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34部

「片倉を離してください。

 そうすれば、こちらも銃を下げますよ。」

 伊達が笑顔で言い、竹中は高山に目で合図を送った。高山は片倉を離し、竹中の元へと移動した。

 それでも、伊達達に囲まれた状況は変わっていない。竹中が

「やっぱり、お前らも来とったんか。

 それで、さっきの片倉の話はどこまでが本当なんや?」

 片倉は眼鏡の位置を直して

「心外ですね。全てが本当のことですよ。

 それとも、注意をそらすための嘘だと決めつけられますか?」

「竹中さん、正直にわからないんですよ。

 あなたは御前側で山本警部の敵なのかどうなのか。」

「なんで、山本がさっきからお前らがゆうてる『御前』の敵になるんや?」

「なるほど………………山本警部は向こう側につく可能性もあるということですか。」

 片倉が顎に手をあて考え込んだ。

「だから、俺はそんな奴知らんねん!

 勝手に繋げんなや。」

 竹中は訳がわからず、言い放った。伊達が真剣な顔をして、

「特別犯罪捜査課は山本警部のために武田総監が作られた超特殊な部署です。当初は彼らの部下で構成されていた所に九州から黒田当時課長代理、大阪から関西圏全域に顔が利く竹中警部、北海道から東北地方までを勝手に捜査範囲にしていた僕、この3人が警視総監命令で配属されて、現在の形になりました。

 その中で黒田課長は北条総理の姪にあたり、確実に御前側の人間です。一方で僕は片倉という公安の人間を気ままに使う、国家側の人間です。

 そこでわからないのが、竹中さんです。

 僕と黒田課長で双方一対一の状況です。あなたはどちらなんですか?」

「どっちでもないわ!

 世の中、黒か白かで分けられるほど単純やない。

 俺はただ単に山本の味方や。それ以上でもそれ以下でもないわ!」

 竹中は苛立ちを込めて言う。

「武田総監、上杉刑事部長、この二人の考え方もわからないんですよ。

 なぜ敵だとわかっている僕を呼んだのか?

 本当は彼らも御前側ではないのではないか?

 山本警部の味方と言ったあなたは本当にそうなのか?

