55部
「あの短い動画に影山は何を託したのだと思いますか?」
片倉が聞くと、伊達は肩をすくめて、
「意味があったのかもわからない。
ただ、自分が最後を向かえた事を世間に知らしめるための布石だったのかもしれない。
人知れずに消されることも想像はできてただろうからな。
あるいは『戦々恐々としている人達』がいることを伝えるためとも考えられるな。」
「彼を救えなかったことを悔いておられますか?」
「目の前で死なれていい気分でいられる人間なんていないと思うけど?」
「…………そうですね。
情報源としての価値も考えるともったいない事をしたと思いますよ。」
「総監や刑事部長の隠している事が何かはわからないが、少なくともあのグループも一枚岩ではないってことなんだろうな。」
伊達がそう言うと松前が入ってきて、
「片さん、クナイから連絡があり、北条総理に不穏な動きありということです。
どうしますか?」
「情報の確認と裏付けをお願いします。」
「了解」
松前はそう答えて部屋を出ていった。片倉が
「総理が動くと言うことの意味はわかっていただけますね?」
「ついに本気で政府の転覆が始まったってことだろ。
言われなくてわかってる。
だが、止めるための手段もないんだろ?」
「転覆させられる政府の頂点が実行犯では止めようがないでしょうね。」
片倉は眼鏡を直しながら言った。
「山本さんには伝えるのか?」
「山本警部がなぜ彼らの計画に毎回組み込まれるのか、それがわからないので、彼にこれ以上の情報を与えるのは危険です。
それに武田総監が、彼に決断の時が来ると言っていたようですし、
影山も同様の事を言っていたと聞きました。
彼の迫られている決断がこの国を左右するなら、考える時間が多いほど向こうに傾倒しないとも限りません。
つまり、様子を見るしか道はないということですね。」
「公安の方の動きの予想は?」
「国を守る事を優先するのが基本です。
政府が転覆することが国のためと上層部が答えを出せば静観、危険だと判断すれば阻止に動くでしょうが、どこにでもあのグループが紛れ込んで権力を持っていますから、公安とて例外ではないかと思います。」
「最後まで様子を見ないといけないってことだな。」
伊達がため息混じりに言う。
「もうしばらくの我慢ですよ。」
片倉も疲れた雰囲気を隠せずに吐き捨てた。




