11部
「え~というわけで、総監から捜査命令が出ました。
自殺願望のある者並びに前科者に失踪者が出ています。
まあ、一応、捜査指揮は俺が執ることになったから、俺の指示には従ってくれ。」
上田はそう言って、資料を配った。三浦が
「例の信号の設置で失踪者とかの発見は続いてるんですよね?
それなのに新たに失踪しているのがおかしいから調べろって、この指令自体が怪しいですね。
もっと、何か奥があることに気付いていながら、隠している可能性もありますよね?」
「それに気付けるのかも含めて、俺らだけの現状を試されてるんじゃないか?
山本警部も竹中さんもいない中で俺らがどれだけ活動できるかっていう試練なのかもしれないな。」
上田が言うと今川が
「自殺願望者が失踪したってことは、既に・・・ってこともありえますよね?」
「今川さん、そんなこと言ってたら捜査終わっちゃいますよ。
死ぬくらいなら、人生変えてやるくらいの挑戦をすればいいんですよ。」
藤堂が言い、三浦が
「ああ、藤堂とか絶対に死にたいと思ったことなさそうだもんな。
順風満帆そうな暮らししてそうだからな。」
「三浦さんは自殺したいと思ったことあるんですか?」
藤堂が聞き、三浦は
「それはないけど、辛い事とか悲しい事って、人それぞれだろ?
藤堂が全く気にならないようなことでも、深刻に考えてしまう人もいるだろうし、藤堂が死ぬほど嫌なことも、まったく気にしない人だっているだろ。
死にたいと思う理由は、他人からすればどうでもいい事でも本人には重大な問題なんだよ。」
「ま、まあ、自殺願望者についてはわかっている範囲で家とかに行って家族に話を聞いてから判断するとしよう。」
上田がそう言い、大谷が
「前科者の行方不明っていうのは、仮釈放中のということですか?それとも満期出所者ってことですか?」
「今のところわかっている範囲では、満期の人ばかりだな。
仮釈放中に失踪すると、仮釈放の取消事由になるから簡単には失踪できないだろうしな。」
上田が言うと今川が
「じゃあ、満期で出所して更生しようとしたけど、うまくいかずに現実逃避したってことなんですかね?」
「失踪しても現実は変わらないと思うけどな・・・・」
三浦が言い、上田が
「とりあえず、事件の概要はこんな感じで、まずは失踪した人達の事情とかを家族に聞いてから判断しよう。
え~と、俺と三浦、今川と藤堂、大谷は悪いけどしばらくは留守番を頼む。
それぞれ何かつかめたら大谷に連絡して、捜査情報の共有を大谷を通して行う感じにしよう。
あと、伊達たちにもこのことを伝えておいてくれ。」
「わかりました。」
大谷は短く答えて、携帯を取り出して、メールを打ち始めた。
「じゃあ、まずは手分けして情報収集からしていこう。
じゃあ、解散。」
「行きますよ、今川さん」
「あ、ちょっと待って」
藤堂が飛び出していき、今川もそれを追いかけて出て行った。
「僕らも行きましょうか。」
三浦が呆れた感じで今川が消えた方を見ながら上田に言い、
「ああ、そうだな」
大谷は一人残った部屋で、電話を操作して
「大谷です。
今、捜査会議を行い、分かれて家族に聞き込みに行きました。」
『了解、新しい動きがあればまた報告しろ。』
「承知しました。」
大谷は電話を切り、深くため息をついた。




