表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

103/266

103.最大の禁忌


 盛大に解かれる力。

 グランの特殊能力≪極限突破≫を使い、一気に魔力を解放していく。


 その破格な魔力の高まりにバルガやユーグたちもすぐに異変に気づいた。


「な、なんだこの凄まじい魔力は……!?」


「し、しーちゃん……?」


「な、なんだありゃ……」


「し、シオン……?」

 

 上限なく膨れ上がる魔力。

 それは人知を超え、人が許容できる魔力量も遥かに超えていた。


『し、シオン……! あまり無理するな。これ以上魔力を高めたら流石のお前でも……』


「いや、大丈夫。まだいける」


 多分、後でそれなりに身体への反動が来るだろう。

 

 前にゴルドと戦った時と同じように。


 でもどうやらこの策は間違いではなかったみたい。

 さっきよりも魔法の効力が落ちてきていた。


 そして少しずつだが、上空にある魔法陣に亀裂が入っていく。


「ま、まさかあの男……!」


 そう、そのまさかだ。

 

 バルガの表情は額に汗をかきながら、少しずつ険しくなっていく。


「グラン……!」


『うむ!』


 魔法陣はビリビリっと紙切れのように破られ、そして――


「これで、終わりだ!」


 目を覆うように襲う激しい閃光と共に魔法陣は完全消滅。

 と、同時に身体にかかっていた謎の重みがなくなり、一気に軽くなった。


「……ふぅ、どうやら成功みたいだな」


『ホント、お前さんは規格外な男だ。まさか絶対術式を魔力で破壊してしまうとは……まさに溜息が出るレベルの魔力量だな』


「それ、褒めてるのか?」


 俺は服についた砂や埃をパッパと払い、バルガの方を向く。

 流石のバルガもこれには驚きを隠せないようで、


「ば、バカな……! 暗黒魔法が……絶対術式が破られただと!?」


「魔力の使い過ぎで少し身体が震えるがな。でもあんまり大したことなかったぞ、その絶対術式とやら」


「くっ……!」


 俺は聖威剣(グラン)を片手に持ち、剣先をバルガに向ける。

 そして一言――バルガに向けて言い放った。


「これで状況が大きく変わったわけだ」


「ちっ……!」


 リーフレットもすぐに立ち上がると、両手で聖威剣(ヴァイオレット)を握りしめた。


「今のお前に俺とリーフを同時に相手にする力はないはず。覚悟しろ、魔人バルガ!」


「ふっ、上等じゃねぇか。やってやるよ。今俺様が出せる全力でな!」


「全力……ん?」

 

 と、次の瞬間。

 先ほどまでの空気とは一変する。


(なんだ、この感覚は……魔力の集まりは……)


「見せてやる。これが俺様の……全力(フルパワー)だ!!!」


 邪気を含んだ魔力を探知。

 黒の霧のようなものが発生し、バルガの身体全体を包んでいく。


 そして謎の爆発と共に、バルガの新たなる姿が露わになった。


「こ、これは……」


「す、すごい力……」


 先ほどとは桁違いの魔力量。

 髪も黒く変色し、一回り身体も大きくなっていた。


「ふふふふ……まさか、この俺様が最大の禁忌を犯してしまう時が来るなんてな……」


「最大の禁忌だと?」


「ああ。この姿こそ、魔界では禁忌そのもの。ガルーシャ様にもこれだけは使うなと言われていたが……」


(これだけは……?)


 どういうことだ。

 暗黒魔法が魔界では禁忌とされているのは分かった。


 だがこの姿は一体……


 変わったのは姿形だけじゃない。魔力も力もさっきのバルガよりも数段増している。

 

 まるで別人のように。


(何が起きたんだ……? 魔人は自分の姿を変え、力を増幅させることできるというのか?)

 

 だがゴルドの時はそんなことはなかった。

 もちろん、今まで戦った魔族たちも同様だ。


 暗黒魔法の存在も初めて知ったし。


(まだ他にも魔族特有の”なにか”があるというのか?)


 でも可能性は高い。

 実際、目の前で起きている謎の現象もそうだ。


 この力の高まりは尋常じゃない。


「さぁ、来いよ。俺様はもう命を捨てる覚悟でいる。だから貴様らも命を献上する覚悟で来いやぁぁ!」


 激しく揺れ動く地面。

 周りにどす黒い霊気を纏い、バルガの目の色もより赤く変色。


 元から強かった覇気もさらに強さを増し、身体を通じてそれが伝わって来る。


「リーフ、後は俺がやる。お前は後ろに下がっているんだ」


 こいつはもうただの魔人じゃない。

 それを越えた何かだ。


 あまりこういうことを言いたくはないが、とてもじゃないがリーフでは力不足。


 だがリーフはすぐに首を振ると、


「わ、わたしも戦うよしーちゃん! いや……戦いたい!」


「り、リーフ……」


 否定。

 自分の戦いたいという強い意志がリーフの眼から感じられる。


「もう、守られるだけなんて嫌なの。わたしも……しーちゃんと戦いたい!」


 彼女の目に嘘はなかった。

 澄みきった奥深い碧眼の眼が俺にそう訴えかけてくる。


(そうか、お前は乗り越えようとしているんだな。自分の弱さと……)


 昨日の夜に彼女の口から語られた弱い一面。

 彼女は今、それを乗り越えようと必死に頑張っている。


 それはもう目を見れば分かる。

 覚悟を持った強き者の目だ。


 そんな人間を俺は無碍にはできない。


「……分かった。でもリーフ、無理だけはするな。あれはもう、さっきの魔人じゃない」


「う、うん……! 分かったよ!」


 俺はリーフレットと共に一緒に戦うことを決意する。


 少しだけ震える手で聖威剣を握るリーフレット。

 俺はそんな彼女を横目で見ながら、


「……怖いか?」


「う、ううん……大丈夫。今はしーちゃんと一緒だから」


「そうか。でも深追いはするなよ。ヤバイと思ったらすぐに下がるんだ」


「う、うん……! 分かった!」


「よし……じゃあ行くぞ!」


「来い……! 殺してやる……!」


 これが恐らくラストバトルになるだろう。


 俺たちはグッと身構え、魔力を解放。

 剣先をバルガに向けると、俺たちは最後の戦いに向かうのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幻冬舎コミックス様より
コミックス4巻発売中!
現在「comicブースト」様にて好評連載中です!
俺の冴えない幼馴染がSランク勇者になっていた件

i801353


↓comicブースト様連載サイト↓
俺の冴えない幼馴染がSランク勇者になっていた件



↓幻冬舎コミックス様紹介サイト↓
俺の冴えない幼馴染がSランク勇者になっていた件



アルファポリス様より
小説2巻発売中!
無能と蔑まれし魔術師、ホワイトパーティーで最強を目指す

i801359


↓アルファポリス様紹介サイト↓
無能と蔑まれし魔法使い、ホワイトパーティーで最強を目指す

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