?」

 

 謎のオーバーリアクションに俺まで驚いてしまう。

 リィナちゃんは目にも止まらぬ速さで振り向くと、『はぁ』と深くため息をついた。


「な、なんだ……ユーグ先輩ですか。驚かさないでください」


「ご、ごめん。別に驚かすつもりはなかったんだ」


 本当である。

 たまたま後ろから声をかけたら、こうなっただけだ。


 しかしリィナちゃんはジト目で俺を見てくると、


「本当ですか? いつもの腹いせに驚かしてやろうって思ってやった、とかじゃなく?」


「本当だって! 信じてよ!」


 腹いせって……確かに俺に対する扱いは他の誰よりも酷いけど。


「分かりました。信じます」


「ありがとう」


 まぁ罵倒をくらうのもコミュニケーションの一部だと(勝手に)思っている。 

 一番最悪なのは相手にすらされなくなることだ。


 これは誰にだって言えることだが、相手にされなくなったら、ほぼ終わり。

 その先はほぼない。


 だから相手にしてくれるだけ、まだマシなのだ。


 むしろ愛情があるからこそ、というケースもあるからな。

 

 俺の場合、どういうケースかは分からないけど。


「あ、それよりも先輩! 緊急事態です!」


 何かに焦りを見せるリィナちゃん。

 恐らく、隠れていたことの理由に繋がることだろう。


「何があったの? さっきもなんか誰かから身を隠していたようだし……」


「あれを見てください!」


「あれ……? ……んんッ!?」


 リィナちゃんの指さす方向。

 その先にあったのはお目当てのリーフレットちゃんと謎の男の姿。


 二人は別棟と本部を繋ぐ廊下の途中にある人工庭園のベンチに隣り合って座っていた。


「り、リィナちゃん。あれは一体……?」


「さっきシオンに会ったんです。それで居場所を聞いてリーフレットを追跡していたら、あのようなことに……」


 リィナちゃんもシオンに居場所を聞いていたのか。

 そう言えばさっきシオンが『お前もか』って言ってたな。


「あの男は初めからいたのか?」


「いえ。なんか待ち合わせをしていたっぽくて。後から来ました。それで今はあのベンチに二人で……」


「なるほど」


 これだけで事情は何となく把握できたが……


「でもリーフレットちゃんにとってあんなの日常茶飯事なんじゃ?」


 見たところ、男が一方的に喋っているように見える。

 普通に口説かれているだけなのでは? と思ったが、リィナちゃんは首を振った。


「いえ、今回は何かが違います。元からナンパ目的と分かっているなら、彼女は待ち合わせをするという選択肢はしません。しかもあんな人気のないところで二人きりだなんて……」


「ま、まぁ確かに……」


 よくよく考えてみれば、そうだな。

 先を悟ったなら、きっぱり断ると俺も思う。


 でも様子を見る限り、ナンパされているという感じはない。


 何の会話をしているかまでは分からないが、むしろ楽しそうにお喋りをしていた。


「怪しいな……」


「ですね。まさかあのリーフレットがシオン以外の男の人とあんなに楽しそうに話すなんて……意外です」


「確かにシオンと話す時もあんな感じだったね」


 あいつはまぁ特別だ。

 あえて何も言わないが、リーフレットちゃんはシオンに好意を持っている。


 もっとも、当の本人は気付いていないみたいだけど。


 そんなリーフレットちゃんが他の男となんて……


「あ、先輩見てください! 二人が動き出しましたよ!」


「あ、ホントだ」


 二人はベンチから立ち上がると、並んで歩いていく。

 リィナちゃんはすぐに物陰から身を曝け出すと、真剣な表情を俺に向ける。


「先輩!」


「その先は言わなくても分かっているよ。追いかけるんでしょ?」


「もちろんです! 行きますよ!」


「りょーかい!」


 そんなわけで。

 俺とリィナちゃんはその秘密を探るべく、二人の尾行を開始するのだった。

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