101.悪戦苦闘
今、目の前でリーフレットが戦っている。
リーフお得意の高速剣技がバルガを圧倒していた。
「やるじゃねぇか。こりゃ予想以上の強さだぜ」
「まだ! わたしの力はこんなもんじゃない!」
加速するリーフレットの剣撃。
力はバルガを遥かに凌駕していた。
だが一つ問題なのは一つ一つの挙動が単調であること。
一撃一撃は凄まじいものがある。
だが、単調な故に攻撃の軌道が読みやすいのだ。
だからバルガに攻撃を見切られ、かわされていた。
リーフの素直さ故の欠点。
一言で言えば相手をあっとさせる意外性に欠けていた。
「オラオラ、どうした? 攻撃が当たってねぇぞ?」
「くっ……!」
さらにリーフレットの剣技は鋭く加速する。
だがやはり攻撃を見切られ、悉く避けられてしまう。
(あ、あれじゃダメだ。完全に読まれている……)
正直、能力的にはバルガよりも上だ。
でもなんというか……
一言で言えば技術がまだ能力に追いついていないという感じ。
しかしながら、これに関してはもうどれだけの知識と経験を積んだかによる差。
日々の鍛錬というよりかは戦い方を知っているか知らないかの問題になる。
「な、なんで攻撃が……!」
徐々に焦り始めてくるリーフレット。
同時に怒涛の連続攻撃で疲れが出てきたか、若干動きが先ほどより鈍っていた。
するとそれを察したバルガは不敵な笑みを浮かべ一度リーフレットから距離を置くと、
「……!? 消えた!?」
その場から瞬時に姿を消す。
「ど、どこ……!?」
「リーフ、上だ!」
「……上?」
彼女のすぐ頭上。
短剣を持ち、脳天を打ち砕かんとするバルガの姿が。
得意の潜伏スキルで身を潜めていたのだろう。
俺も消えた時にはどこにいるか分からなかった。
「おりゃぁぁぁぁぁ!」
「……ッ!」
間一髪。
俺の助言を聞いたリーフレットが聖威剣の剣体を縦に構え、防ぎきる。
「ちっ、防がれたか。だが……!」
バルガは短剣を急に引っ込めると、即座に姿勢を低くすると、
「きゃっっっ!」
リーフレットの脇腹に見事なまでの回し蹴りをくらわせる。
だがすぐに態勢を整えると、腹部を抑える挙動を取る。
「た、ただの蹴りなのに……」
さっきの一撃で相当なダメージを受けた様子。
戦いを見る限り、このままでは……
(やられるのも時間の問題だ)
正直な話、バルガの方もさっきの戦闘で最初よりは体力も攻撃の質も落ちている。
だが数多くの戦闘を通じて戦い慣れしているからかそれらを全てカバーできていた。
「ま、マズイな……」
このままではみんな仲良くあの世行きになる。
ユーグとリィナも何とか持ちこたえているみたいだが、辛そうに表情を険しくさせていた。
「くそっ、何か方法は……ん?」
せめてこの魔法さえ何とかなれば……
そう思っていたその時だ。
「ぐ、グラン……! 生きてるか?」
『我なら大丈夫だ。それよりもお主は……』
「俺なら大丈夫だ。少し身体が重くなった気がするがな。そんなことより、一つやってみたいことがある」
『やってみたいことだと? 一体何をするつもりなのだ?』
俺は腕を伸ばし、グランを握ると――俺のその脳内に浮かんだ咄嗟の策をグランに伝えた。
「一か八かの賭けだが、これしかない。この魔法を……俺たちの力で強制破壊する!」




