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13.残念な友人


「やっぱりシオン……シオンなんだな!」


「お、おう。お前も元気そうでなによ――」


「うぉぉぉぉぉぉ!! 我が友よぉぉぉ! 戻ってきてくれたんだなぁぁぁ!」


「お、おい。そんなに強く抱きしめ……グハッ!」


 俺の一言は華麗に遮られる。

 その長身とガッチリとした体格から繰り出されるハグは想像を絶するほどの苦しさだった。

 同僚時代と変わらない、相変わらずバカぢからである。


 あ、一応紹介しておこう。

 こいつは俺が勇者をやっていた時の同期になる人物。

 

 今は分からないが、Sランク勇者だった男である。

 

 名前はユーグ・フリードマン。

 イケメンで長身でとにかく女にモテる男で、そりゃあもうイライラさせてくれるほど。

 

 筋トレが大好きで毎日鍛えているような奴だったからパワーはとにかくあった。

 それはもうさっき実証してくれたからいいんだが。

 

 まぁ、俺が勇者をやっていた時に一番仲の良かった人物と言った方が早いだろう。

 数少ない友人の一人ってわけだ。

 

「でもどうしたんだよいきなり現れて。お前は勇者を引退したって……」


「あ~いや、それは……」


 そうだ。俺は周りの奴らには引退して軍を去ったってことになっていたんだった。


(こりゃ、どう言い訳をするか……)


「ま、そんなことはどうでもいいや。こうしてまたお前が戻ってきてくれただけでも俺は嬉しいぜ」


「えっとそれが……俺は別に勇者軍(ここ)へ戻ってきたわけじゃないんだ」


「ん、そうなのか?」


「ああ。今の団長さんとちょっとした契約を結んでな。当面、勇者軍に出入りすることになったんだ」


「ほう、なるほどな。ってことは例の組織革命のことでも言われたってとこか?」


「そうだけど、知ってたのか」


「もちろん。だって俺もリベルカ団長に助力してほしいって頼まれてんだもん。色々あって今や数が少なくなっちまった旧勇者軍のメンバーの一人としてな」


「そうだったのか」


「まぁ、形はどうであれまたお前とこうして会えることができたことが何より嬉しいことだ。またよろしくな色々と」


「おう、こちらこそ」


 俺とユーグは互いにガッチリと手を握り合う。

 そんな中、脇では一人ボロボロと涙を流す者が。


「うぅぅぅ……男同士の友情。心に染みるよぉ……」


「何でリーフが泣いているんだよ」


「だってだって、こんなの感動ものじゃん? 一度離別した親友との再会、こんなに目頭が熱くなるシーンはないよ」


「そ、そう……か?」


 ユーグと会えたのは確かに嬉しいけど……。


「そういえばさっきから二人は面識があるみたいだけど、どういった関係なんだ?」


 ここでユーグが話題を俺たち二人の関係へと転換させる。

 すると真っ先に答えたのはリーフレットだった。


「幼馴染なんです。生まれ故郷が同じで」


「お、幼馴染!? それマジか!?」


 声を張り上げ、驚くユーグ。

 と、ユーグはそれを聞いた瞬間、すぐに俺の元へと駆け寄り、小声で耳打ちしてくる。


「お、お前! 異性の幼馴染がいたなんて聞いたことなかったぞ」


「別に言うことでもないだろ」


「いやいや、こんなに可愛い幼馴染がいたら普通紹介するだろ?」


「普通なのか? それ」


「しかもよりによって勇者軍のアイドル的存在であるリーフレットちゃんが幼馴染って。くぅぅぅ~羨ましすぎるだろ!」


「別にお前はモテるからいいだろ。今も女には困ってなさそうな感じだし」


「そんなことはない! 俺だって人を選ぶさ」


 ってことは選べるほど女がいるってことか。

 やっぱり時は経っても全く変わっていないな、こいつは。


「リーフレットちゃんはホント容姿端麗でスタイルも抜群だからな。特に胸の辺りは最高だぜ。いつまでも見ていられる」


「お前なぁ……それセクハラだぞ?」


 言い忘れていた。

 この男、ユーグ・フリードマンは超がつくほどの変態である。


 昔、俺たちがまだ育成時代の頃にこいつは朝の朝礼でとある上官にとんでもない言葉を放った。

 

 なんて言ったと思う?


 唐突に前に出て「上官、胸を揉ませてください」って真剣な顔して言ったんだぜ?


 あの時は本当に驚いた。

 ユーグ曰くかなりタイプだったらしく、胸も大きかったことからつい出てしまったと言ったが、常人ではあれば”つい”なんてことにはならない。


 もちろん、その後ユーグはその上官に連行され、この上ない叱咤を受けたという。


 まぁ詰まるところ、彼はイケメンであるのにも関わらず色々と残念な男なのである。


「ねぇねぇ、さっきからお二人は何をコソコソと話してるの?」


 あ、やべ。流石に話しすぎたか。


 何とか理由付けを……と思ったが先に動いたのはユーグだった。


「ごめんねリーフレットちゃん。ちょっと男同士大事な話をしていてね。水入らずの会話というかなんというか」


「そうなんですかぁ」


(嘘つけ。コテコテの猥談だっただろうが)


 と、心中そう思うが閉じ込めておくことに。

 何一つ疑うことなく納得するリーフもリーフだが。

 

 てかよくあんな爽やかな笑顔で言えるな。

 切り替え早すぎだろ。


「ってなわけで俺はそろそろこの辺で失礼するよ。また何かあったら言ってくれ。んじゃな~」


 ユーグはそれだけ言うとこの場から去って行った。


「さて、わたしたちも続きをしますか」


「ああ、頼んだ」


 そういうとリーフレットは軽快な口調で演習場の説明を始めたのだった。

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