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3人の方針

日もすっかり傾いた頃、案内された部屋で一息ついた3人はこれからどうするか話し合う。


「2人ともこれからどうする?」


「どうするって、帰ることはできないんでしょ?」


「そうみたいだね。帰る手段は無いって王も言っていたしね」


帰れないと知り悲観的な表情になっている2人だが勇人はそこまで悲観していなかった。

何故なら


「勇人はもう決めてるんでしょ?」


「ああ、俺はこの世界の人を助けようと思う」


「だと思ったよ。だって異能(タレント)の話を聞いた時の表情を見たからね」


勇人は既に覚悟を決めていた。

2人には分かっていた事だったが少し不思議に思う。


「勇人が人助けするのはいつもの事だけど、今回は人助けするって決めるの早くない?」


勇人が人助けをするのは珍しくないと言っても今回は状況がいつもと違う。

何せ異世界に来たのだから人助けする事よりもまず自分達の事を先に考えるのが普通だろう。


「俺もそうは思うけど、この世界に来てからいつもより人の為になりたい気持ちが強いんだ」


「それは加護を受けたからそう感じるのかもしれないよ?」


「隼人が言うようにそうかもしれない、けどもう決めたんだ」


勇人は決意を込めた目で2人を見る。


「勇人は一度決めたら聞かないからね」


凛が呆れた笑いをしながら


「勇人がこの世界を救うって言うなら私も手伝うわ」


「良いのか?多分危険な事がこれから沢山待ってると思うけど」


「勇人と一緒なら大丈夫!いつもなんとかなってきたしね」


「ありがとう!凛はほんとに良い友達だよ」


「う、うん!(友達・・・かぁ)」


勇人はいつも自分の味方になってくれる凛の事をとても良い友人として大切に思っていた。


そんなやりとりを見て隼人は


(勇人、君は酷いやつだよ)


苦笑いしながら


「2人が世界を救うって決めたなら僕も一緒に行くよ」


「隼人も良いのか?」


「僕一人じゃどうしようもないからね」


これで3人の方針は決まったが、そうと決まれば色々と考えなければならない。


「とりあえずこの世界を助けるならそれなりに力をつけるべきだと思う」


「それは修行するって事?」


「うん、俺たちはまだレベルが低くて弱いから」


「それには僕も賛成だよ。だって死にたくないしね」


修行という名のレベル上げをする事は決まったがまだ問題がある。


「レベル上げもそうだけど仲間はもう少し欲しいかな」


「私達だけじゃダメなの?」


凛が不安そうに聞いてくる。


「ダメとかじゃないんだよ凛。旅に出るのに3人だけだとなにかと不便な事が出てくると思うんだ」


「不便な事って?」


「例えば相手にする敵の数が多い時とか手数が必要になると思うし、夜営する時の見張りの交代も人数が多い方がスムーズにローテーションできると思うんだ」


「なるほど」


勇人の話を聞いて凛は納得する。

確かに人数が多い方が何かと融通がきくと考えていると


「それだけじゃないよ」


隼人も仲間を増やす利点を言ってきた。


「僕と凛は後衛、つまり遠距離攻撃がメインになるから近接戦闘は勇人1人に任せてしまう事になる。だから最低でも後1人は勇人みたいな前衛を入れるべきだと思う」


「そうだね、俺1人だと2人を守りきれないかもしれないから」


勇人は隼人の意見はもっともだと思った。


(やっぱり隼人は頼りになるな)


