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2話 都市デート

 

 次の日珍しく朝起きられた俺は約束通りライラと合流し、レイナールさんの荷車に乗って都市へと向かっていた。


 レイナールさんは有名な薬剤師でケルポック村の近くに生えている珍しい薬草を目当てに村へきている。


 緑の長髪でなによりハーフエルフという人間とエルフから生まれた彼女は年齢を感じさせない美貌を持っていた。


  村の親父たちはみんなレイナールさんにメロメロだ。


「今日はありがとう。 レイナールさん。」


「いいんだよクレト。 都市までの道のりは退屈だからね。 君たちといる方が楽しい。 それよりライラは

 両親からよく都市へ行く許可をもらえたね。」


「ふふ、本当はダメだってパパに言われたんだけど、パパがレイナールさんをデートに誘ったことをママに言っちゃうよ? って言ったらいいよって言ってくれたんだ。」


「お前な......村長を手玉にとるなよ。」


 こいつは人の弱みを握るのが本当に上手いな......


「クレトの方は......まぁ大丈夫か。」


「うん。 うちはレイナールさんがいるなら大丈夫だろうって母さんが。」


「ほぅ、それは責任重大だな。」


「レイナールさん! いつもみたいに冒険者だった頃のお話聞かせてよ!!」


 またライラがレイナールさんに冒険話をねだる。 レイナールさんは元々有名な冒険者だったらしいのだが、パーティが解散したときに引退してしまったらしい。


「君たちに語る冒険譚はもう残ってないよ。 昔は毎日君たちに聞かせていたからね。」


 俺たちが3歳になる頃村にやってきたレイナールさんは病気で寝込んでいたライラを助けたことで村人から信頼を得て、その頃から俺たち幼馴染はレイナールさんの家で冒険譚を聞くことが日課になっていた。


  レイナールさんの冒険譚を聞いているうちに俺たちは自然と冒険者を目指すようになっていたのだ。


「ところで修行のほうは順調かい?」


「んー、まぁまぁかなー。 レイナールさんに許可されてる狩場の魔物じゃもう物足りなくなってきちゃった。」


「そうだよな。 でもあんなことがあってからは気を抜かないように気をつけてるよ。」


「そうだよ。 どれだけ低レベルの相手でも一時の気の緩みで命を危険にさらすことになるからね。 まぁ

 君たちは歳のわりにしっかりしているから大丈夫だとは思うけれど気は抜かないようにね。」


 俺たちは5歳の頃からレイナールさんに稽古をつけてもらっており、7歳の頃からレイナールさんの指定した場所での狩りは俺たちだけで行ってもいいという許可をもらっていた。 そんなとき、俺の気の緩みでライラに大怪我を負わせたことがあるのだ。 俺はそれからは絶対に戦闘では気を抜かないと心に決めていた。


「私はもう中級魔法も使えるようになったよ! レイナールさんに教えてもらった風の魔法!」


「へぇ、それはすごい! ライラは将来いい魔法使いになるね。」


「へへぇ」


 レイナールさんに褒められてライラが頬を赤く染めている。


「クレトも頑張らないとライラの隣にいられなくなるかもしれないよ?」


 レイナールさんが少し意地の悪そうな顔をして俺にそう言ってくる。


「大丈夫だよ。 俺はずっとライラを守るって決めてるんだ。」


「な、なにいってんのよ! ク、クレトに守ってもらわなくたって大丈夫だもん!」


 なぜかライラがさっきより顔を真っ赤にして怒ってきた。


「ふふっ、よかったねライラ。」


 そんな他愛もない会話をしているうちに都市へと到着した。 途中で何度か魔物とすれ違ったがレイナールさんが魔法で瞬殺していた。


 レイナールさんは本当に強い。


 都市に入るとレイナールさんに帰りの時間を確認し二人で市場へと向かった。


「どこから回る?」


「そうだなー、少しお腹が空いたかな?」


「じゃあ適当に食べながら歩くか。」


 俺たちはまず近くにあった【ケプトラ】という鳥型の魔物の肉を串焼きにしたものを購入した。


「おいしぃー!」


「やっぱりケプトラの肉串はうまいな!」


 ライラは肉串をすぐ食べ終わると近くの店でクレープを選んでいる。


「クルト! 私この赤いのがいい!」


「はいはい。」


 俺は約束通りクレープを奢り、自分の分も購入した。 それをベンチに座って食べる。


「クレトー、一口ちょーだい!」


「はいはい。 俺ももらうぞ?」


「うん!」


 いつもは少し暴力的なところがあるライラだが、二人でいるときは妙に甘えてくることがある。 まぁ兄妹みたいなものだしな。


 ちなみに俺たちのお金は魔物を狩った時の素材を売ったりして稼いでいる。 うちの村では魔物を倒せるほどの力を持った大人は少ないので俺たち子供も充分に稼ぎ頭なのだ。 もちろん生活費のために親に渡してもいる。


「じゃあ次はあっちだー!」


「ラ、ライラ!? 」


 クレープを食べ終わるとライラは武器屋に走り出した。


 俺は急いで後を追い店に入る。


「うわぁ、いっぱいあるよ?」


「ほんとだな。」


 店には盾や剣、魔法用の杖など多種多様な品揃えだ。

「あ、この杖可愛いな。」


「どれどれ? げっ、1000グルドもするよ?」


「んー、買えないことはないけどちょっと高いなー。」


「だよな。 まぁいまのでも大丈夫なんだろ?」


「うん! じゃあ次はあっちの店いこっか!」


 そういって俺たちは店を出る。 次の店は魔具の店だ。 そうして店を回っているうちに約束の時間が近づいてくる。


「あ、ごめんライラ。ちょっとトイレいってきてもいいか?」


「ん? わかった。 じゃあ私はここにいるね?」


「あぁ、すぐ戻る。」


 --その後レイナールさんとも合流し、帰路についた。


「たのしかったぁ!」


「それはよかったね。 また連れてきてあげるよ。」


「ありがと! レイナールさん!」


 そうして帰路についているとライラは疲れていたのか俺の膝の上で眠ってしまった。


「そうだ、クルト。 私は近々少し村を離れることになった。」


「え、どうして?」


「隣国の村で流行り病の被害がでているようでな。 おそらく一週間もすれば戻って来るとは思うのだが、少し気がかりなことがある。」


「気がかりなこと?」


「あぁ、最近人攫いの噂があってな。 どうにも子供を誘拐される事件が起きているようだ。 しかも誘拐

 の際に死者も出ているらしい。」


「人攫い? そんなことしてどうするんだろ?」


「詳しくはわからないが奴隷にするか、何か別の目的があるのか...... とにかく君たちも気をつけてくれ。」


「わかった。 ライラ達は俺がちゃんと守るよ。」


「私は君も心配しているんだぞ?」


「わかってるよ。」


「君はあの事件があってから自分の身より仲間の安全を優先することが多くなったからな。 もちろんそれも大切なことだが、命あってのものなのだよ?」


 あの事件...... そうライラが大怪我を負った時のことだ。


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