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黒幕ー山本警部の事件簿⑥ー 『C.O.L』  作者: TAKEMITI


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17/57

17部

暗い路地を抜けて行くと使われていなさそうな倉庫が建ち並ぶ場所に出た。成宮老人はその倉庫の中からひとつを指差して、

「あそこですよ。」

 山本は成宮老人の指差す先に視線を向けると見た感じはボロボロの倉庫だが大きな室外機の音がしている。ホームレスが集まって無許可で使用しているのではないのかもしれない。

 そんなことを考えていると成宮老人は扉をノックして

「私です。」

 成宮老人が言い終わる前には扉が開きだし、人が一人入れるくらいに開くと、髪も髭もボサボサでいかにもホームレスと言った感じの男が出てきて、成宮老人と山本を見てから

「ああ、ナルさんでしたか、そちらは…………お客様ですか?」

どうやら成宮老人はホームレス仲間から『ナルさん』と呼ばれているようだ。成宮老人は

「そうですね、新しい仲間ではないのでお客様ということにしておきましょうか。」

「それではVIPルームの用意をして来ます。」

「おや?あの方は帰られたのですか?」

「ええ、きれいな格好をしていかれたので問題はなくなったんじゃないですかね。」

 二人の会話の内容はわからなかったが、それ以前にわからないことばかりで混乱していた山本は成宮老人に招かれるままに倉庫に入った。

 クーラーの適度にきいた室内にはソファーや大きな机、大きなテレビ等が置いてあり、奥の方にはきれいで大きなキッチンまである。

 チラホラと人が歩いてはいるが全員がこれぞホームレスといった感じの服装の人ばかりで、訳がわからずにいると

「驚きましたか?」

 成宮老人は山本の反応を楽しんでいるかのように笑って聞いてきた。

「ここはどういう場所なんですか?」

「あるお金持ちの方がホームレスを支援するために個人的に準備してくれている施設です。

 名前さえ登録すれば出入りは自由で、寝る場所も奥にありますし、ネット環境も整っているので、職探しをすることもできるんです。

 他にも、さっきの人みたいにここの管理をする仕事をすればお給料がもらえます。

 まぁ、その仕事につこうと思うと色々と試験があったりするので簡単にはなれませんけどね。」

「見返りとかは?」

「100%の善意でだとは思わないんですか?」

「疑うのが仕事なんですよ。

 それにこういう環境は犯罪の温床でもある。

 世話してやってるんだから言うことを聞けとか言いやすい環境だろ?」

「確かにそういう場所もありますよ。

 でもね、ホームレス支援の団体なんて金がなければ外で暮らすより劣悪な環境になることだってあるんです。

 それに比べればここは生活するのに困ることはありませんし、嫌になれば出ていくことも自由です。

 それにここの維持や光熱費、食費などにはかなりの経費が必要になります。

 山本警部なら言いたいことがわかりますよね?」

「つまり、税金逃れか?

 光熱費は使ってる分しか計上できないが、中にいる人が出入り自由なら、食費に関しては人数を多く見積もればいくらでも多くすることができる。」

「国に入る税金が減っても我々ホームレスは何も困りません。

 それに国に見捨てられた我々が国のためになんて考えていると思いますか?」

「自分達を助けてくれるんだから、不正があってもかまわないってことか。

 助けてくれるなら誰でもいいってことなんだろうな。」

「そういうことですよ。

 おや、どうやらお部屋の用意ができたみたいですよ。

 完全個室で、パソコンもテレビもありますから我々はVIPルームと呼んでるんですよ。」

「そこに前まで誰かいたんだったか?」

「ええ、20代くらいの男の人がいました。

 ヤミ金か何かから隠れる場所を探してたどり着いたと言ってたそうですよ。私は直接あってないからわからないですけど。」

「ナルさん、どうぞ。」

先程の男に案内されて倉庫の二階部分に上るときれいに部屋分けされていて、その中でも一便広い部屋に案内された。ドアを開けるとベッドと机と椅子があり、机の上にはパソコンが置いてあった。

 ちょうど必要としていた物なだけにここまでうまく用意されていると不信感すら漂っていた。

「好きに使ってください。」

 そう言って案内をして来た男が去っていった。成宮老人が

「ご飯の時間は決まってませんが、朝は7時以降、昼は12時以降、夜は18時以降なら用意してもらえますよ。

 まぁできたてが美味しいですからね、それくらいの時間にもらいにいってください。」

「あなたもこの部屋を使うんですか?」

 山本は何気なく聞いたことだったが、成宮老人は少し表情が変わって、

「なぜ、そう思うんですか?」

聞かれたくないことだったのかと思ったが、この人が表情を変えること自体が珍しく、そこから情報を得られるかもしれないと思い、

「先程の男性もあなたには気を使っているように見えました。

 あなたはここではそれなりの地位にいる人なのかと思いまして。

そうなら、この部屋も使っているかもしれないなと思っただけですよ。

 何か聞かれたくない理由でもありましたか?」

成宮老人はいつもの作り笑いに戻り、

「空いていれば使うこともありますが、めったに使えるところではないですね。」

「そんなにたくさん人が使ってるなら、セキュリティーが心配ですね。

 私も見つかるわけにはいかない立場ですから。」

 山本はそう言って、ベッドのした等を覗きこんだ。そして

盗聴機等はコンセントの指し口に仕掛けることが多いと思って見ると、不自然な形のプラグがひとつあった。

 山本は声を出さずに成宮老人を手招きし、山本の様子に違和感を持った成宮老人も静かにコンセントを覗きこんだ。

 成宮老人が山本の袖をつかみ部屋からでて、

「あれは盗聴機というやつでしょうか?

 以前確認したときはあんな物はありませんでしたからね。」

「仕掛けそうな人に心当たりは?」

「ありませんね。

 こんなところを盗聴してもメリットはないでしょう。」

「さっきの人は信用できますか?」

「ええ、彼はここの誰よりも信じられると思いますよ。」

「では、彼に頼んであれを今は使ってない部屋に移しかえてもらってください。

 壊してしまえば、気づいたのがバレますし、回収しに来るかも知れないので何事もなかったように振る舞っとくのがいいでしょう。」

「山本警部が来ることを予想して取り付けたのでしょうか?」

「俺がここに来たのはたまたま成宮さんに助けられたからです。

 仕掛けた人物の狙いはここを使う可能性の高い人、つまり、ここで一番偉い人間の可能性があります。

 そのような人に心当たりは?」

「支援してくれている金持ちはこの部屋を使うことはありませんし、年上の人間に気を使ってくれることはありますが、利用者の中で優劣はありませんね。」

「なるほど………。

とりあえず、さっき言ったことをお願いしてきてください。」

 山本が言うと、成宮老人は頷いて歩いていった。

 ホームレスにとってオアシスのようなこの場所で盗聴までして情報を入手したい人間がいるのかはまだわからないが、この施設の存在や税金逃れのためにこんなに面倒なことをする金持ちがいるのか等、わからないことばかりだが、調べていく必要性は感じたし、何よりゆっくりとできる環境があることを嬉しく思い、成宮老人達が戻ってくるのを山本は待った。

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