12.旧友との再会
今日は二話更新の予定です!
「悪い、待ったか?」
「ううん、大丈夫! じゃあ行こっか!」
「ああ、頼む」
待ち合わせ場所の本部内ロビーで二人は再会する。
リーフレット主導のもと、本部内を案内してもらうことになったのだ。
「じゃあ、まずはわたしがよく行く場所から案内するね!」
そう言ってスキップをしながら前を歩く我が幼馴染。
何故かは分からないが、だいぶご機嫌な様子。
「さて、まずはここ! 我が勇者軍本部が誇る第一食堂!」
「おお!」
かなり広い。
王都に移す前の大食堂はお世辞にも広いとは言えなかったが、ここは違った。
「なんか全体的に建物の造りが変わっているな」
「うん。なんか設計した人が異世界から召喚されてきた人らしくて」
「へぇ、異世界かぁ」
吹き抜けになっている空間に全面ガラスから映し出される王都の景色はこれまた絶景だった。
文句なしの完璧なリラックス空間。
この設計担当した異世界人は何者なのだろう。
「どう? ここだけでもすごいでしょ!」
「ああ! 飯がさらに美味くなりそうな環境だ」
……こんな感じで俺はリーフレットの案内で本部内を回った。
のだが……
「ここは第二食堂!」
「この第三食堂のサンドイッチがすんごく美味しくて~」
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「次はここ! 24時間365日営業のグランドカフェ! ちなみにこのカフェは一般人も立ち入りが認められていて――」
「お、おいリーフ。ちょっと待ってくれ」
「ん? どうしたのしーちゃん」
「いや……さっきから口を開けば食べ物のことしか言ってないような気がするのだが気のせいか?」
てかこの中にいくつ飲食店あるんだ?
もう5軒以上回っているんだが。
「そ、そうかな? まだまだ行ってないところがいっぱいあるんだけど……」
「ま、まだあるのか!?」
「うん。他にもすっごく美味しい魚料理を出すお店とか、肉料理のお店とか……」
「お、お前……いつからそんな健啖家になったんだ? ガキの頃はかなり小食だったよな?」
「あ~そういえばそうだったね。わたしも理由は分からないんだけど勇者になってから食欲が半端なくてさ。よく休息日にはグルメ通の間で人気のお店をはしごしたりしてるの」
「そ、そうか……」
今更だが、こいつ本当にあのリーフレットなのか?
小さな口で一口サイズ未満のお肉を数切れほど食べてお腹いっぱいとか言っていた奴が今や店のはしごをするまでになっているなんて……。
驚きを通り越して乾いた笑いが出てしまう。
「案内してくれるのは嬉しいんだがもっとこう……勇者軍っぽい場所を紹介してほしいな」
「勇者軍っぽい場所かぁ。ん~~~~あっ、そうだ!」
何か思いついたみたいだ。
「じゃあ、演習場を覗いてみる? ちょうど今、育成クラスの演習時間だった気がする」
「そこだ! そこに連れて行ってくれ」
「分かった! ちょっと歩くけどいい?」
「ああ、問題ない」
「んじゃ、そうと決まればレッツゴー!」
で、俺たちはその演習場へと向かったのだが……
「あぁ……やっとついた。てか遠すぎだろ。どうなってんだここは」
「まぁ施設自体が広いからね。一般の商業施設も併設されているし」
ここまで20分。
俺たちは歩きに歩いてようやく演習場へと辿り着くことが出来た。
本部内の端に位置するからか相当な距離を歩いた気がする。
「あっ、やってるやってる~!」
少々お疲れ気味の俺に対し、リーフレットは表情一つすら変えずピンピンとしていた。
慣れているからなのだろうか?
「お~い、しーちゃん。なにしてるの~早く行くよ~!」
「お、おう……」
あいつ……いつからあんなにアクティブな女に……。
まるで昔とは逆の境遇を味わっているみたいだ。
演習場も予想通りの広大さだった。
以前と比べ設備もきちんとしているし、天然芝で見栄えも良い。
そしてその演習場ではリーフレットの言う通り、育成組の連中が演習の真っ最中のようだった。
「うんうん、みんな頑張ってるねぇ。さすがは未来のSクラス!」
「お前もしっかりと鍛錬はしているんだろうな。この前の反応だとおサボりが定期のような感じだったが?」
「そ、そそそんなことないよっ! わたしはSクラス勇者、常に他の勇者たちの見本でいなきゃいけないから鍛錬をサボるなんてあり得ないことだよ!」
「ふーん。にしてはかなり動揺を隠しきれないご様子ですが?」
「べ、べべべ別に動揺なんか……!」
分かりやすい性格である。
昔はぶっちゃけ内心を読みづらい感じだったが、今は言動一つで丸分かり。
多分、相当サボっているよこの人。
「と、とりあえずまずはこの演習場の説明から――」
「あれ? リーフレットちゃんじゃないか。こんなところで何してるんだ?」
突如、背後から話しかけてくる人の声。
「あっ、ユーグさん。こんにちは」
リーフレットが反応し、挨拶をする。
だが俺はその名前に聞き覚えがあった。
俺はすぐに後ろを振り向き、声の主に焦点を合わせる。
すると、
「あっ……」「あっ……」
ほぼ同時だった。
互いに顔を見せた時に俺も向こうも気づいた。
「お、お前シオン……なのか?」
「ユーグ……」
見つめ合う俺たちにリーフレットは、
「あれれ? 二人はお知り合いなの?」
首を傾げキョロキョロするリーフレットに俺は即座に答える。
「あ、ああ。俺が勇者軍にいた時の元同僚だった男だ」