136.待ち伏せ
というわけで、俺たちはある場所へとやってきた。
ある場所とは本部内にある大食堂、またの名を第一食堂だ。
「先輩、食堂に来たのはいいんですけど、一体何を……?」
小首を傾げるリィナちゃんに俺を答える。
「彼女を待ち伏せしようと思ってね。よくこの時間に食堂で見かけることが多いから」
「彼女ってリーフレットのことですよね?」
「そうだよ」
俺がそういうとリィナちゃんの表情が一変、怖い表情に。
どう見ても怒ってる感じだったので、一応聞いてみることにした。
「ど、どうしたのリィナちゃん? そんなに怖い顔して……」
「よく見かけるって……普段からストーカーしているんですか? リーフレットのこと」
「え……?」
ああ……そういうことか。
さっき俺が言った一言を彼女は間違って解釈してしまったらしい。
俺はすぐに弁解した。
「いやいや、違う違う! 俺もこの時間に食堂に行くことがよくあるから、その時によく見かけるって話だよ」
「本当ですか……?」
疑いの目が降りかかる。
俺の必死の弁解は続く。
「本当の本当! 拙者は断じて嘘はついていないでござるよ」
「なんですか、その気持ち悪い語尾は……」
「気持ち悪いって言わないで!?」
今のは自分が悪いにしても、少しは言葉を選んでいただきたいものだ。
メンタルは他の人よりも強い方だからまだいいけど、誇れるほど強くはない。
流石に攻撃されまくったら、俺のハートもバリンって逝ってしまう。
「とにかく語尾のことは置いといて、本当にストーカーなんてしてないから!」
「……分かりました。そこまで言うなら信じましょう」
必死の弁解の末、ようやく理解してもらえた。
すると。
リィナちゃんは、何か悪いと感じたのか唐突に頭を下げてきた。
「ごめんなさい、急に取り乱してしまって……」
「分かってくれればいいんだ。でもどうしてそこまで……」
「昔からリーフレットは”悪い虫”によく付かれるんです。それで何度か争いになったこともあって……」
「そうだったんだ……」
確かにあの美貌だからな。
どんな男だろうが、一目で虜にされてしまうほどの魅力をリーフレットちゃんは持っている。
俺も初めて彼女にあった時は心が揺らいだよ。
世の中にはこんな美女がいるんだってね。
「あと……女好きのユーグ先輩ならやりかねないと思ったので、つい……」
「うん。それは間違いなく偏見だから反省した方がいいね」
流石の俺でもストーカーはしないし、今までもしたことなど一度もない。
至極まっとうなお付き合いをしてきたつもりだ。
まぁ、ちょっとした行き違いあって何度かトラブルはあったけど……
「でもリィナちゃんがリーフレットちゃんのことを大事に思っているってことはよく伝わったよ。ホント、二人は仲良しなんだね」
「そ、それは……当然です。わたしにとってリーフレットは――」
そこまで言いかけた所で、
「い、いえ……やっぱり何でもないです」
リィナちゃんは唐突に口を閉じた。
先が気になるところだが、あえて聞かないことに。
人には探られたくない秘密もあるからな。
言わなかったってことはそういうことのサインでもある。
「そ、それで先輩。話を戻しますけど、リーフレットを待ち伏せて一体何をつもりなんですか?」
「ああ、それなんだけど……」
話は最初に戻り、リィナちゃんが目的を聞いてくる。
俺は食堂の入り口の方にも目を配りながら、作戦の概要をサクッと説明した。