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11.二度目の訪問

多くの皆様の応援もあり、この度ジャンル別の日間ランキングで1位になることができました!

本当にありがとうございます!


これからも頑張ってまいりますので、何卒よろしくお願い致します!


※少し加筆修正しました。


「つ、疲れた……」


 抱えて持ってきた鎧やら防具やらの袋を勇者軍の門前でドサッと下ろす。

 例の親方に頼まれていた品物だ。

 

「……ったく、人使い荒いんだから」


 王都の外れにあると言っても距離はそれなりにある。

 普通に徒歩で行っても30分ほどかかる場所だ。


 今回は荷物を持ちながらだったからもっとかかったが。


 ちなみに力仕事に関しては苦手な方ではない。

 でも自分から率先してやろうなんて誰も思わないだろうし、俺も思わない。


「うっ、腰痛い……」


 少し身体が鈍ったか?

 一応素振りは毎日やっているんだが――


「あらシオンじゃない。こんなところで何をしているの?」


 突然背後から俺の名を呼んでくる者が一人。

 後ろを振り返るとそこにはリベルカさんが立っていた。


「リベルカさん、こんにちは。今日はこれを届けにきて……」


 と、俺はそう言いながら防具一式が入った袋をドサリとリベルカの前へ置く。


「こ、これを一人で持ってきたの?」


「ええ。うちの親分が荷馬車の手配を忘れちゃって」


「それは大変でしたね。わざわざありがとうございます」


「いえ。これも仕事ですから」


「あ、しーちゃん! お~い!」


 おっと。今度はリーフレットに目をつけられてしまったようだ。


「どうしたの~? ひょっとしてこの荷物を?」

 

「ああ。ちょっとこれを届けに来てな。訓練はもう終わったのか?」


「うん! 今ちょうど昼休憩なの。あっ、そういえばこの前の続きどうしよっか?」


「続き……?」


「ほら、前にここへ来たときに案内するって話してたでしょ」


「ああ! そういえば」


 リーフレットに勇者軍の拠点を案内してもらう約束をしていたんだった。

 

 でもちょうどいい。

 どうせ辛い思いをしてここまで来たのならリーフレットに案内してもらおう。

 

 一応大体戻ってくる時間は伝えてある。

 予定よりもだいぶ早くに着いたから少しだけ時間の猶予はあった。


「リーフ、今から時間空いてるか? 案内してほしいんだが」


「今から? 別にわたしは大丈夫だけど、しーちゃんはお仕事大丈夫なの?」


「ま、まぁ気晴らしって言っておけば……」


 サボるのではない。

 あくまで気分転換だ。

 

 それに、勇者軍は我々ガイル武具店にとって重要な顧客になるかもしれないしな。


 そういうことならば親分も許してくれるだろう。


(……まぁ、本音はこのまま帰るのが面倒ってだけなのだが)


 本音は胸の内にしまっておくことにする。


「そ、それならいいけど……」


「じゃあ、頼むリーフ。これを運び終えたらすぐに行くから待っていてくれ」


「うん、分かった! ロビーで待ってるね!」


 というと、リーフレットは足早に去っていく。

 

 すると、そんな姿を隣で見ていたリベルカが少し微笑みながら、


「本当に二人は仲が良いのですね。微笑ましい限りです」


「そうですかね?」


「はい。とても羨ましいです。私にはそういう人はいないので」


 羨ましい……か。

 なんだかんだ言って数年間一緒に過ごしてきた間柄だからこうして久々に再会しても新鮮味というよりかは懐かしさの方が強い。


 しかしそういった経験のない人ではリベルカの言う通り、羨ましいと言った形で映るんだろうな。

 

 俺は荷物を勇者軍本部に運び込む。

 リベルカの案内のもと、武器庫へ袋を置き、ようやく俺の任務は達せられた。


「ふぅ、これでよしっと」


「あ、あの……シオン?」


「……? どうしました?」


「えっと……この前はいきなりのお願いにも関わらず聞いてくださり、ありがとうございました」


「いえ、気にしないでください。逆にあんな強引な契約に合意していただけるなんて思ってもいませんでした。おかげでうちの親分、物凄く喜んでましたよ」


「人に物を頼む立場として当然のことをしたまでです。本来なら、あの契約だけでは足りないくらいとも思っています」


 あの契約とは例の顧客契約のこと。

 普通、勇者軍レベルの大規模な武力組織が使う武器や防具は大手武具店の特注品がほとんどだ。


 それに大きな店で契約を交わした方が武器・防具のアフターケアの無料化など色々とメリットがある。

 だが小規模店にはそういったものはない。


 俺らからすればとてつもなく在り難い話ではあるが、流石に強引だったかと少し反省している。


 向こうからしてみれば、メリットを失う結果となったわけだからな。

 

 リベルカはそれらを気にするような素振りは一切見せなかった。


 でも……


「リベルカさん」


「はい」


「一つ疑問なんですが、なぜ俺に軍へと戻ってこないかとは言わずに協力してほしいと言ったのですか?」


 素朴な疑問を投げかける。

 するとリベルカはすぐに答えてくれた。


「本音を言ってしまえば、シオンには勇者軍に戻ってきてほしいです。でも、あなたは既に新しい道を自らの力で手に入れ、新しい人生を歩んでいます。そんな人を自分たちの都合で呼び戻すなんてことは私にはできません」


 リベルカはここで一旦区切り、続けた。


「それに本当は先のお願いも断られる覚悟でいました。自分勝手なお願いだということは重々承知の上でしたので」


 確かに突然のことで驚きはした。

 でもリベルカに罪はない。


 すべてはあのクソ野郎に振り回されただけだったのだから。


「あまり気にしないでください、リベルカさん。あの判断は俺がよく考えた上で下した決断なんですから」


「シオン……」


 目を潤わせるリベルカ。

 そして彼女は両手をそっと胸に当てると、


「本当に感謝しています。これで少しは希望を持てました」


 ニッコリと笑みを浮かべる。

 でも俺なんかができることなんて些細な事。

 

 改革の手伝いとは言っても俺が手伝ったことで劇的に変わるわけじゃない。

 しかしリベルカ曰く昔の勇者軍を知る数少ない人物ということだけでも大きな変化が生まれるとのこと。


 まぁ理由はどうであれ、リベルカさんには勇者時代に色々とお世話になったし、何とか助力してあげたいと思ったまで。

 

 それに尽きる。


「それでは、私は仕事があるのでこれで。これから、どうぞよろしくお願いしますね」


「こちらこそ、よろしくお願いします」


 互いに手を握り、改めて挨拶を交わす。

 そしてリベルカは一礼すると、その可憐な紅髪を揺らしながら去って行った。


「……これも、何かの縁なのだろうか」


 もう二度と関わることはないと、そう思っていた。


 思うところは色々ある。

 良い思い出よりも悪い思い出の方が印象深いからそう思うだけかもしれないけど。


 でも今は過去のことは忘れてやれることをしようと思う。

 

 今度は”勇者”としてではなく、一人の鍛冶職人としてね。

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