 何が真実かわからないのに、そうですかと納得はいきませんよね。

僕が、勝手に捜査しているのも誰も信用できないからですよ。

 獅子身中の虫と言う言葉もあります。ただ、うちの課の虫が誰なのかは今回の事件ではっきりとしましたけどね。」

 竹中は伊達が何を言いたいのかわからずに探るように見たあとで、

「…………どういう意味や?」

「それは…………質問ですか?それとも確認ですか?」

 伊達は会話のやり取りを楽しんでいるようにも見えた。

「質問に決まってるやないか。

 うちの課にスパイがおるなんて確証はあるんか?」

「正確にはスパイと言うには敵側に重宝はされていません。

 使い捨ての駒くらいです。その駒の彼も自分がスパイとして使われてたことにも最近になって気づいたようですけどね。」

「この状況では誰かまでは教えへんつもりか?」

「そんなことはありません。加藤巡査部長ですよ。」

 竹中は目を見開いて、

「はぁ?何言うてんねん。

 あいつは今回の被害者やろ?」

「被害者役というのが正しいですね。

 彼の先輩が影山の使い走りだったんです。加藤さんは義理堅くて、恩人とか先輩とかを疑うことがない人ですから、利用しやすかったんでしょうね。」

「なら、その先輩って奴を捕まえたらええやろが。」

「それはできませんよ。公務員法の守秘義務違反や自傷行為の教唆なんかで逮捕状を取ることは難しいですし、何より被疑者死亡で逮捕することもできませんからね。」

「なんでそんなことになったんや?」

「あなた方が手をくだしたんやないでしょうね?」

 高山が聞くと、片倉が

「突然の不審死としか言えないですね。居眠り運転です。

 でも、彼の所持品からは睡眠薬等は発見されず、代わりに首元に小さな傷がついており、その周りから微量の睡眠薬の成分が検出されました。

 銃弾等は見つかっていませんが、窓が大きく開いていたのでそこから狙撃で睡眠薬を投与されたことで意識を失い事故によって死亡したと見られています。」

「知られてはいけないことを知られたから消された、或いは影山のグループを狩ろうとする意思が動き出したのかもしれません。」

 伊達が付け加える。竹中が

「加藤にもその危険があると思うか?」

「ないでしょうね。」

片倉が言いきり、伊達が

「山本警部の周りの人間を消そうとはしていないようです。

 影山のグループが起こした事件を解決する役が山本警部なので、その周りから人員を減らそうとはしないはずです。」

「……………加藤はなんでこんなことをしたんや?」

「さぁ、彼の動機はわかりません。

 ご自分で聞いてみてください。」

 片倉が言い、伊達が

「話を戻しますね。

 竹中警部がもし山本警部の味方だと言い張られるなら、我々に協力してもらえませんか?」

「その前にお前らが国側やって言う証拠はなんやねん?

 まさか片倉がおるからなんてことだけで納得しろとは言わへんやろな。」

「ええ、公安の捜査指令書と必要なら片倉の上司と直接話して頂くこともできますよ。

 ただ、僕と松前はあくまで中立です。国に加担はしますが自分達の信じる正義に従って行動しているつもりです。」

 伊達が言い、竹中は何か言おうとした高山を制して

「中立なんてないやろ。

 立ち位置を変えては自分のために行動するやつらのいい加減な言い訳でしかないねん。

 結局は自分サイドに立った第三勢力でしかないねん。

 俺が知りたいのはお前らが山本の敵かどうかや。

 俺は山本を守るためやったら、お前らも影山も総監でも、敵に回したる。

 それが俺や!」

「この前、山本警部と接触したときにも中立でいることを批判されましたよ。その男が気になって調べてるんですけど、該当する人物は未だに判明してません。

 ムカつきますよね、本当に。」

 伊達が悔しそうに言い、

「人は無力や、そんで無知や。

 だから、わからんことを調べて、対処するために自分を鍛えんねん。

 山本はいつも無知な状態から真実を探しよる。

だから、俺はあいつを応援するし助けたろと思うねん。」

 竹中が力強く言うと、伊達は頷き、片倉は眼鏡を触り、松前はあくびをした。松前の行動の意味がわからない。この状況であくびをする等、緊張感が無さすぎる。

 竹中と高山が周りを警戒すると今までは気づかなかったが、周辺の建物の屋上や物陰からこちらに向かってライフルの銃口が向けられていた、その銃口が視界からなくなり、物陰からは移動するような音が聞こえた。竹中は確信して、

「さっきの松前のあくびは撤退信号やったわけか?」

「惜しいですね。

 僕と片倉、松前の3人が決まった行動を一度にすれば撤退の合図でした。」

 伊達が苦笑しながら言い、竹中が

「俺を信じたってことか?」

「そうなりますね。

 ついでなので、上田さん達にも加藤さんについてのことは教えてあります。

 彼の処遇は上田さんが決めるでしょう。

これでようやく、山本警部がシャバに出てこれますね。」

 伊達が楽しそうに言い、高山が

「その情報があるのであれば、なぜもっと速く行動しなかったんですか?」

 片倉が

「寄生虫は一匹とは限りませんでしたので。

 それぞれの素行を調査するのに時間を要したそれだけですよ。」

「どっちにしてもや、俺はまだ大阪でやることがあるから、お前らは速く帰って、山本を保護してこいや。」

 竹中が言うと伊達が

「連絡は済んでます。

 あとは自分でなんとでもできますよ、大人なんだから。」

「まぁ、加藤の件がどうなるかは気になるけど、これでやっと山本が自由になるわけや。

 今まではサボッとった分をしっかりと働いてもらおうやんけ。」

 竹中は嬉しそうにそう言った。

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