いつも行動を起こす勇人の足らない部分をフォローしてくれるのが隼人だった。

今回もなんだかんだで自分に付き合わせてしまっている勇人は、隼人に悪いと思いながらも頼りにしているし、信頼も寄せていた。


「仲間については明日にでも王に俺達の思いを伝えた後に聞いてみても良いかもしれない。流石に俺達3人だけに全部任せる分けないと思うし」


「そうよね。いくらなんでもそれぐらいの事は聞いてくれるでしょうしね」


「なら今日は早く寝て明日の朝、王に謁見しに行こう」


3人で話し合った結果この世界を救うため仲間を増やしレベル上げをする事に決まった。

決まれば話は早く、今日は休み明日に備えようという事になり3人は就寝する。




〜〜同時刻マグオート城の一室にて〜〜


「で、勇者達が我等の思い通りに行動するとして我等からも人手を出さねばなるまい。他国には大々的に勇者召喚を喧伝せねばならぬからな」


王がカトレア以下大臣達と勇人達の処遇について議論する。


「出来ればそれ相応の実力者が望ましいですな。仮にも勇者の同伴者ですから、半端者では他の国に示しがつきますまい」


「なれば誰が適任か、騎士団長クラスの実力は欲しいものだが」


大臣ダラスの提案に王が答えを求める。


「では、フリージア・インテゲルなど如何でしょう?」


「あの合成獣(キメラ)狂いをか?」


カトレアが推薦したのは1人の魔道士だった。

王はその者の名を聞き顔を顰める。

確かに魔道士としては天才級の実力を持つ者だったが性格に多少の難がある。

それに–––


「彼奴は確かに魔道士としては優秀だが、2年前の事件を起こした原因を作ったのは彼奴なのだぞ?それに今は僻地におるのではないか?」


そう、大勢の犠牲を払った()()()()()を起こした原因を作ったため、現在フリージアは僻地に左遷されているのだ。

大勢の犠牲を出したにも関わらず左遷程度で済んでいるのは、一重にフリージアが優秀だったためである。


「王の仰る通りで御座います。しかし、このまま腐らせるよりかは有効な使い道かと、それに僻地とはいえ我が国内ですので魔物もそう強いものは出ませんから、レベル上げも兼ねて勇者達には現地で合流して貰えればと思います」


カトレアの言う事も最もであるとキャメリアは考えた。

確かに問題を起こし閑職に追いやられてはいるが優秀なのは間違いない。

それにどう転ぼうが国の中枢に影響は無いと判断しキャメリアはカトレアの話に乗る事にした。


「たしかに合理的ではあるな。失ったとしてもさしたる影響も無い。我が国からはフリージアを出す事にしよう」


「そのように取り計らいます」


ダラスが王の命を受け礼をする。


「王よ、私どもからも1人推薦したい物がおりまする」


王に話し掛けたのはマグオート王国と同盟を結ぶロータス教国の大神官モルドレッドであった。


「おぉ、同盟国からも人を出してくれるか」


「王よ、我等の同盟はひいては世界安寧のため、創造神ロゴス様の目指される世界実現のために御座います故、協力は惜しみませぬ」


創造神ロゴスを崇拝し、世界の安寧と創造神ロゴスの目指す、世界を平等で普遍なものにするという目的の為にマグオート王国と同盟を結んでいるロータス教国は、勇者達に協力するという事であった。


「感謝いたす。して、どのような者を送ってもらえるのかお聞かせ願おうか」


「はい、我等からはリリス・プルムを出させて頂こうかと考えておりまする」


「ほぉ、戦乙女(ヴァルキュリア)を出していただけるか」


モルドレッドが推薦した人物は、剣を握らせればドラゴンであろうが一刀のもとに斬り捨てるとまで諸国に名を轟かせた剣の名手である。

戦乙女(ヴァルキュリア)とは剣の腕前もさる事ながら、常に感情を表に出さず無表情で神の名の下に敵を斬り捨てる姿から付いた異名である。


「しかし申し訳ない事に現在は公務で国内におらず、帰国の予定は3カ月程先になっておりますが故、合流されるのは後回しにして頂ければ、と」


「うむ、仕方あるまい、人手を出して頂けるだけでもありがたい事なのだ。先にフリージアと合流させその後から帰国に向かわせよう」


「王の采配に感謝を」


「しかし、王都から出立させるのに勇者達だけと言うのもな」


やはり3人だけで出立させるのは喧伝するにあたり国の威厳に関わるとキャメリアは考えていた。


「ならば王よ、マグオート王国とロータス教国から人手が出るならば我が研究所からも出させて頂こうかと」


提案してきたのはマグオート王国とロータス教国が共同で設立した魔導生物研究所、通称“ドグマ”の所長であるドクトールだ。


「ドグマから、とな?」


キャメリアはドクトールから人手が出ると聞き眉を寄せる。

何故ならドグマで行われている研究は表に出せない物も多いためだ。


「王の懸念も分かりますが、フリージアもリリスも我等ドグマとは関係がありますので、今更でありますよ」


ドクトールは薄く笑いながら不遜にも王に答える。


「では何を出すのだ?合成獣の様な非人型の化け物を民衆の前には出せぬのだぞ?」


ドクトールの事をあまり快く思っていないキャメリアは素っ気なく言い放つ。


「きちんと人型を出しますので王も満足されるかと思います。それに王都におりますので希望にも沿うかと」


「結局は何を出すのだ?」


「ウルティオを出します」


「「「「!!!」」」」


その人物の名を出しただけで場が騒然となった。


「あの事件を起こした張本人なのですぞ!」


ダラスは興奮し


「あのような背教者など!」


モルドレッドは怒りを露わにし


「アレが使える代物だと?」


カトレアは呆れながら、それぞれがその者のに対して口走っていた。


ウルティオとはフリージアが関わった事件を起こした張本人であり、現在城の最下層にある牢獄に投獄されている人物であった。


「皆様の言う事ももっともですが、ウルティオの調整は完璧にしておりましてですね」


「私自らが調整致しまして、以前の記憶は消去しております。現在は廃人と化しておりますが、私が最終調整として新たな記憶を与える予定です。更には命令に絶対遵守する呪詛を刻み込んだミスリル製のフルプレートメイル、呪詛の鎧を装着させますので暴走などの危険はありません」


