覗き
夜の9時過ぎ双眼鏡を手にしてベランダに出る。
今日はやけにパトカーや救急車のサイレンが鳴り響いているな。
ま、いいか、見つからなければ良いんだ。
双眼鏡を覗き向かいの病院の看護師寮に目を向ける。
俺の部屋からだと寮の風呂場が覗けるのさ。
あれ? まだ看護師さん達寮に戻って来ていないのかな? 風呂場の電気が点いていない。
風呂場が覗けないのなら今日は病院の最上階にある、病院の跡取り娘で副病院長の40前後の美熟女のオフィスを覗こう。
この女その立場に物を言わせて若い看護師さんをオフィスに連れ込み、ムフフな事をやっているんだよ。
お! 今日は久しぶりに複数で事に及ぶみたいだな、若い看護師さん数人がオフィスの中で副病院長を追い回している。
へー珍しい、何時もは嫌がる女の子を副病院長が追いかけ回してソファーに押し倒すのに。
あ、捕まった。
副病院長を押し倒した若い看護師さん達がその身体に口を寄せて、エ!?
噛みつき肉を引き千切っているぅー。
副病院長の綺麗な顔が歪み、閉めきられた窓からは聞こえてこないけど悲鳴を上げているらしく口が大きく開いている。
何が起きているんだ?
それより誰も駆けつけて来ないけど、病院の他の職員や患者さん達に悲鳴は聞こえていないのか?
他の部屋に双眼鏡を向けると、向けた部屋の窓に血で染まった掌が叩きつけられ窓に跡が残り、他の部屋の窓には血が飛び散っている。
呆然と病院の中を見ていたら路上から悲鳴が聞こえた。
見下ろすと病院の裏門からノロノロと歩み出てきた人たちがサラリーマン風の男を押し倒しその肉を噛み千切っている。
俺は警察に電話する事も忘れ病院内や路上で起きている惨劇から目を離せずにいた。