23部
「なんか、裏のありそうな感じでしたよね?」
車に乗ると三浦が聞いた。
「隠していたとしても、それを伝えては来ないだろうしな。
それにあの事務所にいたのは大井という若い男と責任者を名乗る大隈の二人だけだった。
他にも社員がいるような口振りだったけどオフィス用品は多く見積もっても3人分くらいしかなかった。
どれくらいの数の支援を行ってきたのかはわからないけど、明らかに人手不足感はあるな。」
「そうですね、社員の数とか実績とか、あとは大隈の言っていた株主の社長とかのこともわかりませんからね。」
「とりあえず、大谷に情報を聞いてみるか?」
「そうです…………」
三浦が答えようとして上田の方を見るとドアのところに人影が現れ、窓をノックした。三浦の位置からは顔が見えず、上田が見てため息をついて、窓を開けた。
「聞き込み、ご苦労さんやな。
コーヒーあるけど、飲むか?」
関西弁の男はコンビニの袋に入った袋を顔の横に掲げて笑顔で聞いてきた。
「こんなところで何をしてるんですか、竹中さん?」
「なんやねん、大谷から聞いてへんのか?」
悪びれもなく竹中警部は笑っている。上田が
「謹慎中なんですから、大人しくしといてくださいよ。」
「まぁ、堅いこというなや。
あの会社を調べてんねやろ?
何個かわかったこと教えたるは。」
竹中はそう言って、車の後部座席に乗り込んだ。
上田と三浦は顔を見合わせてため息をついてから上田が
「それで、何がわかったんですか?」
「まず、お前らが会ってた大隈と大井を含めて、10人くらいがボランティア団体として始めたんが今の会社や。
設立当初は、信用もしてもらえへんし、引きこもってる子の話聞くくらいしかできへんかったけど、少しずつ話を聞いてた子等が外に出れるようになって、信じてももらえるようになったらしい。
そんなときに現れたんが今の会社の社長やってる山永って奴や。
資金提供から、ひきこもりの子等の就職先の斡旋なんかもできるスゴい奴らしいで。」
「どうやって調べたんですか?」
上田が聞くと竹中は笑いながら、
「年頃の子供がいそうな顔に見えるやろ?」
「相談に来た親を装って、信用できる会社なのかとでも聞いた感じですか?」
上田が聞くと、竹中は笑いながら
「さすが、捜査指揮を任されとる上田警部補やな。
でも、話をしてた奴は少なくとも山永に対して好印象って感じやなかった。
嫌悪感すら感じたな、あれは。」
「どういうことですか?
確かに働かない社長ならよくは思わないにしても、嫌ってるってよっぽどですよね?」
三浦が聞き、竹中が答えた。
「それだけやっかいなんやろな。
働かへんってことは、会社の業務内容には興味がないってことやろ?
じゃあ、なんでわざわざ大株主だけやなくて、社長にもならんとあかんのか。
そこにあの会社の後ろ暗いところがあるんと違うかと俺は思っとる。」
「社員は全部でどれくらいなんですか?」
上田が聞くと、竹中は難しそうな顔で
「それが少人数で支部みたいなもんを作っとって、そこからスカウトしたりもするから、全体の人数は社員ですらわかってないらしい。
ちゃんとひきこもりから立ち直って働いてる人もたくさんいるみたいやし、その反面でお前らが調べてるみたいに姿を消してる人もいてって感じやな。」
「立ち直った人に直接話が聞きたいですね。
そういう人を見つけたなんてことはないですか?」
「残念やけど、それはないな。」
「これからどうしますか?」
三浦が聞き、上田が考えようとすると後部座席から手が伸びてきて、一枚の紙が目の前に出された。上田と三浦が紙を見ると企業の名前が並んだリストだった。
「就職先になっとる企業のリストや。
立ち直って働いてる人が就業体験をしたところに就職したなんて話をしとったから、この企業に行けば見つかるかもしれんで。」
上田が紙を受け取ろうとすると、竹中はなかなか手を離さなかった。
「要求はなんですか?」
上田が聞くと、竹中は笑いながら
「そんな無茶なことは言わんは。
俺も連れてってくれ。
謹慎中で手帳ないから、乗り込んでも相手にしてもらえんかったんや。」
「ハァ…………、まぁ仕方ないですね。
わかりました、一緒にいきましょう。でも、上から文句言われたら無理矢理ついてきたって言いますからね?」
「よし、決まりやな。
ほな三浦、一番近いところから頼むは。」
上田がリストの住所のところを見て、黙って指差して車は動き出した。




