21部
「家の子が失踪?
そんなわけないでしょう。
確かに帰ってこなくなりましたけどね、自立しただけですよ。
家の子は確かに引きこもりでしたけど、社会で働き出したら実家に帰ってこなくなることなんて珍しいことじゃないでしょ?」
上田と三浦が訪ねた家の主は何事もなかったように話している。
「ですが、捜索願いが出ていて、調べてもまったく見つからないとなると事件に巻き込まれた可能性もありますから…………」
三浦が説明するが、家の主は取り合わずに
「私も暇じゃないんですよ。
誰が出したのか知らないけどその捜索願いも取り下げといてください。30越えた子供なんて大人ですよ。いつまでも甘やかすから調子に乗るんですよ。」
「じゃあ、最後にひとつだけ、株式会社『蝶々』をご利用になられてましたか?」
上田が聞くと、家の主は
「ああ、あの会社ね。
とってもいい会社だよ、10年以上もひきこもりだった息子が働くとこまで更正させてくれたんだからな。
あの会社がなんかあったのかい?」
「いえ、ひきこもり支援の会社でよく名前を聞くので利用されていたのかなと思っただけです。」
「ああ、そう。もういいかな?」
「はい、お忙しい中すみませんでした。」
上田が頭を下げ三浦も習って下げた。ドアが閉まるのを確認してから上田がきびすを返して、歩き出したのに続いて三浦も歩きだし、家から離れたところまで来たところで
「誰が出したかわからない捜索願いって、どう思う?」
「受理した係りの者は、30代くらい男性だったって言ってましたけど、捜索願いの記入者の名前は父親でした。
意図的に怪しまれるようなことをしているのには納得できませんね。」
三浦が資料に目を落として言うと、上田が
「意図的に怪しませる理由って何がある?」
「そうですね、失踪させているやつが今回のことをおとりに他のことをしようとしていて目眩ましのために使っている、あるいは…………」
「犯人グループが一枚岩ではなく、良心の呵責に耐えかねている者が、警察に気づいて欲しくて仕組んだメッセージか。」
上田が言い、三浦が
「それならあの蝶々って会社が怪しいですよね?」
「確かにな、今まで聞いて来た中で親身になって子供のひきこもりをなんとかしようと頑張ってくれたって話も聞けば、合宿所に行ったまま帰って来なかったなんて話もあった。
なんでひきこもりだった人を失踪させるのかはわからないけど、真剣にひきこもり支援をしたい人と失踪させている奴の間に溝がある可能性はあるな。」
「何の確証もないですけど、一回調べてみても良いと思うんですけど、どうですか?」
三浦が言うと、上田が携帯を取り出して、電話をかけ、
「あっ、大谷?
悪いけど株式会社『蝶々』って会社の場所調べてくれるか?
なんか関係あるかもしれないから実際にいって調べてみるよ。
………………あっ、マジか?
あ、まぁ、じゃあ……………会社の場所だけメールしといてくれ。」
上田は電話を切ると大きくため息をついた。
「どうかしたんですか?」
三浦が心配になって聞いてみると、
「竹中さんが勝手に出て、あの会社を調べてるらしい。
謹慎明けるまで待っててれたらよかったのになぁ」
「まぁ、竹中さんなら上手くやってくれてますよ。」
三浦は上田の気持ちもわかるのでなんとも言いにくかったが、とりあえずフォローをいれておいた。
上田の携帯に着信音がなり、
「まぁ考えても仕方ないな。
とりあえず、あの会社にいこう。」
上田が歩き始めたので、三浦もそれに続いて歩きながら、上田が心労でハゲないかを本気で心配した。




