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35部

 片倉が高山に取り押さえられた頃、東京では


「コンッ、コンッ」ノックの音で目を上げるとそこには上田さんと三浦さん、今川さんに藤堂が立っていた。

 お見舞いに来たと言った感じではなく、みんな一様に険しい顔をしている。ベッドの上で姿勢を正して、加藤は上田に向かって

「もう………………………全部バレてしまったみたいですね……………」

 上田は黙って頷き、藤堂が

「なんでこんな……………」

 最後まで言い終わる前に今川が制止した。

「藤堂、気持ちはわかるけど今は上田さんに任せよう。」

 藤堂は納得のいかないままに少し下がった。そして上田が静かに口を開いた。

「加藤巡査部長、今回の襲撃事件はあなたの仕組んだでっち上げの事件だったと認めるんだな?」

「はい。」

 加藤はまっすぐに上田を見て答えた。

「自傷行為に関して、警察が介入できるとは思っていないが、今回は警察の銃器保管庫から拳銃を持ち出してのことであるため、銃刀法違反並びに虚偽の証言による警察の捜査の撹乱での業務妨害罪となります。

 この件は伊達達が調べた結果をさっき聞いてそのままここに来たから、捜査一課への報告はまだだ。

 俺が…………俺達が聞きたいのはなんでお前がこんなことをしたかだ。話してくれるな?」

「大学時代、そして警察になってからもお世話になってる先輩がある捜査のために警察の上層部に混乱を起こす必要があると言ってきました。

 その先輩には大変お世話になっていたので、自分から協力できることがあればと言ったところ、今回の事件の被害者役を頼まれました。」

「何の捜査かは聞いたのか?」

「はい、その先輩は上層部の人間の中に政府の転覆を画策している者達がいる。残念ながら、誰かまでは調べがついていないが、少なくとも警視以上の階級の者が多く関与していると言う話でした。

 警視庁内で事件が起きれば、上層部に揺さぶりがかけられる。

 そう言われて、土下座までして頼まれたので、それまでの恩もあったので断りきれませんでした。」

「それから?」

「警視庁内で銃撃事件が起きれば、当然、面子のために外に公表されることもなく、インパクトがあると言うことだったので、できるだけ後遺症の残らない場所を自分なりに調べて、事件当日にその先輩から銃を預かり、計画を実行しました。

 警部が疑われるとは全く思っていなかったので、警部が帰ってこなかった時はとても心配でした。」

「その先輩に騙されたと気づいたのはいつだった?」

「麻酔が切れて、近くにいた警官に状況を聞いたときです。

 使った拳銃が警部の物だったなんて思ってなかったですし、その後で、先輩に連絡を取って貰おうとしたら交通事故で亡くなられていたので、それで騙されたと、利用されたと思いました。」

「なんで、その場で本当のことをいわなかったんだ?」

「先輩は………………とても真面目で、特に車の運転には厳しい人でした。

  ウィンカーを出すのが遅れただけでとても怒る人でしたから、そんな人が居眠り運転なんてするわけないと思いました。

 だから、先輩はこの件に関わったから殺されたと判断しました。 

利用されたと思っていても、どこかで先輩の言葉のどれかは本当だったのではないかと思いたかっただけかもしれません。

 でも、警察の上層部に敵がいるなら、不用意に本当のことも話せないと思いました。」

 上田はため息をついてから

「何て言うか、加藤らしいって言えば、そうなんだけど………。

 その先輩は、影山の一味だったらしい。

 警部の動きを制限するために仕組まれたことではないかと伊達は言っていた。

 確かに、そいつは誰かに殺された可能性があるがその犯人まではまだ特定されてないそうだ。」

「……………………………そうですか。」

「今後、捜査一課に今回のことと今話したことを伝えるつもりだ。

もちろん、影山のことに関しては信じてもらえないだろうから、そこは伝えられないけどな。

 お前の処遇は捜査一課に任せる。

 表だった事件にはなってないからどんな風になるかわからないけど、反省して、どうなっても受け入れろよ。

 それで、許されたならまた俺らのとこに戻ってこい。

わかったな?」

加藤は下を向き、涙をこられながら、「はい………………」と短く答えた。

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