28部
「どうするんですか?」
上田が慌てて聞くと、竹中は何もなかったかのように携帯を耳にあて「そら出るしかなやろ。」と言った。
謹慎中に勝手に捜査をしていたのは竹中さんなのにと上田は思いながら、黒田課長の第一声が怒鳴り声だと身構えた。
しかし、上田の予想は外れた。
『もしもし、竹中さんですか?
今、どこにいるんですか?』
黒田の声は落ち着いていた。普段から用事があるのに居場所がわからない竹中さんを探すときの感じと変わらなかった。
「今は上田と三浦と一緒にひきこもり支援の会社のこと調べてるで。
なんかありましたか?」
『一応、謹慎中なんですから悪びれてください。
まあ、そこは総監が何とかしてくれたのでこれ以上は言いませんけど気を付けてくださいね。』
「その報告のために電話してくれたんですか?」
竹中も拍子抜けしたような声で聞いた。上田はとりあえず同行していたことで怒られずにすむと思って胸を撫で下ろした。
『そんなわけないじゃないですか。
大谷君に用事を頼んでいる間に大阪府警の方から竹中さんに連絡を取りたいと言われたんですよ。
直接かけても出ないから取り次いで欲しいと。』
「ああ、そう言えば高山から何回か電話来てました。
謹慎食らったことに対する嫌みでも言われると思って放置してたんやった。」
『とりあえず、一度電話してください。
あと、事件が落ち着いたら反省文は提出してもらいますので、そのつもりでいてください。』
黒田課長はそう言って電話を切った。
「総監がもうエエゆうてんねんから、それでエエと思わんか?」
「まぁ、普通に考えたらダメでしょうね。」
「それやったら伊達とかにも書かせたらエエのにな。」
「まぁ、とりあえず高山さんでしたっけ?
その人に電話してみましょう。」
「ああ、上田は面識なかったんやな。
じゃあ、かけるとするか。」
そう言って竹中は不慣れな感じで携帯を操作して、携帯を耳にあてた。後にもう少し離しておけばよかったと後悔することになるとも知らずに。
『なんで電話に出んのですか!?』
高山の第一声は電話越しだとは思えないほどの大音量で少し離れたところに立っていた上田にまで鮮明に聞き取ることができた。
「お………おう、悪かった。
てか、どんな大声で叫ぶねん。
鼓膜破れるかと思ったわ!」
『知りませんやん。
こっちも大事な用事で電話してるんですよ。
それがまったく繋がらんとこっちの捜査も進ませんしでめっちゃ困ったんですよ!』
「おお、なんか捜査やったんか?
で、何があったんや?」
上田は、電話の向こうの高山さんをあまり知らないが、確実に文句がたまっているのに、それをスルーして自分の聞きたいことに話を変えた竹中に対してあまりいい気はしていないだろうと思った。
だが、慣れたことなのか高山は自分の捜査に関して話を始めた。
『今回の事件とはまだ言えないんですけど、初めは何てことないただの職務質問やったんですよ。
付近の住人から見たことない男が家の周りを一時間以上ウロウロしてる怪しいやつがおるっていう通報を受けて、近くの交番から巡査が向かったら、通報通りに怪しいやつがおったんで、名前を聞いたらごちゃごちゃ言った後に山崎優一やって名乗ったらしいんです。
でも、身分証を見せろってゆうても見せへんかったし、なんの目的でウロウロしてたんやって聞いても答えへんかったんです。
周りに人が集まりだして、収拾がつかへんくなったから巡査が近くの警察署まで連行しよったんです。』
「ちょっお、待てや。
不審者捕まえた話するために電話してきたんか?」
『違いますよ、どんだけせっかちなんですか。
連行した後にとりあえず、本人確認しようと思って身分証を見せてもらおうと思ったけど持ってないの一点張りで、所持品にも確かに身分がわかるもんはなかったんです。
同じ場所でウロウロしてるって普通やないし、なんか犯罪がらみかもしれへんってなって、所持品から指紋とって検索かけたらヒットしたんですよ。』
「ほん、おめでとう。事件解決やな。」
竹中が軽く言うと、高山の怒鳴り声が響いた。
『やから、どんだけせっかちなんですか!
ヒットした名前が苗木和也って名前で、山崎優一やなかったんです。実際に写真とかと比べても顔も違うし、どうなってんねんってなってとりあえず、苗木が東京の方に住んでることになってたから警視庁に問い合わせたら、行方不明になってて特別犯罪捜査課が探してるって言ってたんで竹中さんに聞こうと思たら、謹慎は食らってるは電話にはまったく出ぇへんはでホンマ何してるんてすか?』
「お、おう、悪かったな。
でも、俺は苗木何て奴知らんからな……………。
上田は苗木和也やったかな、そいつ知ってるか?」
「苗木………………苗木………、ああ、思い出しました。
藤堂と今川が調べてる失踪した前科のある奴ですよ。
確か酔っぱらいのチンピラに喧嘩をうられて逆に殺してしまった奴です。」
「そいつが山崎って名前変えて、ついでに顔も変えて、大阪で人生やり直そうとしてた訳やな?
まぁ、色々と問題はありそうやけど事件って言うほどでもないんと違うか?」
『まぁ、それだけやったらそうなんですけど、顔も変えてこっちで生きてて、山崎って名前もあるし、前科もあるならなんかアカン方法で今があるかもしれへんと思って調べたら、大阪で行方不明になってる人の中に山崎優一って名前の人がおったんですよ。
詳しく調べたら、苗木は山崎優一の顔に変えてたんで、事件やと思って調べたら、苗木が違う、自分は何もしてない、ただ顔と名前を交換しただけやって言うんですよ。
詳しく話せと言っても黙りで困って、竹中さんの方に聞いてみようと思ったら……………』
高山の怒りが戻り出したのに気づいた竹中が
「それで、そいつは今どうしてんねん?」
『訳もわからないですし、このまま自由にしてエエのかわからへんから、とリあえずホテル用意してそこで待機してもらってます。
なんか犯罪をしたわけでもないし、本物の山崎さんが同意してそうなってるならどうゆう扱いにしてエエのかもわからへんし、山崎さんも見つかってないんで、困ってるんですよ。』
「わかった、俺が直接行って話を聞くは!」
竹中が電話に向かって言い、上田の方を向いて
「ええか?」
「構いませんけど、大丈夫なんですか?」
「まぁ、なんとでもなるわ。」
竹中が言ったところで挨拶にいっていた三浦が戻ってきて、
「あれ?どうかしましたか?」
「三浦、東京駅まで頼むは!」
「えっ?」
三浦は驚いて上田を見たが上田も黙ってうなずいたので、理解できないままに車に乗り込んで車を走らせた。