ドクトールが皆の意見を薄ら笑いながらも説明する。


「アレは既に力が残っているのか?そもそもフリージアは気付くのではないか?」


キャメリアがドクトールに聞くと


「確かにあの事件の影響か、以前のような力は無く出涸らしのような状態ですが、基本的なステータスは高いためそこそこは使えます。ですから最悪合流までの肉の盾に丁度良いかと」


「つまりは使い捨てにすると言うことか?」


「はい、その方が良いのではないですか?どうせ全盛期の力はない残りカスです。使い道の無いものをいつまでも置いておくよりも有意義な事かと」


キャメリアはドクトールの説明を聞きウルティオを使う一応の納得はいったが、まだ2つ程問題があった。


「アレを使う理由として納得はするがフリージアの問題はどうする?」


「それも問題ありません。ウルティオには既に記憶はありませんし、フリージアはウルティオの名前は知りません。それに呪詛の鎧を脱げなく致しますので姿は見えないため心配ありませんし、仮にバレたとしても既に出涸らしですのでどうしようにも出来ますまい」


一つの問題は解決したがもう一つ問題がある。

今までの問題の中で一番重要度の低い問題ではあるのだが


「アレはあの子のお気に入りなのを知っておられるでしょう?」


カトレアが不意にドクトールとキャメリアの会話に割って入る。


「第3皇女様、ですか」


そう、キャメリアの末娘でありカトレアの末妹である

アキレア・マグオートが問題なのだ。


「うむ、アキレアがな、アレの元に足しげく通っているのだ」


「噂では聞いておりましたが・・・」


何が良いのかウルティオの元に通い廃人と化し、会話すらままならないウルティオにその日の自分の出来事などを語りかけたりしているようだ。

その事は王宮内でも噂になっており、一部では廃人に哀れむ皇女の慈悲だと言われ、美談になっていたりもしていた。


「あれも今年12歳になり習い事や貴族との付き合いなどで気疲れもあるのだろう、王宮には歳の近い者も居らぬし、気軽に話せる者も少なかろう、だから物言わぬ廃人に話す事で気が紛れるならと目を瞑っておったのだが」


キャメリアはウルティオの元に通うアキレアの行為を快くは思っていなかった。

しかし、アキレアの精神的な負担が軽減するならとウルティオの元に通うのを許していたのだった。


「しかし問題ありません。私が代わりの者を用意致しましょう。実験の過程で廃人になった囚人がおりますのでウルティオと同じ顔や状態にして代わりに置いておきましょう。まず気付かれる事もないかと思われます」


「ならば問題あるまいか。最終調整はどの程度掛かる?」


「2〜3日あれば完璧に」


「ならば任せる。勇者達の送り出しは余裕を持たせ一週間後にさせるとしよう」




––––––こうして勇人達の預かり知らぬ所で本人達の歩くレールが敷かれていく、本人達の事情などお構いなしに。












〜〜マグオート城最下層、特別房〜〜


「今日は魔法の勉強をした後休憩を貰えたので中庭でお花を見ていたんです。お花の蜜を求めて蝶々がお花の辺りを飛んでいたのを見て、わたしも蝶々のようにお空を飛べたらなぁ、とついつい考えてしまいました」


少女が楽しそうに何気ない話をする。


「わたし、勉強は嫌いです。だって先生がいつも怒るんですもの」


しかし話し相手は何も答えない。


「ダメですね。そんな事を言っていたら貴方に怒られてしまいますね」


微笑みながら少女は尚も話しかける。

返事はないと知りながらも


「そう言えば勇者様がこのお城に来られたそうですよ?わたしはまだ会っていませんが」


少女の顔から笑顔が消える。


「貴方の犠牲があって来られた方達です。わたしは貴方にこの国がした事や仕打ちが許せません」


笑顔が消え、怒気を含んだ表情に変わる。


「貴方はわたしを含めたこの国や世界を憎んでいるのでしょう?」


語り掛けるも答えはない。


「貴方の存在はこの国、世界の犯した罪です。それに対してこの仕打ち、このような光の届かない暗闇に押し込めて・・・償いをしなければならない立場のはずですのにね」


少女が憐れみを宿した目で相手を見つめ手を伸ばす–––


「アキレア様、そろそろお戻りになりませんと・・・」


外で待機している付き添いの者が声をかけてきた。


「今日はここまでみたいですね」


伸ばしかけた手を引っ込め、寂しそうな笑顔を向ける。


「貴方の壊れてしまった心はいつになったら戻ってきて下さるのでしょうね・・・」


そう言い残しアキレアは独房を後にした。



現在公開出来る情報


《ロータス教国》

創造神ロゴスを崇拝しロゴスの目指す全ての者が平等で普遍な世界を作るという目的実現を国是としている国。

世界の安寧を目指すマグオート王国とは同盟国である。


魔導生物研究所(ドグマ)

マグオート王国とロータス教国との共同で作られた研究所。

表向きは魔導の研究で人々の生活向上の為の魔法や魔法生物などを研究する場所であるが、実態は人体実験や危険な魔法の研究などが行われていると言われている。

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