11話 施設??目
ここへ来てどれくらいが経っただろうか?
もう部屋には俺しかいない。
ノルンとトーマはある日実験室へと連れていかれると帰ってくることはなかった。
部屋の外から男に呼ばれる。
俺は重い腰を上げ実験室へと向かう。
仕方ないのだ。 歯向かうと村になにをされるか分からない。
実験室へ入るとマスターがいた。
会うのはフィーンが殺されかけたあの事件以来だ。
「久しぶりだね。 随分と見違えたじゃないか。」
見違えた? あぁ、もうボロボロだからな。 俺はマスターの言葉に返答もしない。 口を開くと何を言ってしまうか分かったものじゃないからな。 それで機嫌を損ねて村へと手を出されたら今までの我慢が水の泡だ。
「ふふ、やっぱり君はいい。 いい眼をするようになった。 憎しみ・怒り・悲しみを内に秘めたいい眼だ。」
「……」
「あぁ、そういえば君の部屋の元メンバーは元気にしてるよ。 一人だと少し寂しいかもしれないが君に何かがあっては困るからね。 君が唯一の成功者なのだから。」
「っ!!」
俺はマスターの言葉に安心を覚えるも、その顔を見て考えを改める。 マスターはいやらしい笑みを浮かべてこちらを見ていた。 俺を村から連れ去ったときと同じ顔だ。
「うるさい。 やるなら早くしろ。」
俺はなんとか言葉を捻り出し男との会話を終わらせる。
その日の実験はいつもと違ったものだった。
目隠しをされ何かを飲まされる。
すると体中が熱く痛み出した。
眼からは涙が止まらなくなり、体は震えて動かない。
聞こえてくるのは男の笑い声だけだった。
そして俺はそのまま意識を手放した。