6話 施設一日目
1日目
俺が連れて来られたのは白いレンガ調の研究施設のような場所。
数多くの檻があり、中には魔物のような形をした子供や、見たこともない化け物のような魔物が数多く捕らえられていた。
これだけの生物がいるにも関わらず施設内は驚くように静かだった。
俺は実験室のような場所に連れて行かれる。
その部屋にあるのは一つのベッドと床に書かれた魔法陣だけだ。
中にはローブを着た3人の男性がいた。
俺はベッドで横になると目隠しをされる。
男たちが呪文のような言葉を唱えながらなにかをしている。 そして腕の血管に針のようなものを刺されなにかが流し込まれる感覚がする。
刺された箇所が熱く鈍い痛みを放っているが堪えられないほどではなかった。
「よし、終わったよ。 君は騒がなくでいい子だね。 頑張ったご褒美に飴をあげよう。」
男は俺の目隠しを取るとポケットから飴を取り出し渡してくる。 俺は受け取ろうとしたがもう一人の男が
それを止める。
「おい、この子には飴は必要ないとマスターが言ってただろ!」
「そ、そうだったな。 すまん、忘れていた。」
男が飴をもう一度ポケットに戻すと俺は部屋へと連れて行かれた。
部屋に着くと中には4人の子供がいた。
犬の亜人の女の子と人間の男の子。エルフの男の子と女の子の4人だ。
俺が部屋に入ると男達は鍵を閉めて立ち去った。 さて、どうしよう? とりあえず挨拶でもしようか。
「えーと、はじめまして。 俺クレト。 今日からここでお世話? になる。 よろしく。」
「よ、よろしく! 私ノルン!」
俺の挨拶に緊張した面持ちで答えたのは亜人の女の子。 それをかわきりに他の子供達も挨拶を返してくれ
る。 ちなみに子供達は俺と同い年くらいだ。
「僕はトーマ。」
「俺はフィーンこっちは妹のフェレインだ。」
「よ、よろしくぅ。」
トーマは人間の男の子だ。髪はパーマがかった黒色で目元がギリギリ見えるほどの長さ。 クールな印象を
受けた。
フィーンとフェレインは兄妹らしい。 エルフ族の2人は耳が尖っていて、髪は薄い緑色だ。 エルフのレイナールさんよりも薄い髪色だった。
「みんなはここに来てからどれくらい経つんだ?」
とりあえずは情報交換をしておこうと思いみんなの状況を聞き出す。 聞き出した内容を整理するとこんな感じだ。
ノルン ここに来てから1週間程度。
トーマ ここに来てから3日程度。
フィーン・フェレイン ここに来てから2日程度。
食事は1日2回。
飲み物は定期的に部屋へと持って来られるそうだ。
何日かに1度俺の連れて行かれた。 実験室のような場所へと連れて行かれて身体になにかを入れられたり、謎の飲み物を飲まされたりする。
この部屋以外の子供は見たことがあるが話したことはないらしい。
俺を誘拐した金髪顎髭の男は【マスター】と呼ばれているらしい。
これが情報交換でわかったこと。
まぁ俺はあの男、マスターには逆らえないから大人しくしているしかない。
逆らうと村になにがあるかわからないからな。
とにかく今できることは情報を集めてあいつらがなんの実験を行なっているかを調べることだ。