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110.久しぶりの仕事

今年最後の投稿になります。

いつもお読みいただき、ありがとうございます。


来年度も宜しくお願い申し上げます。


「おうシオン。身体は休まったか?」


「はい、おかげさまで」


「なら、今日からビシバシ行くからな。覚悟しておけよ~」


 工房に着くと、俺は真っ先に親方の元へと飛んでいった。

 親方はいつものように作業服と頭には捻じった鉢巻を付けており、早朝にも関わらず汗まみれになって働いていた。


 それでもいつものような眩しい笑顔は変わらず、普段の親方の姿がそこにあった。


「今日も親方は工房に泊まりこみだったんですか?」


「まぁな。人手不足なのもそうだが、発注数がとんでもないことになっていてな」


 俺が工房を留守にしている間、親方は何人かの職人を招いて人材を補てんしたという。

 中には大手武具店に属していた腕利きの職人もおり、自分から工房務めを志願したものもいるらしい。


 勇者軍との契約に続き、国家騎士の使う武具の特別契約によって親方の工房が界隈に知れ渡り、知名度が一気に上がったことによる現象だと親方は言った。


 おかげで注文がひっきりなしに来ており、全然サイクルが回っていない状況にあるという。


 現に早朝にも関わらず50名近い職人が既に工房で汗水たらして働いていた。


 なんかもう二重の意味で申し訳なくなってくる。

 仕事が満足に出来ていないのもそうだが、元々その二つの組織と契約を結んできたのは俺だし。


 親方は凄く喜んでくれているけど、やはり罪悪感が拭えない。


「シオンも早く着替えてこっちを手伝ってくれ。今日も大忙しだからな!」


「は、はい! すぐに行きます!」


 大声で返事すると共に俺はすぐさま作業服に着替え、親方の補助につくことに。

 

 久しぶりに袖を通す作業服からは何やらいい匂いがした。

 工房の雑用係の人が洗ってくれていたんだろう。

 

 職人としては作業服は洗剤の匂いよりも金属特有の金属臭がした方が名誉なんて言われているけど、本当にそうだ。

 その匂いが強ければ強いほど仕事に尽くしたということだからな。


 職人として一つの証になるんだから、納得がいく。


「親方、次は何をすれば?」


「じゃあ、この金属片を運んでくれ」


「了解です!」


 初めは鍛造とかではなく、資材運びから俺の仕事は始まった。

 半ば職人になりたての新人が行う雑用係だが、それでも俺にとっては仕事をしているという達成感があった。


 そして身体が仕事スタイルに慣れてくると、今度は剣の焼入れの手伝いと工房の名を作剣した剣に刻み込む銘切りという作業を行った。


 地味な仕事だが、剣を作る上ではどちらも欠かせない工程だ。


 俺は一瞬たりとも気を抜かず、仕事に没頭した。

 

 いつしかそれは没入へと変わり、気がつけば昼過ぎになっていた。


「おーい、シオン。そろそろ昼休憩だから休めよ~」


 工具を持った親方が俺の作業スペースにひょっこりと顔を出す。

 俺はその声に気付かず、ひたすら銘切りに勤しんでいた。

 

「シオーン、聞こえてるのかー?」


 二度目の問いかけもやはり気付かず、親方は俺の背後まで寄って来ると、ポンと軽く左の肩を叩いた。


「あ、親方。お疲れ様です」


 ようやく親方の存在に気付き、首だけ後ろを向く。 

 全然気づかなかった。


「おう、お疲れさん。かなり没頭してたみたいだな」


「す、すみません。久しぶりの仕事がなんか楽しくてつい」


 仕事が楽しいだなんて世の人間からすれば間違いなく変わり者の対象となる。

 でも実際そうなのだから、仕方がない。


 そう思うと、俺は凄く幸せ者なのかもしれないな。


「仕事に打ち込んでくれるのは非常に在り難いことだが、過剰労働で身体を壊してしまっては意味がない。休むこともしっかりと頭の中に入れてこそ、一人前の職人だということを忘れてはならないぞ?」


「は、はい。肝に銘じておきます」


「はっはっは! 別に怒っているわけじゃないから安心しろ。それよりも昼休憩だ。シオン、少し俺に付き合ってくれるか?」


「お、俺がですか?」


「ああ。少しお前さんに話しておきたいことがあるんだ。悪いが、昼休憩の時間を少し貰うぞ」


 親方はそういうと付いてこいと言わんばかりに、クイッと首を動かす。

 俺は作業で縮こまった身体を大きな伸びで解し、ゆっくりと作業椅子から立ち上がると、親方の背中を追った。

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