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117.幼馴染と夜の王都2

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

久々の更新になります。


「どうぞ」


「お、お邪魔します」


 高まる鼓動と共に俺はリーフレットの家の扉を潜り、室内へ。

 玄関から入るのは初めてなので、妙に緊張した。


「ここで待っててね。お茶と何かお菓子を持ってくるから」


「悪いな」


 案内されたのはリーフレットの部屋だった。

 彼女は「ううん」と首を振ると同時にこやかな笑顔を向けるとリーフレットはキッチンの方へと向かう。


「そういえば、あの戦いの後に俺はここでリーフに看病してもらったんだったな」


 身体の調子が戻っていないこともあったからか、記憶は少々曖昧なところはあるが、あの日食べたクリームシチューの味はしっかりと覚えていた。


 野菜とビーフの旨みが効いた濃厚なシチューにゴロゴロとしたお肉と野菜。

 口に入れた途端に身体全体がポカポカと温まって、その温かさが俺の疲弊した心を包んでくれた。


 一度食べたら忘れられないとはこういうことを言うのだろう。

 

「また、作ってくれないかな……」

 

 と、淡い願望を抱きつつも俺は部屋を見渡す。

 こうしてリーフの部屋をマジマジ見るのは初めてだ。


 部屋の中は基本的に白を基調にした清楚感溢れる構造になっていた。

 インテリアも白色のもので統一され、時折ピンク色の置物などが置かれて多色が入っても統一感があるようになっている。


「でも相変わらずぬいぐるみの趣味は悪いんだな……」


 目についたのは家具の上とベッドに置かれているぬいぐるみの数々。

 趣味が悪いというのはあくまで主観的な話で、リーフにとっては可愛いからこそ集めているんだろうが、どうも可愛いとは思えないラインナップだった。


 その中には俺が前に買ってあげたぬいぐるみも置いてあり、何故かそれだけ透明な袋に入ったまま他のぬいぐるみとは別の場所で大切に保管されていた。


(なぜ袋に入れたまま、なんだろう?)


 そんな疑問を浮かべつつも右に視線をスライドすると、視界に映ったのはベッドだった。

 ベッドはクイーンサイズというべきか一人で使うにはかなり大きく、布団も花の刺繍が入った可愛らしいものだったが、それを見た途端ふとあの時のことを思い出す。

 

「今思うと普段リーフが夜に寝ているところで俺は寝たんだよな……」


 身体的問題があったとはいえ、冷静に考えてみると普通にヤバイ。


 よくリーフはOKしたよなって思う。


 前に女性が自分のベッドに男を入れるって相当な勇気が必要だとユーグから聞いたことがあったが、リーフも相当悩んだ末にあの結論を出したのだろうか?


 そう考えると、なんか申し訳なくなってくる。


「お待たせ~」


 周りを物色していたところでリーフがお茶とお菓子を乗せたお盆を持って部屋に入ってきた。

 リーフレットは部屋の真ん中にある小さなテーブルにお盆をポンと置くと、近くにあった小さなクッションを抱え、テーブルの前でペタン座りをする。


 俺もテーブルの方へ行くと、彼女と向かい合うようにして座った。


「色々探したんだけど、こんなのしかなくて……」


「いや、十分だよ。ありがとう」


 お盆の上にはクッキーやら煎餅やらが乗った丸皿、そしてティーポットと二つのマグカップが置かれていた。

 リーフレットはマグカップを俺の前に置くと、茶を注いでくれた。


「粗茶ですが」


「どうも」


 リーフレットが注いでくれた茶を一口含み、ホッと一息。

 中身はアップルの香りがするフレーバーティーだった。


 口に含んだ途端、とても心地よい匂いが口内を通って鼻から抜けていった。


「ふぅ……」


 リーフも紅茶を一口含むと、マグカップを手に持ちながら、口を開いた。


「なんか久しぶりだね。こうして二人きりになるの」


「そうだな。リーフの部屋に来たのは俺がゴルドとの戦いで気を失った時以来か」


「あの時は本当に大変だったよ。特にしーちゃんをここまで運んでくるのにどれほど時間がかかったことか」


「運んでくるのに……? リーフ、一つ聞くがお前は俺を担いであの階段を登ったのか?」


「うん、そうだよ。しーちゃん見た目は細身なのに結構ガッチリしているから、重くて運ぶのに苦労したよ~」


 なんてことだ。

 彼女は本当にあの階段を担いで登っていた。


 普通に登るだけでも少ししんどかったのに……


(我が幼馴染ながら末恐ろしい限りだ……)


「な、なんか悪いな。そこまでしてもらってたなんて……」


「ううん、いいの。わたしがしたくてしたことだから」


 この幼馴染は女神か何かなのだろうか?


 本当にリーフレットが幼馴染で良かったなと思う。


 こんな美人で人の世話をするのが上手くて、優しくて。

 世の男からすれば理想がいっぱい詰まった女の子だろう。


 本当に幼馴染として、誇りに思う。


「あ、あの話は変わるんだけど……」


「お、おう。なんだ?」


「その……例の件なんだけど」


 例の件。

 多分、リーフが今日の早朝に言っていたことに繋がる内容だ。


 峡谷での一件が終わった後から何か言いたげな感じだったところを見ると、内容は同じなのだろう。


 俺は雑談モードから一変。

 真剣な眼差しを向けて、リーフを見つめる。


「えっと、その……頼みがあるの」


「頼み?」


 うんと小首を縦に振るリーフレット。

 ずっと言えなかった内容からか、少し不安そうに俺を見つめてくる。


「俺にできることなら何でも言ってくれ。出来る限り、力になるから」


 不安そうにする彼女の心を少しでも和らげるために、俺ができる最大限のフォローを敢行。

 リーフレットはそれを聞いて少し落ち着きを取り戻したか、表情に柔軟性が出てきた。


「あ、ありがとうしーちゃん。じゃ、じゃあ言うね」


「お、おう……」


 いつの間にかお互いに正座して向かいあっていた、

 そんな緊迫した雰囲気の中、俺はただひたすらリーフの目を見て待つ。


 リーフレットは最初こそ不安な面を見せていたが、今は覚悟を決めたかシュッと引き締まった表情に変わると。

 しっかりと俺の目を見て、彼女は喋り始めた。


「しーちゃん、お願いがあります。わたしを……一人前の女にしてください!」


 ……………はい?

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